海洋大気中の酸性ガス成分による海塩粒子からの塩素の脱離(クロリンロス)を確認し・その機構を解明するために,室内実験を行ない,また,海洋犬気中での観測を行なった。室内実験においては,海水を含浸乾燥させたフィルターに酸性ガス(SO
2,NO
2)を通気させ,塩化水素ガス発生の確認を行なった。その結果,SO
2,NO
2のいずれに関しても酸性ガスの通気により,海永含浸フィルターから塩化水素ガ冬の発生が起こり,さらにガス濃度あるいは湿度を増加させうと,発生する塩化水素ガス濃度は増加することが確認された。しかしながら,SO
2,NO
2ともに,ガス濃度,湿度を変化させても反応率は,SO2の場合約18%,NO
2の場合約9%でほぼ一定であった。
海洋大気中での測定は,人為酌な塩化水素ガス発生源による影響をできるだけさけるために,八丈島および父島において,1981年1月13日から20日までの間測定を行なった。その結果,粒径2μm以下の微小粒子を中心に海塩粒子の塩素脱離現象が観測された。塩素脱離は八丈島,父島において0.21~0.36μg/m
3であり,海塩粒子中の全塩素量に対する塩素脱離は,4~7%であった。そして,塩素脱離量から算出すると発生する塩化水素ガスの濃度は,5.9×10
-3~10×10
-3μmol/m
3であり,海洋大気中での実測値4.8×10-3~15×10
-3μmol/m
3とほぼ一致した。
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