液体から結晶が出現する様子は,とても神秘的である。中学校の実験では水に溶質を溶解させ,その溶解度と温度の関係から再結晶を析出させる。1時間ではなかなか大きな結晶ができず,立体的な結晶を実際に見ることができる機会は少ない。そこで,きれいで手で触りたくなるようなミョウバンの大きな結晶の作り方を紹介する。
高等学校「化学基礎」の「混合物の分離」の項目では,ろ過,蒸留,抽出,再結晶,クロマトグラフィー,昇華法などが扱われている。加えて,抽出の原理を理解しやすくするために,うがい薬と塩化銅(Ⅱ)との混合溶液を用いた実験を紹介する。
市販のチョコレートを使って「水に溶ける」という現象を体験させる。それを微視的な見方や考え方を働かせて説明させる場面を設定し,粒子概念を深める。これら溶解の学習を「チョコレートを用いた溶解の実験」としたオンライン授業を中学校第2・3学年の生徒を対象に試行的に行った。
身の回りにある材料を利用して気体を発生させる実験は,中学校の化学としては定番の実験であるが,身の回りのものを使って実験をすると,意外とうまくいかないことがしばしばある。ここでは,実験方法に注意点を加えて解説してみた。
カルメ焼きは,加熱して融けた砂糖の中で炭酸水素ナトリウムが熱分解し気泡を発生することを利用してつくる菓子である。実験教材としても,素材がダイナミックに膨張してふかふか構造になることや,操作の手応え感はもちろん,焼けた砂糖特有の香りまでも堪能できる人気の定番テーマとなっている。しかし,使用器具や材料,操作手順が容易であるにも関わらず,必ずしも期待通りの成果が出ないことが多いため,成功率を高めるための工夫を紹介したい。
酸化還元反応は,あらゆる日常生活の中で起こっているが,自宅にある材料を使って簡単に実験で確認できる。今回は,「食塩水」と「うがい薬(外用消毒薬イソジンうがい薬)」を用いて,気体発生と溶解,脱色作用,金属の溶解などをコップの中で一度に観察できる方法を紹介する
エントロピーは乱雑さを表す物理量であり,分子レベルでの微視的状態の可能性の数と結び付けられる。ここでは,2種類の気体の混合を例として,混合する前後で微視的状態数が変化し,その結果,エントロピーがモル分率に依存することを説明する。また,エントロピーを考慮した自由エネルギーを考え,化学ポテンシャルが混合物のそれぞれの成分の「部分モル自由エネルギー」であることを説明する。
水は温度によって,固体の氷になったり,気体の水蒸気になったりする。このような物質の状態の変化を相変化という。それぞれの相でのエンタルピーやエントロピーの変化量は定圧モル熱容量から計算でき,ギブズエネルギーはエンタルピーとエントロピーから計算できる。相平衡の状態では,二つの異なる相でのエンタルピーやエントロピーの大きさは異なるが,ギブズエネルギーの大きさは変わらない。
還元性を示す糖類がフェーリング液,ベネジクト試薬と反応する原因になる構造を解明するためにグルコース,フルクトース,マンノース,2-デオキシグルコースを基質とする反応を行い,生成した酸化銅(I)の物質量をベルトラン法における滴定によって求めた。またこれらの糖をアンモニア性硝酸銀水溶液と反応させ,試験管内壁に銀鏡として付着した銀,液相中に分散した銀微粒子および未反応のジアンミン銀(I)イオンの割合の時間変化を測定した。得られた結果から,鎖状構造における1位と2位のα-ヒドロキシカルボニル構造が各反応の原因であるという結論を得た。