電子機器中のレアメタルを含む総合的な金属回収プロセス,特に,現状で未開発のレアメタル類の濃縮プロセスについて解説する。レアメタル類の多くは電子基板中の特定部品に濃集しており,それらの回収には,廃電子機器からの基板脱離と同基板からの部品剥離の二段階粉砕にその後の部品選別を組み合わせることが有効である。その例として,JOGMEC事業で開発した電子機器からのTaコンデンサ回収プロセスについて詳述する。
水銀規制に関する国際的なルールを定めた水俣条約が2017年8月に発効され,国内の水銀規制がこれまで以上に厳しくなる。野村興産は水銀含有廃棄物を中心として,現在では年間27,000トンの廃棄物から50トン程度の水銀をリサイクルしている。本稿では当社の水銀含有廃棄物の処理・リサイクルおよび水俣条約による新たな対応について紹介する。
セメント*1産業は,「社会基盤を構築するための基礎資材であるセメントの安定供給」という動脈産業としての役割に加え,「セメント製造技術を活かした廃棄物・副産物の安定的なリサイクル」という静脈産業としての役割も担っている。セメント産業では事業系,生活系問わず様々な廃棄物・副産物をセメントに再資源化しているが,本稿では,都市ごみ焼却灰の処理に特化した「エコセメントシステム」について記述する。
廃棄物最終処分場とは,生活環境の保全上支障の生じない方法で,廃棄物を適切に貯留し,かつ生物的,物理的,化学的に安定な状態にすることができる施設をいう。特に管理型処分場には,浸出液に含まれる汚染物質の施設外部への流失を防止し,浸出液を適切に管理するための遮水工が設けられる。遮水工とは浸出水の流出を防止するために廃棄物処分場の底部などに設ける難透水性の層であり,本稿ではこの遮水工の構造を解説するとともに,その遮水工の1つである膨潤性天然粘土材料“ベントナイト”を利用した土質系遮水工法を紹介する。
それ自身は反応前後で変化せず,目的とする化学反応のみを選択的かつ効率的に進行させる物質である触媒は,様々な分野で活躍しており,現代生活は触媒無しでは成立しない。工業的には化石資源から燃料の製造,プラスチック製品や合成繊維の合成,医薬・農薬などのファインケミカルズ合成に貢献している。また,三元触媒に代表される自動車用排ガス浄化触媒は環境対策技術として重要な役割を担っている。さらに,既存の産業や環境技術のみならず,太陽光をエネルギー源とした次世代のエネルギー開発分野でも,有効な触媒の開発が成否の鍵を握っている。本稿では,日々の生活に密着した分野において,大車輪の活躍をする触媒・光触媒について解説する。
近年,金属を用いずに有機化合物のみを用いた不斉触媒反応が活発に研究されている。本稿では,アミノ酸であるプロリンおよびその誘導体を用いた不斉触媒反応について解説する。なぜ,有機分子が触媒として作用し,立体選択的に生成物が得られるのかを紹介し,応用として有機分子触媒を鍵反応とした医薬品合成についても言及する。これら触媒は水や酸素に安定であり,操作上の利点を有しており,さらに生成物へ金属が混入する恐れがなく,グリーンケミストリーの観点からも注目されている。
固体の製品を得る晶析操作の目的は粒子製造から高度分離・精製,そして高機能製品製造と多岐にわたっている。どの場合でも結晶核の発生と成長の速度を制御することによって目的に合う製品が作られている。ここでは,実際の晶析操作を理解する上で最低限必要な考え方とデータの取得のためのアプローチ方法について基本となる事柄を紹介する。