現代社会では,知識を習得するだけでなく,獲得した知識を適応して考える力が必要とされている。また,理科の授業で学習したことを普段の生活の中で活用することがイメージできず,有用性を感じていない児童が多い。そこで,4年生の単元「空気と水の性質」において知識の習得だけではなく,得た知識をもとに,どのように実践力へとつなげるかの授業展開を考えた。そこでのポイントとなる活用の場面を紹介する。
中学第2学年では炭酸水素ナトリウムや酸化銀の熱分解反応などを通して,基本粒子である原子の存在について学ぶが,生徒にとって原子概念の導入は唐突であり,中には加熱による分解反応と状態変化を混同する者もいる。そこで,熱分解反応の実験の過程でその事物・現象を分析・解釈していくことで,「物質には加熱すると分解するものとそれ以上分解しないものがある」ことに気づかせ,原子や分子の概念形成につなげる授業を試みた。
日本ではいわゆる理科離れに対応した授業の展開が叫ばれて久しいが,目に映る事象を扱う生物分野や地学分野に比べ,化学分野に興味を向けさせることは容易ではない。しかし,生徒たちは無関心というわけではなく,理科教師として,生徒の心を惹きつける工夫が必要である,今回は中学2年生の化学分野の導入として錬金術の実験を行い,この単元への動機づけを行った。
「化学基礎」の年間カリキュラムの後半で取り上げるダニエル電池は,半透膜が導入されていることでボルタ電池よりも実用的に機能するものとなっている。しかし,生徒はそのしくみを理解し解説することは不得手である。そこで,比較的操作が容易で短時間で終了する定性実験を配置した上で,生徒同士の情報共有と議論を経て,原理の考察に取り組ませた。科学的思考の困難さを感じつつも,論述式学習まとめである「考える問題」に意欲的に取り組む生徒の姿を報告する。
現代では簡易な検査キットが日常的に用いられている。身近な環境調査でも簡易測定を目的とした検査キットを用いる実践例が多い。特に水質検査では,検査試薬を封入したチューブに検水を吸い込み,その呈色から濃度を判定する市販の検査パック1)が普及している。これは測定原理を知らなくても簡単に使うことができる。現任校の課題研究では,封入する検査試薬を独自に調製し,数種の自作水質検査キットの試作に取り組んだ。
私語をする,居眠りをする……など,学生が授業に集中せずクラスの秩序が失われていくさまは,新任教員にとって時に恐怖を感じさせるものとなる。筆者はこれまでに,アクティブラーニング(以下AL)型授業による授業改善に取り組んできた。本稿では,AL型授業を行った際の学生の様子について紹介する。
物質の分離精製には,カラムクロマトグラフィーが有効な手法となっている。講義だけでは理解しにくいカラムクロマトグラフィーの原理や技術について,生葉から抽出した光合成色素を用い,目で見て自分たちの手で分離精製することを実感できる実験を行った。
大学1年生前期に開講される講義では,新入生ならではの質問が,受講生が内容をより理解するためのヒントとなることがある。また,定期試験の採点の中で,予想外に不正解であった問題は,次年度の講義に向けての課題・指針を与えてくれる。本稿では,物理化学分野のうち原子・分子の構造に関する部分を学ぶ専門導入科目「化学Ⅰ」において,学生からの質問とそのフィードバック,講義の進め方や工夫を紹介する。
無機物質に見られる様々な色は,可視域の特定の波長の光と無機物質との相互作用の結果として現れるものであり,光の吸収と発光が本質的に無機物質の色の違いにかかわる。また,散乱や反射といった現象は色の見え方に影響を及ぼす。光の干渉が独特の色調をもたらす場合もある。無機物質における光吸収や発光の起源として重要なものは,遷移金属イオンのd軌道が関与する電子遷移,結晶におけるバンド間遷移などである。また,金属光沢は光の反射に基づく現象であり,金属中の自由電子がその起源となる。本稿では具体的な例を挙げながら,無機物質における光の振舞いと色との関係を解説する。
金属錯体の諸性質は,混成軌道の立場から考える原子価結合法,金属のd軌道と配位子との静電反発によるd軌道の分裂に基づく結晶場理論,さらに分子軌道法を用いた配位子場理論から考察することができる。結晶場理論を用いた金属錯体のd軌道の分裂を説明し,電子遷移に伴う金属錯体の色について解説する。
歯磨剤は,様々な成分(研磨剤,湿潤剤,発泡剤,粘結剤,抗菌剤など)を配合して,使いやすく,安全でかつ長期間安定な物理的・化学的特性が発揮できるようにつくられている。一方,フッ化物や殺菌剤などの薬用成分を配合して,虫歯や歯周病の予防・改善あるいはステインや口臭の防止にも有用なものである1)。日常,何気なく使っている歯磨剤の中身とフッ化物による虫歯予防のメカニズムを化学の目で見てみる。