核磁気共鳴(NMR)は原子核のスピンが静磁場の軸まわりに歳差運動するときの回転速度(ラーモア周波数)を測定することができる。この周波数はいわば原子核ひとつひとつを区別するために付けられた名札のような働きをするため,NMRは原子分解能をもつ分光器といえる。低分子においては非常に高い感度を示すため,同じように見える複数の飲み物でも,その中に含まれている成分の違いを言い当てることができる。
気相中の分子は自由に回転することができる。分子回転の基礎的な取り扱いを解説し,回転状態と分子軸の分布に関する説明を行う。分子の向きを観る方法として,高強度光によるイオン化を用いた方法を紹介する。さらに,高強度光を分子に照射することによって分子の回転運動を誘起し,分子軸分布が時々刻々と変化する様子を観測した例を紹介する。
コンピュータを使って化学研究を行うコンピュータシミュレーションについて解説する。分子動力学法では,系を構成するすべての分子の運動をニュートンの運動方程式を解くことによって逐一解析する。膨大な計算量が必要となるが,物質の振る舞いを分子ひとつひとつの座標を用いて議論できるという圧倒的な利点がある。ここでは,方法論について簡単に説明した後,ミセル,脂質膜,ウイルスの計算について紹介する。
ガラスは液体を結晶化することなく冷却固化した非晶質材料である。決まった化学組成はなく,目的に応じて組成が最適化された様々な特性を持ったガラスが開発されている。SiO2を主体としたシリケートガラスは,硬く,透明性に優れ,大量生産に向いているため,現代のテクノロジーを支える重要な材料として広く普及している。
電気で色が変わるガラス(調光ガラス)は,飛行機の窓などとして近年実用化が進んでいる。本講座では,筆者らが開発したエレクトロクロミック材料(メタロ超分子ポリマー)を例に,材料の合成方法,色が変わる仕組み,調光ガラスのデバイス構造などについて解説する。
光ラジカル開始剤を用いるクメン法の実験教材を開発した。光ラジカル開始剤として2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン,ラジカルキャリアとしてN-ヒドロキシフタルイミドを用いて室温でクメンの酸素酸化を行った。生成したクメンヒドロペルオキシドを固体ブレンステッド酸であるシリカゲル担持硫酸水素ナトリウムを用いて分解し,呈色反応によってフェノールとアセトンを検出した。
鉛蓄電池の電解質として硫酸の代わりに硫酸水素ナトリウムを用いる実験を検討した。硫酸水素ナトリウムを用いた場合,①硫酸鉛(Ⅱ)の剥離による電解質水溶液の白濁が起こりにくい,②充・放電時の電極の色の変化が顕著で観察しやすいという利点がある。本法による実験は硫酸を用いる従来法より安全で,かつ電池反応における変化を明瞭に観察することができる。