日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1974 巻, 4 号
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  • 上野 正勝, 清水 澄, 大杉 治郎
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 611-616
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-2型電解質であるニトロペソタアンミンコパルト(III)硫酸塩の水溶液について,圧力1~3000kg/cm3まで,温度15,25,40℃,濃度2.0×10顧壌~1.0×10-3 Nの条件下で電気伝導度を測定した。無限希釈での当量伝導度AeはKohlrauschプロットの外挿値から求めた。Aeの圧力依存性を見ると,は溶媒である水の粘度が極小値をとる圧力よりも高い圧力で極大値を示した。この現象は水和されたイオンがその水和数を一定にたもったまま,圧力により圧縮されるという考えで,定性的には説明され得る。伝導度の測定により,イオン対の解離定数を3000 kg/cm3まで決定し,イオン対最近接距離aおよび解離にともなう体積変化d VOを求め,イオン対の水和の状態について考察した。その結果このイオン対はかなりcontact typeであり,また水分子との相互作用も強いと考えられた。
  • 松鶴 秀夫, 和達 嘉樹
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 617-621
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    極低濃度プルトニウム(IV)(1.5×10-7=mol/l)のキレート樹脂Dowex A-1へのイオン交換吸着について,平衡論的,速度論的検討を一定容積系で行なった。
    プルトニウム(IV)の分配係数のpH,イオン強度およびプルトニウム(IV)濃度依存性から,プルトニウム(IV)がPu4+,およびPu(OH)8+として存在しているpH領域における吸着は,プルトニウム(IV)と樹脂の官能基のイミノ二酢酸とのキレート形成反応によるものが主であるが,分配係数がイオン強度に依存するpH領域(pH 4以上)におけるイオン交換吸着は, Pu(OH)22+,およびPu(OH)3+などの逐次加水分解物の重合反応によって生成した多量体が,樹脂表面に吸着したものと考えられる。
    プルトニウム(IV)のpH 3における吸着速度は,イオン強度,樹脂粒の半径に依存せず,拡散律速の速度式にはしたがわず,擬一次反応速度式にしたがうことが明らかとなった。したがって,この反応の律速段階はプルトニウム(IV)と官能基であるイミノ二酢酸とのキレート形成反応であると考えられる。なお,イオン強度O.1におけるこの反応の見かけの活性化エネルギーとして18.4kcal/molを得た。
  • 原田 茂治, 小松 剛, 中川 鶴太郎
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 622-625
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    粘度,電気伝導度,透析平衡の実験により,水溶液中におけるポリ(ビニルピロリドン)と主としてドデシルアンモニウム塩との相互作用を研究した。
    その結果,ドデシルアンモニウムのチオシアン化物およびヨウ化物のポリ(ビニルピロリドン)への結合が認められた。結合量は チオシアン化物>ヨウ化物であり,一方,粘度測定から,臭化物,塩化物はほとんど結合しないと考えられる。また,ヨウ化テトラブチルアンモニウムはわずか結合するが,臭化テトラブチルアンモニウム,ヨウ化カリウムは結合しない。アルキルアンモニウム塩については,カチオンがある程度の疎水基をもち,その対イオンが水の構造を強く破壊する性質をもつほどポリ(ビニルピロリドソ)に結合しやすいといえる。
  • 金高 純一
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 626-630
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    市販のニッケル-ケイソウ土敏媒を用いて,反応圧力50~120kg/cm2,反応温度180~290℃の範囲でγ-ブチロラクトンの水素化反応を行なった。主生成物はテトラヒドロフランであり,1,4-ブタンジオールは認められなかった。副生成物はn-プロパノール,n-ブタノールなどの低級アルコールおよびプロピオン酸,酪酸などの低級カルボン酸であった。これらの副生成物は反応温度が高くなるにしたがって急激な増加をみせたが,テトラヒドロフランはあまり増加しなかった。この反応について動力学的検討を行なったところ,γ-ブチロラクトン濃度に1次,水素圧に1/2次,さらに反応によって生ずる水および低級カルボン酸によって強い吸着被毒を受けているとして反応速度式を整理することができた。
  • 野崎 亨, 木村 勇
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 631-635
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    均一溶液から沈殿させた,いわゆる均一沈殿法により調製したシリカーマンガン(II),-亜鉛(II)および-マグネシウム(II)触媒の2-プロパノール脱水活性を,主として速度論的に従来の共同沈殿法のものと比較検討した。
    また,水溶液中でのpH滴定により,これらは酸強度および酸性度が共沈触媒より大きい多塩基酸固体であることがわかった。
    アルカリ添加による比活性の減少度から,均一法の脱水活性点はシリカより酸強度の大きい酸点,すなわちシリカと結合した金属に起因するLewis酸点であり,両法の脱水活怪の差異はこの活性点の量の差異によることが推定された。
  • 山形 信嗣, 岡崎 進
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 636-640
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    いろいろの金属フッ化物を触媒として,1,1, 2-トリクロロエタン(TCE)および1,2-ジクロロプロパン(DCP)の接触脱塩化水素反応が,通常の管型固定床反応器で行なわれた。これらの接触脱塩化水素反応に対する金属フッ化物の触媒活性序列は,ほぼ AlF3 MgF2>CaF2>CrF3>ZrF4 LiFであった。また,その選択性は,TCEでは, cis-1,2-ジクロロエチレン>trans-1,2-ジクロロエチレン>>1,1-ジクロロエチレン,DCPでは,cis-1-クロロプロペン 3-クロロプロペン>trans-1-クロロプロペン>>2-クロロプロベンであり,代表的固体酸であるシリカ,アルミナの選択性と類似した。
    さらに,フッ化アルミニウムについて調べた。フッ化アルミニウムの焼成温度とともに触媒活性は低下した。また水酸化ナトリウムによる被毒にともない,触媒活性の低下がみられ,表面酸性度とよく一致した。ピリジン吸着による赤外吸収スペクトル測定から,フッ化アルミニウムの酸性質が,Bronsted油点およびLewis酸点を有することがわかった。
  • 小松 進, 山口 悟郎
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 641-645
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    原油の接触分解ガス化反応に使用中のMgO-CaO-Al203-NiO系触媒に生成するバナジウム化合物(3MgO,V205および3(Ca,Mg)O,2 V2O5)の還元雰囲気における挙動をX線解析によって調べ,この挙動と活性低下との関連性を調べるために,これらバナジウム化合物のニッケル置換体について,融点の測定と活性試験を行なった。この結果,3 MgO,V20sは還元雰囲気中において,MgOと2MgO,V 02およびMgO,V203のスピネル型鉱物,あるいは(x+1)MgO,V(2-x)O(3-x)で表わされるスピネル固溶体とに分解し,3(Ca,Mg)O,2V205はバナデイト部分が還元されて,3(Ca, Mg)O,2 V,03を形成することがわかった。
    これらバナジウム化合物のニッケル置換体の融点は,3(Ca,Mg1-x,Nix) O,2 V2O6のみが1080℃であり,その他のものはすべて1250℃以上であった。またこれらの化合物はいずれも高い触媒活性を有していた。したがって活性低下の原因は,低融点鉱物の3(Ca,Mgi-x,Nix)O,2 V305が生成し,これが使用中のブロー期において高温酸化雰囲気にさらされたさいに,溶解または半融して固溶されているニッケル酸化物の還元分解が困難になったためと考える。
  • 金高 純一, 森 彰一郎
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 646-651
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    無水コハク酸を接触水素化してγ-ブチロラクトンおよびテトラヒドロフラソを得るのに有効な触媒として,ニッケルにモリブデンを添加した触媒系を見いだした。
    モリブデンの対ニッケル原子比を0~0.3の範囲で変化させて触媒活性を検討したところ,0~0.14の範囲ではモリブデンの添加量を増すにしたがって活性は向上したが,0.14以上では逆に低下した。
    触媒担体としてケイソウ土とSiO2,Al203とを用いて比較したところ活性,選択性いずれに対してもSiO2,Al203が良好であった。
    各種組成の触媒についてX線回折を行ない,モリブデンがニッケルに固溶していることがわかった。さらにNi(III)面の格子定数と結晶粒径とを求めて,触媒活性との関係を求めた。
  • 竹平 勝臣, 西村 功, 荒木 道郎, 早川 孝, 石川 敏夫
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 652-658
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    パナジウム-クロム酸化物系触媒によるアクロレインの液相酸化を行ない,触媒の構造と活性の関係について検討した。触媒は,NH4VO3とCr(NO3)8,9 H2O,NH4VO3とCr(OH)3,n H20およびV2O5とCr2O3の3種目出発原料組み合わせでそれぞれいくつかのv/cr組成で混練したのち,450℃で焼成して調製し前記原料組み合わせに応じてA,BおよびCとした。 X線回折によれば,C中ではV2O5とCr2O3のみが認められたが,AおよびB中ではこれら以外に2種類の構造の生成が認められ,ESR測定の結果その中の一つにはV4+が含まれることが推定された。このV4+を含む構造(Y)はA中に多く,またもう一つの構造(X)はB中に多く認められた。800℃近傍での熱処理により構造YはV205,構造XおよびCrV 04に分解溶融した。IR分析からは,構造X中には-V-0-Cr-結合のみが,構造Y中には-V-OCr-および-V-O-V-の両者の結合が存在すると思われる。触媒Cの活性はV205によるものと考えられるが,AおよびBはCよりも高い活性を示し,これは構造Yに基づくものと推定される。そこでNH3によりAからV205を溶離し,構造Yを主成分とした触媒による反応を行ない,その高活性を確認することができた。
  • 谷 忠昭
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 659-663
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    約0.7μの立方体および八面体型臭化銀粒子からなる乳剤でフェノサフラニン〔1〕,9-メチル-チアカルボシアニン〔2〕および5,5 -ジフェニル-9-エチル-オキサカルボシアニン〔3〕の減感作用を調べた。〔1〕の減感は八面体粒子より立方体粒子で強かった。〔2〕と〔3〕の減感は立方体より八面体粒子で強かった。この結果は〔1〕の減感は〔2〕と〔3〕の減感と機構的に異なることを示している。乳剤の反射スペクトルの測定から,〔1〕は乳剤中で会合体を形成しないことがわかった。会合体機構は〔1〕の減感に対しては妥当でない。〔2〕の会合体(H会合体)は立方体より八面体粒子上でできやすかったが,〔3〕の会合体(J会合体)は立方体上でも八面体上でもできやすかった。したがって,減感の潔癖依存性は色素の会合体形成の相違とは対応しない。これらの現象は,電子トラップ〔1〕と正孔トラップ(〔2〕と〔3〕)の写真作用の粒子依存性という観点から説明された。
  • 市野 秀俊, 山下 正通, 窪川 真男
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 664-668
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸素ガスを飽和させた電解液を電極に透過させる液透過型電極によるカソード分極曲線においてヒステリシスが認められた。これが酸素の還元による中間生成物である過酸化水素によるものであることを定量的に関連づけることができた。この生成過酸化水素は電極内ですみやかに分解または反応して分極を小さくすることがわかった。そこで,過酸化水素をアルカリ溶液中に添加して過酸化水素のカソード反応について,液透過流量および過酸化水素濃度の分極曲線におよぼす影響を調べた。さらに,過酸化水素は電極内での接触分解が大きいため液透過方向により分極特性は大きく変わることを電極内の電流分布と関連して説明した。すなわち,液の透過は電極の前面から透過させることが必要であり,また有効である。また,電極をできるだけ薄く,機械的に強いものにするため多孔質ニッケル電極を用い,これに添加する触媒について検討し,炭素電極に比較して簡単で添加量も少なく分極特性のよい電極が得られた。
  • 市野 秀俊, 山下 正通, 窪川 真男
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 669-672
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    液透過型電極として多孔質ニッケル板(厚さ0.6mm)にPt-Pd混合触媒を添加して,アルカリ溶液中でのヒドラジンのアノード反応および過酸化水素のカソード反応を調べた結果,一般の多孔質電極よりかなり低濃度でも十分大きな電流密度で放電できることがわかった。そこで,実際に両極に組み合わせて燃料電池としての特性を調べた。まず,単電池の特性を液透過流量および反応物質濃度について検討し,電池の出力はこれらによって容易にコントロールできることがわかった。また,この単電池の放電特性より電極により発生する気体(N2,H2,O2)をすみやかに除去することにより電池の内部抵抗を小さくし,さらに液透過を容易にし放電特性を改良することができた。この結果をもとにして単電池を3個並列にした電池の放電特性,およびヒドラジン,過酸化水素の電流効率を調べ7W(93 mW/cm2,187 mA/cm2,0.5V)の出力が得られた。なお,比較的単期間の寿命試験では放電特性の変化は認められなかった。
  • 曽谷 紀之, 斎藤 祐四郎, 種田 正代, 長谷川 正知
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 673-679
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    5種類の酸化モリブデンの含水物を得た。それぞれの構造と加熱による変化についての詳細な知見を得るため,DTA-TGA, X線回折,IRおよびNMRを用いて調べた。その結果,3種の水和物(試料A,B,D)と2種の含水物(試料C,E)の存在を確認した。
    試料Aと試料Bについては,舟木らやCarpeniの報告と一致した。試料Dは舟木らの報告しているように,脱水後すぐに斜方Mo03になるのではなく,無定形MoO3から六方MoO3を経て斜方MoO3になることがわかった。
    試料Cは試料Aを約70℃で温水処理すると得られ,結晶構造は斜方MoO3と同じである。加熱により徐々に脱水するが,相変化は認められない。試料Eはパラモリブデン酸の飽和溶液を2~3molの酸性度で約70℃にたもつと得られる。構造は六方晶系に属する。加熱により脱水して無水物となるが,構造に変化はない。420~430℃で不可逆的に斜方MoO3に転移する。試料Cおよび試料Eは結晶格子間隙にH20が吸蔵または包接された含水物である。なお試料Eの無水物は従来報告されていないMo03の準安定体である。
  • 北島 圀夫, 大門 信利
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 680-684
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    NaB(C6H5)4処理による合成フッ素四ケイ素雲母[KMg2.5(Si4O10)F2](二フッ化四ケイ酸マグネシウムカリウム)の変質反応および変質物につき,X線回折, TG, DTA,化学分析などにより検討を加えた。また,フッ素金雲母[KMg3(AlSi3O10)F2]についても同様な検討を加え,これらの両フッ素雲母の変質反応性の比較検討を行ないつぎの結果を得た。
    1)NaB(C6H5)処理により前述の両フッ素雲母はともに変質し,三遍性および塩基交換性をもつようになる。
    2)変質反応はフッ素金雲母に比較し,フッ素四ケイ素雲母の方がより容易に進行する。これは両雲母の結晶構造中における電荷のパランスの取り方の相違によるためと考えられる。
    3)フッ素四ケイ素雲母の変質物には二段階の膨潤段階が存在し二水層型(15.05 A)と一水層型(12.28 A)が認められる。なお,通常の空気中(20℃,R.H.= 60%)では一水層型が安定である。また,一水層型は100℃以下で容易に脱水し無水型(9.98A)となり,これらの挙動は全般的にナトリウム型テニオライト[NaMg2Li(Si4010)F2]の膨潤特性と似ている。
    4)変質反応はおもに層間における変化で,フッ素四ケイ素雲母では層間のK+イオンの約70%がNa+イオンで交換され,かつこれと同時に水分子が層間に配位する変化である。
    5)フッ素金雲母の変質物では,ほぼ一水層型(12.26 A)までしか膨潤しない。
  • 北島 圀人, 大門 信利
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 685-689
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナトリウム型フッ素へクトライト無水物[Na1/3Mg2(2/3)(Si4O10)F2]の合成が試みられ,その生成が確認された。その結果,〔2〕が水による膨潤性を有することが明らかとなり,かつその膨潤性はナトリウム型ライト のそれよりも大きいことが明らかとなった。すなわち〔1〕が二水層型までしか膨潤しないのに対し,〔2〕では水層型に対応するところの18,82Aの層間周期をもった加水層が認められ,かついわゆる無限膨潤的性格を示した。このように〔1〕に比較して〔2〕におけるより大きな 〔2〕における層電荷の滅少と,層間の空孔の増 起因しているものと思われる。なお〔2〕の層間Na+イオンは塩基交換能を有することが判明した。
  • 喜谷 喜徳, 大平 一夫, 小池 久
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 690-695
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    キノキサリソN-オキシドおよびN,N-ジオキシド誘導体がハロゲン化銅(II)と1:1あるいは2:1の錯体を形成することを見いだした。配位子の赤外吸収スペクトルを固体および二硫化炭素,クロロホルム溶液で測定し,N-ナキシド基の伸縮振動の帰属を行ない,また,得られた錯体の赤外吸収スペクトルは固体状態で測定し,ハロゲン化銅(II)への配位部位をN-オキシド基の伸縮振動のシフトから予想した。すなわち,キノキサリン1-オキシドの場合,塩化銅(II)錯体の吸収帯は配位子のそれよりも14cm-1高波数にシフトし,環窒素との結合が考えられるのに対して,キノキサリン1,4-ジオキシドの塩化銅(II)錯体では11cm-1低波数にシフトし, N-オキシド基への配位が考えられ,また遠赤外吸収スペクトルでも397cm-1にYcu-o と考えられる吸収が認められることから同じ結論に達した。さらに錯体の拡散反射吸収スペクトルを測定した。
  • 野々山 松雄, 佐藤 恭子, 山崎 一雄
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 696-702
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    N-(2-ピリルメチル)-2-(ジメチルアミノ)アセトアミド(pdgH)を配位したニッケル(II),パラジウム(II),白金(II)および銅(II)錯体M(pdg)X n H2Oを合成し,それらの赤外,可視,紫外およびNMRスペクト2Uならびに磁化率を測定した。これらの錯体中では,pdgHは酸アミド基の水素を解離してその窒素,ピリジン環の窒素およびジメチルアミノ基の窒素とで配位する三座配位子となっている。銅錯体は常磁性で正常な磁気モーメントを示すが,他のすべての錯体は反磁性で平面四配位構造をもつ。バラジウムおよび白金錯体のNMRスペクトルにおいて,ピリジ環の6-位の水素はハロゲンXに大きく依存した化学シフトを示す。また窒素で配位した酸アミド基の酸素がまだかなりの配位能力をもっていることが,シフト試薬Eu(dPm)3,トリス(ジビバロイルメタナト)ユウロピウム(III)の使用により明らかとなった。
  • 太田 直一, 戸村 健児, 大森 昌衛
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 703-711
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    東北日本の中新世,鮮新世,洪積世および現世の堆積物から採集した二枚貝の貝殻(海四種5種類,44例および淡水種2種類,7例)中のアルミニウム,チタンおよびバナジウム含量を,非破壊法による中性子放射化分析で定量した。
    現世貝殻中のアルミニウム,チタンおよびバナジウム含量は,炭酸カルシウムの結晶形や貝殻構造によって相違し,葉状構造で方解石型の貝殻中には,アラレ石型の貝殻や,均質構造または複合陵柱構造で方解石型の貝殻中より多量に存在する。
    貝殻中のアルミニウム,チタンおよびバナジウム含量の年代変化は,元素によって,また炭酸カルシウムの結晶形,貝殻構造などによって若干異なるものの,地質時代の古いものほど多くなり,貝殻中の残存有機物量の年代変化とは対照的な傾向が認められた。また,V/Alの値が大きい堆積物中に埋没していたものほど,貝殻中のV/Alの値も大きくなる傾向も認められた。これらの結果および各元素の地球化学的性質から,化石貝殻中に富化されているアルミニウム,チタンおよびバナジウムは,化石化の過程で貝殻中の有機物の分解の進むにつれて,周囲の堆積物から蓄積されたものであると想像される。
  • 松本 清, 筬島 豊
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 712-717
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高周波ポーラログラムが上昇波(正整流効果による波)と下降波(負整流効果による波)とからなることに着目し,これら2波の波高の絶対比を波形の指標として採用した。周波数によるポーラログラフ波形の変化を論じた。
    高周波ポーラログラムの波形は移動係数(α)がO.5より大きい場合,周波数の増大にともなって正整流効果を増し,移動係数が0.5より小さい場合,周波数の増大にともなって負整流効果を増した。また,上昇波の波高(imax)と下降波の波高(imin)との絶対比すなわち(imax/imin)あるいは(imin/imax)は周波数の平方根と直線関係を示した。
    周波数による電極過程の波形変化への依存牲は複雑であるけれども,Xが10以下の系では一般にαが大きいほど正整流効果が顕著になるといい得た。
    分析化学の見地から,おのおのの電解系の周波数依存性を用いることにより,多成分系の各成分を分離することが可能であろう。
  • 辛 重基, 米沢 養躬, 吉村 寿次
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 718-723
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    トレオ体とエリトロ体の比がそれぞれ70:30および50:50であるとみられるβ-アセトキシ-α-ニトロカルポン酸エステル〔2〕およびα-アセトキシ-β-ニトロカルボン酸エステル〔5〕を合成し,その立体異怪体比とそれらの塩基性触媒存在下におけるβ-脱離反応によって生成したα-ニトロ-α,β-不飽和カルボン酸エステル〔3〕,およびβ-ニトロ-α,β-不飽和カルボン酸エステル〔6〕の幾何異性体は,前者では(Z)-体と(E)-体,の比が70:30の混合物であり,後老では(E)-体のみであることを明らかにした。(E)-〔6〕は紫外線照射により(z)-体に異性化する。これらの事実から,前者では立体特異的なE2型のトランス脱離を,後者ではカルボアニオンを経由するE1cB機構をとるもの結論した。
  • 松原 義治, 笠野 雅信, 木村 順一
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 724-726
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ミルセン(1)とアクリル酸メチル(2)およびアクリルアルデヒド(3)との熱付加について検討した。
    (1)と(2)からは約2:3の生成比で1-メトキシカルポニル-3-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン(4)と1-メトキシカルボニル-4-(4-メチル-3-ペンテニル)-4-シクロヘキセン(7)を,(1)と(3)からも約2:3の生成比で1-ホルミル-3-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン (5)と1-ホルミル-4-(4-メチル-3-ペンテニル)-4-シクロヘキセン(8)の生成することを認めた。
    また(7),(8)を還元して得られる1-ヒドロキシメチル-4-(4-メチル-3-ペンテニル)-4-シクロヘキセン(9)と低級脂肪酸(炭素数2~4)とのエステル体を合成し,それらの性状と芳香を明らかにした。
    熱付加体はすべて新鮮な木香ようの芳香を有し,アルコール体およびエステル体はいずれも花香ようの芳香を有し香料として有用と思われる。
  • 山内 慎司, 藤井 修冶
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 727-731
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    不反応性溶媒としてシクロヘキサンを用い,安息香酸無水物と過剰の酸化銅(II)とをいろいろの反応温度で1時間反応を行ない,分離物の収量,元素分析および塩酸分解の結果から,安息香酸銅(I),(II)と異なった特殊な構造の安息香酸銅〔1〕に変化した安息香酸無水物の割合を求めた。これらの収率は240℃,1時間反応でそれぞれ20.9,27.3,23.4mol%とほぼ一致し,また240℃付近から急激に増加した。一方,〔1〕が含まれると考えられる分離物のX線回折図を酸化銅(II),安息香酸銅(I),(II)の各X線回折図と比較検討したところ,異なった回折線が得られた。
  • 干鯛 真信, 石見 一雄, 岩瀬 正明, 内田 安三
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 732-734
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,2-ピスジフェニルホスフィノエタン(DPE)またはα,α'-ジピリジル(Dipy)の存在下にピスシクロオクテソクロロロジウム〔1〕とアグロレインを反応させることにより,DPEの場合には黄色結晶のRh(COC1)(CH=CH2)(CH2=CHCHO)(DPE)〔2〕なる構造の錯体が得られ,この錯体〔2〕はトリフェニルポスフィンとの反応により,エチレンガスの発生をともなってカルボニル錯体RhC1(CO)(PPh3)2を与える。また〔2〕をアセトン中で再結晶することにより,[RhCl(DPE)]2なる構造をもつ赤色結晶のブリヅジ錯体が得られる。一方,Dipyの場合には,茶色粉末のRhCl(CH2=CHCHO)2(Dipy)なる構造の錯体〔3〕が得られた。また,ロジウム-アクロレイン錯体の触媒反応について若干の検討を行ない,エチレン,一酸化炭素およびアクロレインとの反応により,少量のエチルビニルケトン,ジエチルケトンが生成することを確認した。
  • 横山 晋, 伊藤 光臣, 武谷 愿
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 735-741
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    石炭化度の異なる一連の北海道炭12種(C:61~86%)のピリジン抽出物について,酸素の結合形態とその含量を化学的手法ならびに高分解能NMRスペクトル分析から検討した。
    白炭のC%に対する各ピリジン抽出物の水酸基(OH),カルボニル基(C=O),不活性含酸素基の各酸素含量は,低石炭化度炭から調製したピリジン抽出物では,原炭における各含量より低い傾向であるが,C%の増加によって両者の含量の差は縮まり,C:80%近辺でほぼ同含量になる。この現象は塔司のC%に対する原炭とそのピリジン抽出物の芳香族性指数faの関係で見られる現象と類似している。これより水酸基は芳香族環につくフェノール性の酸素構造であり,また不活性酸素の形態は大部分異電環構造あるいはビフェニルエーテル型構造として存在するものと考えられる。
    さらに,住吉炭の各溶剤分別物についても,化学構造の指数として芳香族性指数を選び,これと各含酸素基(OH,C=O,不活性含酸素基)の含量との相関性を求めたところ,両者の間にはよい比例関係が見いだされた。このことは,三炭とそのピリジン抽出物との間で認められた各含酸素基の構造に関する考察をさらに支持するものである。
  • 真壁 正孝, 片山 優久雄, 伊藤 博徳, 武谷 げん
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 742-746
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナフタレンを塩化アルミニウム触媒を用いて,90~160℃,O.5~2時間の範囲で重縮合反応を行ない,反応生成物を得た。
    反応温度の高いほど,反応時間の長いほどさらに触媒量が多いほど,高収率で生成物が得られた。
    生成物および生成物からn-ヘキサン,ベンゼンを用いて分別した分別物,レジン(n-ヘキサン可灘物),アスファルテン(n-ヘキサン不溶,ベンゼン可溶物)のNMRおよびIRスペクトルは類似しており,両者の化学構造が類似していることを示唆している。
    反応条件が異なっても,レジγ,アスフアルテンは類似の平均分子量を有し,平均重合度はレジンがナフタレンの2.3~2.9量体,アスファルテンが3.2~4.1量体程度であった。
    IRおよびNMRスペクトルから生成物およびレジン,アスファルテンには,一部脂環構造が存在することが認められた。さらに三量体以上の生成物はナフタレンの2,6-位で結合しているものと推察された。
  • 伊藤 博徳, 横山 晋, 山本 正八, 真壁 正孝, 武谷 愿
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 747-752
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナフタレンを塩化アルミニウム,塩化銅(II)を用い,ナフタレンの融点以上の反応温度で重縮合反応を行ない,得られる生成物(アスファルテン類似物質)をn-ヘキサン,ベンゼンの混合割合の異なる混合溶剤により,段階的に溶解する方法によって五つのフラクションに分別した。各種の機器分析によって,分別フラクションの構造解析を行なった。
    反応温度90℃の場合,生成物の収率は約40%であった。フラクションNo.1(n-ヘキサン100%可溶成分)が生成物の40%を占めており,フラクションNo.3(n-ヘキサン60%,ベンゼン40%混合溶剤可溶成分)までに生成物の約90%が溶解したので,この生成物は比較的重合度が低いことが推定された。
    平均分子量はフラクション番号の増加とともに,260から900程度まで大きくなっている。IR,UVスペクトルから2,2'-ビナフチルおよびナフタレンの2,6-位で結合した三量体以上の生成物の存在が示唆された。さらにNMRスペクトルからも,生成物は一部脂肪族構造を有することも明らかであった。
    各フラクションの講造指数から,分子量の大きいフラクションほど芳香油性が大きくなる傾向が認められたが,側鎖脂肪炭素数はいずれのフラクションでもほぼ2であり,一部脂環構造が存在することが推定される。
  • 請川 孝治, 神谷 佳男
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 753-756
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-プロパノールおよび1-フェニルエタノールの自動酸化を各種カルボン酸の存在下で行なった。モノカルボン酸の濃度が増加するにつれてkp/(2 kt)1/2は大きく減少し,その程度はp-ニトロ安息香酸を除けば,モノカルボン酸の酸強度とは無関係に一定であった。安息香酸置換体存在下での1-フェニルエタノールの自動酸化のkp/(2kt)1/2 は置換基によらず一定であり,p-ニトロ安息香酸だけが極端に小さい値を示した。またニトロベンゼンを添加したときも抑制効果がみられた。
    1-フェニルエタノールに分子内陣素結合をつくりやすいオルトフタル酸を添加したときは分子内水素結合をつくりにくいフタル酸を添加したときよりkp/(2 kt)1/2の減少の程度は小さかった。
    ヒドロペルオキシルラジカルを連鎖担体とする1,4-シクロヘキサジエンの酸化のkp/(2 kt)1/2は酢酸の添加により大きく減少した。また,ヒドロペルオキシド法によってアルコールの自動酸化における連鎖担体を1,2,3,4-テトラピドロ-1-ナフチルペルオキシルラジカルに変換すると,酢酸を添加してもkp/(2 kt)1/2は減少しなかった。
    これらのことから,アルコールから生成するペルオキシルラジカルは炭化水素から生成するペルオキシルラジカルと異なり,カルボン酸と水素結合をつくり,不活性化されると考えられる。またニトロ基も連鎖反応に関与して抑制効果を示すと考えられる。
  • 北尾 悌次郎, 和多田 幸夫, 松岡 賢, 小西 謙三
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 757-761
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ニトロ基を有する二三のアゾ系分散染料の光退色挙動がポリエステルおよびポリアミドフィルム上で調べられた。そしてこれら染料の異常退色におよぼすニトロ基の寄与が検討考察された。アゾ系分散染料の耐光性は光酸化のうけやすさとキノソヒドラゾン構造の寄与によって決まるので電子吸引性基の導入は耐光性を向上させることになっている。ところがニトロ基を有する染料ではこれに矛盾して特異的に腺癌性が低下する異常現象を示す場合がある。4-ニトロアゾベンゼン系染料の異常退色はポリアミド上にみられる基質特異性現象であって,染料の塩基性度と異常退色のうけやすさとの間にはある関係がみられる。すなわち,カップリング成分の電子供与力が小さいほど,またはジアゾ成分の電子吸引力が大きいほど異常退色をうけやすく,ここではさきの機構に優先するニトロ基の光還元の寄与が示唆される。一方,2-ニトロアゾベンゼン系染料の異常退色は基質には関係なくみられる位置特異性現象であって,嫌気条件下でもその退色挙動は変わらない。ここではo-ニトロ基とアゾ基との分子内酸化還元反応によるアゾキシ化の寄与が示唆される。また,2,4-ジニトロアゾベンゼン系染料の退色挙動についても検討考察した。
  • 広井 満, 高岡 大輔
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 762-765
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    樟の一品種セスキテルペン樟の葉から不揮発牲セスキテルペノイドとして,9-オキソネロリドール〔1〕,cis- およびtrans-3, 7, 11-トリメチルドデカ-1,7,10-トリエン-3-オール-9-オン〔2〕,〔8〕,9-ナキソファルネゾール〔4〕および酢酸9-オキソファルネジル〔5〕を単離,同定した。このうち〔1〕は主成分で,その絶対配置は(+)-ネロリドールとの関連で決定した。構造決定は,物理的,化学的手段で行ない,単離は主として吸着クロマトグラフィーによって行なった。
  • 橋本 穂, 功刀 利夫, 平井 幹, 座間 秀夫, 村田 敏一
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 766-770
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)皮膜をN,N-ジメチルホルムアミド,N,N-ジメチルアセトアミドのグリコール溶液を用いて膨潤延伸,熱処理を行ない,それの微細構造および機械的性質に与える影響を調べ,水溶液使用の場合と比較検討した。
    その結果,グリコール溶液中での膨潤延伸は水溶液の場合より低温で延伸可能で,N,N-ジメチルホルムアミドの濃度も低くてすみ,延伸性も高い。また,膨潤熱処理後の皮膜の機械的性質は水溶液の場合とほぼ等しいが,切断伸度および結晶性はやや大きいことがわかった。
    さらに,結晶化度や配向度の定量的取り扱いを目的として,非晶部X線干渉強度曲線および理想配向状態の複屈折を規定し,これを用いて微細構造の変化を明らかにした。
  • 西出 宏之, 西川 洋, 土田 英俊
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 771-774
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    銅-ピリジン錯体を触媒とする2, 6-キシレノールの酸化重合は,基質の配位(k1),基質から銅(II)への電子移動(ke),活性化された基質の脱離(kd),触媒の再酸化(ko)の四つの素過程からなる触媒サイクルを形成している。銅錯体触媒のスペクトル変化をストップドフロー法で追跡することにより各素反応の速度定数を決定し,触媒機梅の詳細を議論した。各速度定数を比較すると,keまたは本実験では測定不可能であったkdが律速過程であると考えられる。また酸素は銅(II)-基質錯体に関与し,ke過程を促進している。各速度定数は溶媒種の影響を受け,配位能をもった二三の溶媒を除き,k1およびkeは溶媒の極性にともなって増大し,逆にkoは溶媒の極性とともに減少した。
  • 井本 稔, 大内 辰郎, 田中 武
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 775-778
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェロセン(Fc)-四塩化炭素系で3種のビニルモノマーの重合を光遮断下で行なったところ,スチレンは重合しないが,メタクリル酸メチル(MMA)およびアクリロニトリルが選択的に重合し,光が必ずしも必要でないことがわかった。しかし,ベンゼンを溶媒としたこの系でのMMAの暗下での重合における速度式はつぎのようになり,光増感重合の結果と一致した。
    R = k[Fc]0.6[CCl4]0.5[MMA]1.5
    なお,この系に水が存在すると重合率が低下すること,および重合がラジカル的に進んでいることが確かめられた。
    また見かけの全活性化エネルギーは13.0kcal/molと求められた。
  • 田島 哲夫, 大北 雅, 大津 隆行
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 779-783
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2,4,6-トリブロモフェニル=アクリラート(TBPA),ペンタブロモフェニル=アクリラート(PBPA)および2,4,6-トリブロモフェニル=メタクリラート(TBPMA)のラジカル重合ならびに共重合について研究した。TBPAおよびPBPAはアゾビスイソプチロニトリルを開始剤として60℃で容易に単独重合するが,TBPMAは前二者にくらべて単独重合性は小であった。スチレン(M2)との共重合結果(60℃)から,つぎの共重合パラメーターが求められた。
    TBPAおよびPBPA(M1):ft=0.10, r2 =O.20, Q1=1.03, e1=1.18
    TBPMA(M2):r1=O.20, r2 = O.15, Q1=1.48, e1 =1.07
    また,いろいろの置換ベンゼン溶媒中でTBPMAとスチレンおよびメタクリル酸メチルのラジカル共重合を行なった結果,これらの溶媒により共重合パラメーターは変化した。すなわち1/r1は溶媒のべンゼン環の電子密度が増大するとともに増大したが,1/r2はほとんど変わらなかった。この結果は,TBPMAのトリブロモフェニル環と溶媒のベンゼン環の相互作用より説明された。
  • 土田 英俊, 西出 宏之, 西山 敏夫
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 784-788
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    部分四級化したポリ(ビニルピリジソ)(QPVP)を高分子配位子とする銅(II)錯体を均一触媒として2,6-キシレノール(XOH)の酸化重合をジメチルスルポキシド(DMSO)溶媒中で行ない,高分子錯体の静電場が触媒活性におよぼす効果を検討した。銅-QPVP錯体は,DMSO溶媒中でキレート型構造をとり,この錯体触媒によるXOHの重合速度は銅-ピリジン(Py)低分子錯体,銅-ポリ(ビニルピリジン)(PVP)錯体による重合にくらべ大きい。重合の動力学的取り扱い,中性塩添加効果,単量体種の影響などから,QPVP錯体の太きな正電荷による単量体アニオンとの静電的相互作用が明らかにされた。QPVP配位子の四級化率が20~50%で触媒活性が大きく,QPVPの重合度とともに触媒活性は増加する傾向にある。におよぼすQPVP配位子の静電的効果を検討した。
  • 礪波 宏明, 綿本 春枝
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 789-794
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    木綿に対して耐洗たく性のすぐれた紫外線吸収剤を得る目的で木綿と反応し得る紫外線吸収剤として,メタクリル酸クロリドをフェノールまたはα-ナフトールと反応させ,フエニルメタクリラートおよびα-ナフチルメタクリラートを合成し,これらを木綿繊維にグラフト共重合させその紫外線劣化防止効果を検討した。グラフト共重合および紫外線劣化防止効果はいずれも硝酸セリウム(N)アンモニウムを開始剤とする場合がすぐれ,グラフト率13%程度で長時間紫外線照射を行なってもほとんど劣化を認めない結果が得られた。また紫外線照射前と照射後のグラフト繊維の赤外吸収スペクトル測定からこれら吸収剤が繊維上でフリース転位を行ない,o-ヒドロキシケトン構造に変化してよりすぐれた紫外線劣化防止効果を与えることがわかった。
  • 谷 忠昭, 斎藤 光雄
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 795-797
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    By use of the emulsions composed of innert gelatin and octahedral or cubic silver bromide grains (about O.7pt), effects of sulfur and gold sens, itizations have been examined on the emission processes at liquid N2 temperature and photographic processes of the silver bromide grains. Both sulfur and geld sensitizations increased the photographic speeds, and decreased the emission intensities of both octahedral and cubic grains. This result has been interpreted by the view that both sulfur and gold sensitizations provide electron traps at the grain surfaces.
  • 大田 弘毅
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 798-800
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The rearrangement scheme of potassium salicylate (SA-K) to p-hydroxybenzoic acid (POB) in a stream of N2 was clarified by microthermal and UV analyses.
    In this paper, the effects of inert or active gases of atmospheric and elevated pressures which. are commonly used in this rearrangement was been investigated, The previously found rearrangement scheme, proceeding from SA-K to POB via 4-hydroxyisophthalic acid as a reaction intermediate, has been shown to hold for the rearrangement at elevated gaseous pressure.
  • 高橋 和行, 鈴木 康三, 石黒 晴樹, 在間 忠孝, 三橋 啓了
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 801-803
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1-Methyl-4, 5-imidazole dicarbonyl dichloride (1) was obtained in a high yield by the Teaction of 1-methyl-4, 5-imidazole-dicarboxylic acid with an excess of thionyl chloride or with a stoichiometric amount of phosphorus pentachloride. (1) reacted with methanol, phenel, methylamine, aniline and several diamines to give the corresponding esters, amides and polyamides. Further reaction of (1) with an excess pf phosphorus pentachloride gave 1-methyl-4-triehleromethyl-5-imidazole carbonyl chloride.
  • 大竹 利一, 宮野 壮太郎, 武田 直弘, 橋本 春吉
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 804-806
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Reactions betvieen styrene oxide an, d methylene bis(magnesium iodide) CH2(Mgl)2 (Z) obtained from methylene iodide and magnesium turnings were investigated. Styrene, allylbenzene, by the reaction paths of Eq. (5), Nof phenylcyclopropane was, detected in. the reaction mixture which might be expected to be formed via the addition of the gem dimagnesium reagent to the epoxide followed by the a, r-elimination from the, adduc-t, (2). On the other hand, 1, 2-dibiroinoStyrene gave phenylcyclopropane on the treatment with. the gem-dimagnesium reagent (Eq. ( 2 )).
  • 田中 順太郎, 高部 圀彦, 永田 昌孝, 鈴木 敏弘, 片桐 孝夫
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 807-808
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Geometric isomers of 2, 6-dimethyl-2, 6-octadiene and ocimene were obtained from myrcene by the, hydrogenation and isomerization reaction using pentacyanocobaltate(g) as a catalyst. In the case of alloocimene, 2, 6-dimethyl-2, 4-octadiene was obtained. This octadiene was no more hydrogenated From these resglts, the reactivity of the conjugated double boad ih these reactions was discussed.
  • 西出 宏之, 西川 洋, 土田 英俊
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 809-811
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The catalytic activity of the copper-pyridine comPlex on the, polymerization of 2, 6-xylenol was studied in var-ious solvents which, t were classified into two groups from the results in Fig.1 and Fig.2. One is composed of pyridine and an amphiprotic solvent, . and the other pyridine and an apretic solvent. In the former, the minimum catalytic activity appears at the intermediate composition, and this seems to be due to the ehange on the complex compdsition. From, the kinetic data it is suggested that the rate-determining step, of the polyn terizatien is the electron-transfer(k3) or the dissociatien of the activated substrate (kd). In benzene the high eatalytic activity of Cu-Py is due to the effect of the activation entropy.
  • 伴野 亟計, 竹下 道孝, 土田 英俊
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 812-815
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    P-(2-Pyrrolylmethyleneamino) styrene(PIS) which is a monomer-ligand with two coordination sites was synthesized from p-aminostyrene and 2-formylpyrrole. The copolymerization parameters, Q and e values, of PIS were 2.8 and -1, 2, respectively. The large values of 2 and e are assumed to be due to the large r-conjugated system and excessive r-electrons of pyrrole ring. A yellowish green and insoluble polymer-chelate was synthesized from tetrahydrofuran solutions of PIS-St copolymer, and of Co(II)Cl2. The formation of polymer-complex was determined by IR spetra and. elemental analyses.
  • 中山 隆雄, 野瀬 大治, 小門 宏, 井上 英一
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 816-817
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    It has been .shown that solid state sulfur is chemically activated or polymerized by irradiation with light. As a further example, silver-sulfur system is demonstrated in the present paper.The sulfurization of silver was accelerated by irradiation with light.
    Electron microscopic analysis showed that a por6us layer formed at the interface between silver and Sulfur. The porosity depended upon the rate of sulfide formation.
  • 中山 隆雄, 野瀬 大治, 小門 宏, 井上 英一
    1974 年 1974 巻 4 号 p. 818-819
    発行日: 1974/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Colored materials which differed from the azo dye were formed, when the photocoloration systems consisting of diazonium salts and dye bases, such asstyryl bases and ind61e groups, were exposed to light.
    The colored material producced from diazonium salt and 4-(p-dimethylaminostyryl)quinbline was identical with the dye from carbon tetrabromide and 4-(P-dimethylaminostyryl)quineline in the free radical-photography. The colored material formed in the diazonium salt-indole system was, different from the dye formed in the carbon tetrabromide-indole system.
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