ウイルス,細菌,ヒトなど全ての生命体は遺伝子を有しそれらはDNA,RNAなどの核酸でできている。動物には外来から侵入した病原体を認識し排除する免疫の仕組みが存在する。本項では免疫のひとつである自然免疫がどのように病原体の核酸を認識するのか,そのメカニズムと重要性についての基礎的な内容を説明する。
感染免疫応答は生物種に固有であり,鍵と錠の関係のように特異性が高い。自然免疫担当細胞である好中球はヒトの感染免疫応答で最初に戦う白血球であり,侵入してきた病原微生物に遊走し,貪食・殺菌する。この過程にはヒト好中球特異的に発現している糖脂質のラクトシルセラミド(LacCer)が関与している。結核菌はLacCerの貪食・殺菌機構を利用して,好中球による殺菌を回避し,感染免疫機構から逃れることから,その分子機構の解明は新たな結核薬開発に繋がる。
免疫においては異物(抗原)を正確に見分けて確実に捕捉する必要がある。本稿では,その最前線で免疫を支えている抗体がどのように生体内で作られているのかを解説する。また,抗体の有する非常に精度の高い分子認識能力と強い捕獲能力の利活用の方法をいくつか紹介する。さらに,抗体薬をはじめとした人工抗体のこれからの可能性について言及する。
この講座では,化合物半導体の基礎からデバイス応用までを初学者にわかりやすく提供することを目的としている。ここでは,シリコンをはじめとして化合物半導体の基礎的な物性について,結晶構造との関係,金属や絶縁体との違い,電気的・光学的な特徴についてやさしく紹介する。
照明に使われている白色LEDや光を吸収して発電する太陽電池は日常生活においてとても身近なデバイスとなってきた。これらのデバイスにおいて重要な働きをしているのがp型とn型半導体の積層構造,p-n接合である。本稿では半導体における光の吸収,発光,半導体のp-n接合の原理を説明し,光電変換デバイスの動作原理,そして近年の開発状況を紹介する。
半導体の材料としてSiは最も有名であるが,GaAsやGaNなどの化合物半導体はSiで達成できない発光デバイスや高性能電子デバイスを実現できる。この化合物半導体を形成する結晶成長技術として有機金属気相成長法を紹介し,今後世界を大きく変える化合物半導体デバイスも紹介する。
遷移金属の塩水溶液は加水分解による比較的強い酸性を示す。筆者らは,塩化鉄(Ⅲ)水溶液に炭酸カルシウム粉末を加えると,発泡を伴いながら溶解して溶液が赤褐色になり,さらに過剰量加えると鉄(Ⅲ)イオンの塩(コロイド)が吸着した沈殿を生じ,溶液が透明になることを見出した。この現象を利用した,加水分解を視覚化する教材の開発を行うとともに,鉄(Ⅲ)イオンの定量を含む授業を実施した。