大学において化学を学び,大学院修了後に教職を経て,弁理士を目指した理由について説明し,弁理士の仕事の魅力についても述べる。大学院における知的財産人材育成,標準化人材育成に携わった経験を活かした,アントレプレナー(起業家)教育への取り組みについても紹介する。
技術士は,高等な専門的応用能力を必要とする科学技術について,計画,研究,設計,分析,試験,評価やその指導ができる専門家である。人生100年時代。技術士の試験制度を上手に活用し,いま持っている専門性に,新たな専門性を加えて,不確実な時代を乗り切るキャリアパスの選択肢を増やしてみてはいかがだろうか。
化学とつながる職業の一つとして,公的研究機関や大学等で活躍する研究者がある。本稿では,文系タイプの高校生だった筆者がなぜ大学で化学を学び,研究者という職業についたのか,自らの体験を元に述べる。
化粧品原料商社の研究開発の仕事は,化粧品原料にハードとソフト面で付加価値を加えて提供し,顧客である化粧品会社により良い化粧品を開発していただくことにある。化粧品業界に触れながら,具体的な仕事内容を紹介する。
化学を活かせる職業は材料開発だけではない。様々な人との出会いを機に,エネルギー関連企業に入社,現在は大学で学んだ物理学や化学の基盤知識を活かして,石油製品や機能性化学品の『分析・評価』を行っている。
新しい高等学校学習指導要領に基づいたカリキュラムが,高校では2022年度からスタートする。過去の学習指導要領やそれに基づいて出版された高校化学の教科書を調べてみると,およそ50年前の高校化学の教科書においても,染色や染料についての記述が見受けられる。今回の新学習指導要領の中でも染料について記載されているので,新課程においても高校化学の中でこれまでと同様に取り扱われることと予想される。ここでは,高校化学での染料,染色について,実験を含めて紹介する。
小学校の理科実験でも使われるブロモチモールブルー(BTB),そしてBTBと同じスルホンフタレイン系色素に属するチモールブルー(TB)とが呈する色と分子構造の関係には諸説あり,はっきりとはしていなかった。本稿では,酸塩基指示薬の色と構造の関係について概説した後,可視吸収分光測定と量子化学計算により明らかとなったBTBおよびTBの色と分子構造の関係を紹介する。
ナノテクノロジーの進展に伴い,粒径が100nm以下の微粒子を用いた研究が広く知られるようになって久しい。なかでも微粒子と光との相互作用を利用した微量物質の測定への応用が数多く報告されている。本稿では,第6族金属酸化物である酸化タングステン(WO3),および酸化モリブデン(MoO3)微粒子の特異的フォトクロミズムを利用し,水溶液中に含まれる微量なα-アミノ酸を目視で認識する「比色分析」に応用した筆者らの試みについて紹介したい。
高等学校「化学」の教科書に記述されているフェーリング液の還元とベネジクト反応について,モデル化合物および単糖を用いて還元性の原因となる構造を調べた。その結果,グルコース,マンノースおよびフルクトースにおいてα-ヒドロ-α-ヒドロキシカルボニル構造-CH(OH)CO-がこれらの試薬との反応の原因となる構造であることを示す結果が得られた。
ポリ乳酸(PLA)とポリエチレンテレフタラート(PET)のけん化の速度を比較する実験教材を開発した。コンポスト中のPLAではエステル結合の非酵素的なけん化が進行した後,生成物が微生物によって分解・代謝される。したがってPLAとPETの分解性の相違は,分解における律速段階であるけん化の速度によって比較できる。本実験ではけん化を迅速に進めるために,塩化ベンジルドデシルジメチルアンモニウムを触媒として用いた。