日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1986 巻, 7 号
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  • 荻野 圭三, 金子 行裕, 浅川 丈夫
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 839-843
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水中に溶存する微量の有機物を吸着分離する目的で, 活性炭繊維(ACF)を吸着剤として用い, その吸着分離能を, ACFの表面化学構造と細孔構造から検討した。 ACFは灰分をほとんど含まないが, 表面には, 6~9(eq/m2)×107もの酸性官能基が存在するため, 極性を帯びている。このため水中からの有機物の吸着が妨害されると考えられる。そこで, ACF表面を水素処理し, 表面官能基を除去したところ, 従来の活性炭にくらべ, 優れた吸着性を示した。また, これら極性サイトを除去したのち, 分子径の異なる有機物(表3)を被吸着質として用い, 吸着における細孔構造の影響を検討した。分子径と細孔構造との間には密接な関係があり, 吉草酸のような低分子量の有機物には, ACFの大きな内部表面(1500~1700m2/g)が有効に作用し, 優れた吸着能を示すことがわかった。他方, ポリ(ビニルアルコール)のような高分子量の有機物に対しては, 分子ふるい効果がはたらき, 吸着量は少なかった。
  • 近藤 精一
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 844-846
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シリカゲルはその表面と細孔を利用して各種の気体と液体の吸着分離に用いられる。純シリカゲルの細孔および表面の性質と, そのエタノールおよび(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(TAS)による表面の改質について論ずる。
  • 橋谷 博, 奥村 稔, 藤永 薫
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 847-852
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    装置を用いない簡便環境分析法開発の一環として, 水中フッ化物イオンの前濃縮法を開発した。ジルコニウムとフッ素の親和性に着目して検討した結果, ジルコニウムを活性炭に担持させれぽ(Zr-C*), pH調節のみでこれにフッ化物イオンを吸脱着させうることを見いだした。本報はその詳細である。
    Zr-C*は, 硝酸酸化ジルコニウム(IV)溶液100=ml(Zr1g,pH1.6)と活性炭10gとを室温で三昼夜間まぜ, 活性炭を演別, 洗浄, 風乾して調製した。このZrC-10gはジルコニウム0.5~0.6gを含む。水中フッ化物イオンの濃縮法は,試料水(最大10l)のpH調節(3.7±0.3),吸引炉過によるZr-C*ベッド(0.5g)へのフッ化物イオンの吸着,0.02mol・dm-3水酸化ナトリウム溶液40mlによるフッ化物イオンの溶離からなる。吸脱着は活性炭表面のジルコニウムに対するフッ化物イオンと水酸化物イオンとの競争反応に基づくもので, 瞬間的である。したがって, 吸引源過フロー方式で多量の試料を取扱うことができる(10l/2時間)。
  • 奥谷 忠雄, 大石 保雄, 内田 圭一, 新井 信正
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 853-858
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    多量の鉄(III)やアルミニウム(III)イオンが共存するとき,微量の銅(II)やカドミウム(II)イオンを選択的に吸着分離し, 原子吸光法で定量する目的で, 活性炭に補助吸着剤として2,4,6-トリ-2-ピリジル-1,3,5-トリアジン(TPTZと略記する)を用いる吸着分離条件について検討した。活性炭に対し重量比で約40%のTPTZを希塩酸溶液中で吸着させ, 濾過したのち乾燥して用いる。試料溶液100cm3中鉄(III)およびアルミニウム(III)イオンがそれぞれ100mg共存してもpH4.5~7.0で0.1μg以上のカドミウム(II)イオンと2μg以上の銅(II)イオンが選択的に吸着分離できた。また吸着された金属イオンは希硝酸で容易に脱離できるので, 脱離液についてアセチレンフレームを用いて原子吸光測定する。マンガン(II)50mg,カルシウム(II)および亜鉛(II)は10mg共存しても妨害しない。本法で河ノ1底質中の微量カドミウム(II)と銅(II)イオンを定量した。また金属-TPTZ-ヨウ化物イオンで生成される錯体の組成は1:1:2であった。
  • 松永 英之, 鈴木 敏重
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 859-865
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    多孔性高分子樹脂の有機物吸着性と, 高分子量アンモニウムイオンの陰イオン交換性とを利用して, 新しい貴金属イオン吸着体を開発した。担体にアンバーライトXAD-7, アミンにトリオクチルアミン(TOA)をそれぞれ用いて得られる吸着体が, 金(III), 白金(IV)およびパラジウム(II)を塩酸溶液からクロロ錯陰イオンとして, 良好に吸着することを知った。一方, 吸着された貴金属クロロ錯体は, プロトン付加物して生成したTOAH+イオンとのイオン対として, イソブチルメチルケトンに溶解し, 樹脂から容易に溶出回収された。樹脂1gに対して1mmolのTOAを担持した吸着体の金(III), 白金(IV)およびパラジウム(II)に対する分配係数は,堪酸濃度1mol・dm-3の条件下で, それぞれ, 104.6, 103.6および103.2であった。本吸着体を充填したカラムを用いて, 工業廃棄物からのこれらの貴金属の濃縮分離を試みたところ, 良好な結果が得られ, そのカラム吸着容量は, 金に対して約62g/kg-resin, 白金に対して約37g/kgresinであった。
  • 長田 義仁, 太田 文彦, 水本 明, 高瀬 三男, 栗村 芳實
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 866-872
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    プラズマ重合法により, d-ショウノウおよびl-メントールの重合薄膜を作製し, そのアミノ酸水溶液透過特性とアミノ酸吸着特性について検討した。
    三酢酸セルロースの多孔質膜上にd-ショウノウプラズマ重合膜を作製し, トリプトファンのD体とL体の水溶液を透過させたところ, L体の透過速度はD体の約9分の1というきわめて小さな値を示した。逆にl-メントールプラズマ重合膜についてトリプトファンの水溶液を透過させたところD体の透過速度はL体の約7分の1という小さな値を示した。
    つぎに表面多孔性微粒子シリカゲルの表面にd-ショウノウプラズマ重合膜を作成し, トリプトファンのD体とL体の吸着特性について検討したところ, L体はD体の約2倍量, 優先的に吸着された。これらの結果から, d-ショウノウおよびl-メントールプラズマ重合膜は膜中にそれぞれ出発原料のd-ショウノウおよびl-メントールの基本骨格を有しており, トリプトファンのL体あるいはD体との間に光学異性体間の分子会合に基づく相互作用をしていると考えた。
  • 長田 義仁, 太田 文彦, 水本 明, 高瀬 三男, 栗村 芳實
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 873-878
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    天然光学活性物質であるd-ショウノウおよびl-メントールのプラズマ重合膜が光学活性であることを明らかにした。プラズマ重合膜の析出速度と比旋光度の値は電極に対する基板の位置に大きく依存した。プラズマの電流密度のもっとも高い電極エッジ部分でもっとも速い膜成長速度を示した。d-ショウノウおよびl-メントールのプラズマ重合膜は, ともに右旋性の旋光度を示し, 電極から離れたアフターグロー領域になるにしたがって出発物質の数倍から数十倍におよぶ大きな値を示した。これは重合反応の過程において不斉中心炭素周囲の置換基の構造が変化するためと考察した。得られたプラズマ重合膜の形態は基板表面の形状を反映して粒状から表面平滑な膜まで変化した。d-ショウノウプラズマ重合膜の前駆体と考えられる注状物質について, HPLC, 旋光度, 1H-NMR,13C-NMR分析を行ない構造を議論した。
  • 成田 榮一, 堀口 直人, 岡部 泰二郎
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 879-881
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The adsorption of phenols from aqueous solution by silicalite, an aluminium-free analogue of zeolite ZSM-5, has been investigated at 25°C. Silicalite selectively adsorbs phenols having the molecular size smaller than the pore size (ca. O.6 nm), and the Langmuir isotherm can be applied in all cases. The distribution coefficients (α) defined by Eq.2were calculated and are given in Table 1. A good linear relationship is seen to exist between α and the carbon number of phenols (Fig.2) and also between α and the solubility of phenols in water (Fig.3). The amount of phenols adsorbed increases with an increase in the carbon number and with a decrease in the solubility.
  • 赤岩 英川, 川本 博, 田中 孝典
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 882-888
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ジチゾン(H2dz)-2,2'-ビピリジル(bpy)によるコバルト(II)の協同抽出平衡は,
    Co2++2H2dz,org+2bpy,org⇔Co(Hdz)2(bpy)2,org+2H+
    で表わされ,抽出定数としてKex=107.6を得た。ただし, 添字orgは有機相を示す。また, ニッケル(II)抽出の律速段階は,
    Ni(bpy)22++Hdz-→Ni(bpy)2(Hdz)+
    で, 速度定数はk2=7.5×104mol-1・dm3・s-1であった。本抽出系は, コバルト(II)とニッケル(II)の相互分離に利用できることを例示した。
  • 小島 秀子, 大西 寛
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 889-893
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    エチレンオキシドの平均結合数7.5のポリ(オキシエチレン)=4-ノニルフェニル=エーテル(PONPE-7.5)の曇点を利用する金の抽出およびこの界面活性剤の1, 2-ジクロロエタン溶液を用いる液-液抽出の二方法を検討した。マイグログラム量の金および20%PONPE-7.5水溶液1.59を含む0.01~1mo1・kg-1塩酸溶液30gを, 曇点以上である40℃ で10分間たもったのち遠心分離すれぽ2相に分かれ, 金は界面活性剤に雷む相(下層)約2gに95~96%抽出された。金はまた0.1~4mol・dm-3塩酸溶液25cm3から5%w/vPONPE-7.5の1, 2-ジクロロエタン溶液5cm3により93~98%抽出された。抽出率は金のクロロ錯体を利用する紫外吸光光度法により決めた。金の抽出-定量におよぼす若干の金属イオンの影響についても調べた。
  • 笠原 一世, 大垣 順久, 松井 薫子, 加納 和仁, 田口 茂, 後藤 克己
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 894-900
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1:1のイオン対抽出系において,その抽出定数Kexは陽イオン,陰イオンと溶媒それぞれの抽出性を示す三つの定数(以下,固有抽出定数と呼ぶ)の積からなると考え,つぎのような関係が成り立つように個々のイオンおよび溶媒に固有抽出定数を割りあてることを試みた。
    logKex=logKcation+loganion+logKsolvent
    ここでKcation, Kanion, Ksolventはそれぞれ陽イオン, 陰イオン, 溶媒の固有抽出定数を表わす。これらの固有抽出定数を定めるときには, 二つの基準を定める必要がある。既報では,logKCiOc=1.0,logKbenzen=0という基準を設けていたが,本報ではより合理的と思われるlogKph4As+=logKPh4B-という基準に変え, さらに多くのイオンおよび溶媒の固有抽出定数を求めた。
    このようにして求めた固有抽出定数から計算で求めた抽出定数は実測値とよく一致こした。また,それぞれのイオン問または溶媒の抽出性をこの値を用いて比較することができるので, 溶媒抽出によって各種のイオンを分離するときに非常に便利な指標となることが明らかになった。
  • 川守田 茂, 渡辺 寛人, 原口 謙策, 宮嶋 正煕
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 901-906
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    2-(2-ピリジルアゾ)フェノール(PAP), 2-(2-チアゾリルアゾ)-5-メチルフェノール(TAC), 2-(2-チアゾリルアゾ)-4-ジメチルアミノフェノール(TAM)およびPAPのニッケル(II), 亜鉛(II), カドミウム(II)各キレートについて, 非イオン界面活性剤ポリ(オキシエチレン)=4-ノニルフェニル=エーテル(エチレンオキシドの平均結合数7.5,PONPE-7.5)のミセル溶液から曇点以上の温度で生ずる二相間の分配平衡を検討した6pHと分配比の関係から各試薬の分配定数および各キレートの安定度定数, 分配定数を293K, イオン強度O.1mol・dm-3(NaCl)で求めた。また,これらの結果に基づいてPONPE-7.5の抽出溶媒としての性質について考察した。
  • 関戸 榮一, 茶山 健二
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 907-914
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ピクリルアミノ基の4-位あるいは6-位のニトロ基をトリフルオロメチル基に置換した新しい二つのチアクラウン誘導体を合成し, 抽出および吸光光度試薬としての特性を調べた。新しい化合物(HL)はピクリルアミノ誘導体と同じように, 1価のクラスb金属と選択的に反応し分子内イオン鮒錯体(M+L-)を生成し, 有機溶媒に抽出され呈色するが, ピクリルアミノ誘導体と異なり, M+L-の吸収スペクトルがHLの吸収より大きく長波長にシフトするので, 試薬ブランクが少なくなり感度が上昇する。50%ジオキサン-水混合液中で6-置換体のpKaは9.85であるが, 4-置換体は>13である。したがってAg+L-錯体も6-置換体の方がずっと低いpHで1, 2-ジクロロエタン中に抽出され, pH8以上で完全に抽出される。検討の結果6-置換体が試薬としてもっとも適していることが明らかとなった。0.1mol・dm-3酒石酸イオンの存在下で200倍のCo(II), Ni(II), Cu(II), Zn(II), Cd(II)およびFe(III)はAg(I)の定量を妨害しない。Mn(II)のみは定量値を減少させる。
  • 関根 達也, 村井 良吉, 岩堀 繁久
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 915-919
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1mol/dm3の塩化ナトリウム水溶液中のコバルト(II)を, 5種類のβ-ジケトン(HA)で四塩化炭素中に溶媒抽出するさいに, 水相にテトラブチルアンモニウムイオン(TBA+)を添加したところ, アセチルアセトンとベンゾイルアセトンによる抽出に対しては影響がみられなかったが, トリフルオロアセチルアセトンとベンゾイルトリフルオロアセトンでは抽出が増大し, ヘキサフルオロアセチルアセトンでは, さらに大きな抽出の増大がみられた。実験データを解析して系内の化学平衡をもとめたところ, これらの抽出の増加はいずれも無荷電錯体, CoA2のほかに三元錯体CoA3-TBA+の抽出が起こるためであることが結論された。このような結果に基づいて,β-ジケトンの性質と三元錯体の安定度あるいは抽出の増大との関係が考察された。
  • 武田 立守, 吉田 滋, 織田 佳代子, 広瀬 信吾
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 920-926
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    生体試料中の特定成分の高感度分析はその性質上, すなわち多成分系で均一性に乏しく, 非常に多様(黄疸, 溶血および乳びなど)であることから困難であった。その中でイソ酵素の測定は従来簡便な電気泳動法-デンシトメトリーが用いられてきたがこの方法は定量性に乏しく上記のような試料成分のきょう雑物(たとえばビタミンやタンパクのartifact)を除去することが困難であった。
    かつて著者らはフローインジェクションシステムの流路に流路切り換えバルブおよびマイクロカラムを設置して連続的にイソ酵素の分離および測定法をCPKイソ酵素(CPK-MM, -MBおよび-BB)に適用した。今回, さらに数の多いLDHイソ酵素(LDH-1, -2, -3, -4および-5)について同様のフロインジェクションシステムすなわち六方バルブおよびイオン交換樹脂(DEAE-Sepharoseおよび-QAE-Sephadex)のマイクロカラムを組み合わせて分離測定を試みた。そしてさらに, 尿中のLDHは低活性かつ高NaClやインヒビターの共存のため従来測定が困難であったが, 上記フロー系に銅アンモニアレーヨン(cuprammoniumrayon)からなるホロウファイバー(中空系)を連結し, オンラインでの前処理(脱塩透析), 化学分離および測定のためのフロー系を工夫することができた。上記の方法は従来電気泳動法では困難であった低活性酵素のイソ酵素分析に有用であり, 血清,尿の飽種々の生体試料に応用可能と思われる。
  • 土肥 憲治, 田中 耕一, 戸田 芙三夫
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 927-931
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ホスト化合物として1, 1, 6, 6-テトラフェニル-2, 4-ヘキサジイン-1, 6-ジオールと1, 1, 2, 2-テトラフェニル-1, 2-エタンジオールを用いて包接錯体法によるβ-ピコリンとγ-ピコリンの分離の研究を行なった。まず組成の異なる種々のピコリン混合物を用いて包接錯体を晶出して, その錯体結晶に取り込まれるピコリンの選択性を調べた。取り込まれるピコリンには選択性はあったが, いずれのホスト化合物の場合においても, 同一成分ばかりを優先的に取り込むものではなかった。原料ピコリン混合物中のβ-ピコリンの含有率が高くなるにつれてβ-ピコリンが, γ-ピコリンの含有率が高くなるにつれてγ-ピコリンが優先的に取り込まれた。また, 同一組成の原料ピコリン混合物でもホスト化合物とピコリン混合物の比率や溶媒により, その錯体結晶中のピコリン組成は変化した。このような現象を利用するとβ-ピコリンとγ-ピコリンが容易に分離できることが判明した。錯体結晶からピコリンを回収するには加熱分解法でも, またほかのゲスト化合物で置き換える方法でも可能であった。
  • 田中 耕一, 戸田 芙三夫
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 932-936
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1, 1, 6, 6-テトラフェニル-2, 4-ヘキサジイン-1, 6-ジオール〔1〕および1, 1, 6, 6-テトラキス(2, 4-ジメ・チルフェニル)-2, 4-ヘキサジィン-1, 6-ジオール,〔2〕に分子の形のわずかな違いをよく識別してゲスト分子を選択的に取り込むことを見いだした。そしてこの現象を利用すると, 種々の構造異性体(たとえば, 二置換ベンゼンのo-とρ-異性体, 置換ナフタレンのα-とβ-異性体, Δ1(8a)-2-オクタロンとΔ4a(8a)-2-オクタロン, 1, 3-ブタンジオールと1, 4-ブタンジオール)や立体異性体(たとえば, 2-ブテン-1, 4-ジオールのcis-体とtrans-体, 3,-ジメチルシクロヘキサノンのmeso-体とdl-体, 2,3-エポキシブタンのmeso-体とdl-体)をたいへん能率よく分離できることがわかった。
  • 津田 孝雄
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 937-942
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    電圧を印加することにより発生する電気浸透流の流速は, 印加電圧, 媒体中の電解質濃度, 素材の表面電荷の正負および量により制御できる。電気浸透流流速は電流密度の一次関係で増加する。電気浸透流を液体クロマトグラフカラムの送液手段として用いた。芳香族3成分の分離は9cmカラム, 12kVのもとで6分で行なわれた。この手法の特長は第一にフローパターンが栓流に幾分層流を加えたものであり, 第二に送液による庄力差が生じないことである。
    浸透流を用いたゾーン電気泳動を行なうと, 試料成分は各移動速度の絶対値が浸透流流速よりも小さい場合には必ず試料成分は溶出される。他方カラム内径を小さくすることにより, 電流を通じることにより発生するJoule熱が揮散できるので, 高電圧の使用が可能となる。このため粘性の低い溶媒を用い, 細管をカラムとし, カラム末端に検出器を用いる細管ゾーン電気泳動ができる。本手法による金属イオン, Dns-アミノ酸, PTH-アミノ酸類の分離を水溶液および非水溶液で行なった。溶出時間についても検討した。
  • 平間 祐志, 吉田 仁志
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 943-949
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機溶媒に抽出分離したジエチルジチオカルバミド酸(DDTC)金属キレートを, 直接試料として注入可能な非水溶媒系細管等速電気泳動法を開発した。泳動系には極性非プロトン性溶媒のN, N-ジメチルホルムアミドを用い, この溶媒の0.005mol・dm-3過塩素酸溶液および0.01mol・dm-3塩酸溶液をそれぞれリーディング液およびターミナル液として用いた。泳動系内に注入された各DDTCキレートは対イオンH+とターミナルイオンCl-によってそれぞれのクロロ錯体に変換される。生成した各クロロ錯体はCl-およびH+との間の乎衡に基づくそれぞれの実効移動度をたもつことで泳動分離される。DDTCキレートの解離によって生ずるDDTCはさらにジエチルアンモニウムイオンに分解していることが示された。Fe(III), Hg(II), Cd(II), Zn(II), Pd(II), Mn(II), Sb(III), Ga(III)およびIn(III)の9種の金属イオン(10-6mol・dm-3)を水溶液から, DDTCキレートとしてニトロベンゼンに100倍濃縮した場合においても良好な相互分離ができた。本法においては, DDTCキレートを形成しないものはもちろん, DDTCキレートを形成し抽出されるものでも, 泳動可能なクロロ錯体に変換されないものなら, 多量に共存しても妨害とならない。
  • 大塚 浩二, 寺部 茂, 安藤 貞一
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 950-955
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    中空毛細管内における界面動電現象を利用したミセル可溶化クロマトグラフィーによる7種のアルキルフェニルスルフィド(アルキル基:メチル, エチル, プロピル, イソプロピル, プチル, イソブチル, s-ブチル)と4種のアルキルベンジルスルフィド(アルキル基:メチル, エチル, プロピル, イソプロピル)の分離について検討した。分離カラム内径0.05mm, 有効長750mmの溶融石英管を,またクロマトグラフィー溶液に0.02mol・dm-3硫酸ドデシルナトリウム(SDS)水溶液(pH7.0)を用い, 室温で分離を試みたところ, 1対の試料が分離できなかったがほかの9種は分離された。界面活性剤には硫酸テトラデシルナトリウム(STS)も用いたが, SDSの場合ほどよい分離は得られなかった。35℃における各試料の水相-ミセル相問の分配係数を, SDS, STSそれぞれについて計算した。その結果, 両界面活性剤の間にはほとんど差は認められなかった。クロマトグラフィー溶液に0.03mol・dm-3SDS水溶液(pH7.0)とメタノールとの混合溶液(80:20)を用いたところ,内径0.05mm,有効長500mmのカラムで, 芳香族スルフィド10種がベースライン分離された。この場合と水溶液のみの系の場合とでは, 重なったピークは異なり, 全般的な分離の程度はメタノールを含む系での方がよかった。
  • 千田 貢, 大堺 利行, 角谷 忠昭, 垣内 隆
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 956-964
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    たがいに混じり合わない二つの電解質溶液の界面(以下湘水界面と記す)は, 油相にいちじるしく親油性のまた水相にいちじるしく親水性の電解質を加えると, 界面電位差があまり大きくない範囲では理想分極性界面として挙動する。このような分極性界面の電位領域(分極領域)で界面を通る中間的な親油性または親水性のイオンの界面移動は電流として観察され, したがって電流-電位曲線の研究などから油水界面におけるイオン移動反応の電気化学的研究が可能となる。このような漉水界面イオン移動反応の電気化学的研究から, 油水界面をイオン選択性電極界面とするイオンのアンペロメトリー(ボルタンメトリーまたはボーラログラフィー)的分析法とボテンショメトリー的分析法の二つの方法が可能であることが理論的に示され, また実験的にも証明されてきた。本報告では, これらの最近の進歩について著者らの結果を中心に簡単にふれ, さらに油相中にイオノホアが存在する場合の油水界面イオン促進移動について考察を加え, Na+, K+, Rb+, Cs+, NH4+イオンについて実験的証明を行なった。また, この油水界面イオン選択性電極を用いる二つの分析法の特色について論じ, 一例として, Na+, K+イオンのアンペロメトリー的な同時定量が可能であることを実験的に示した。今後の発展についても簡単にふれた。
  • 竹内 豊英, 橋本 佳己, 石井 大道
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 965-968
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    二酸化炭素を液体または超臨界流体グロマトグラフィーの移動相として用いるのに簡便なシステムを組み立てた。混合槽を用いることによって, 1台のポンプを使用し, 有機溶媒で改質した二酸化炭素を移動相として用いることができた。分離は二酸化炭素の臨界温度以下で行なった。すなわち, 液体クロvトグラフィー挙動を検討した。シリカゲルおよびODSカラムを用いたとき, 移動相中のメタノールの濃度が増加すると溶質の保持時間は減少する傾向にあった。保持時間の再現性は, 相対標準偏差で5~8%であった。光学活性な固定相を用いる鏡像体の分離にこのシステムを応用したところ良好な結果が得られた。
  • 新井 有子, 蛭川 みつ子, 花井 俊彦
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 969-975
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    オクタデシル基を結合したシリカゲルを用いる逆相液体クロマトグラフィーでの保持時間は, 分子固有の性質(Van der Waals 体積, π-エネルギー, 水素結合エネルギー効果, および解離定数)から予測することが可能となった。さらにより疎水性な化合物の強い保持は, エンタルピーの測定により, 直接に疎水性充填剤表面への吸着によることがわかった。ただし, シリカゲルを支持体とする充填剤の化学的安定性が悪いため, ビニルアルコールコポリマーゲルにオクタデシル基を結合させた充墳剤を使ってオクタデシル基結合シリカゲルを使った場合と同様の実験を行なった。これら2種の充填剤上での保持機構は必ずしも同じではなく, ビニルアルコールコポリマーゲル上では分配的で, シリカゲル上では吸着的挙動が見られた。さらに, 酸のイオン交換体上での保持の予測を可能にするために, イオン交換基を結合させたビニルアルコールコポリマーゲルを用い, pHを変えた溶離液中での酸の保持時間を測定した。この結果, 異なる充填剤上で測定した解離定数は100%水溶液中で測定した値にくらべて規則正しくシフトしていた。
  • 和田 啓男, 牧野 圭祐, 尾崎 広明, 武内 民男, 波多野 博行
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 976-980
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ODSカラムを用いた逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)において, 親水性のより高いヌクレオシドが対応する核酸塩基よりも遅れて溶出すること, ならびに, イオン化合物である環状AMPがアデニンおよびアデノシンよりも竜遅く溶出することが, これら溶質のオクタデシル鎖に対する特殊な相互作用によるものか, あるいは基材であるシリカゲルとの特異的な相互作用に起因するものかが明らかにされていなかった。本研究においては, 基材のビニルアルコールコポリマーゲル(VA)とシリカゲルのそれぞれにオクタデシル鎖を結合した充墳剤を用い, RPLCの条件下での上記化合物の溶出挙動を調べ, 得られた結果をソルボホビック理論により解析した。その結果, オクタデシル鎖をつけたビニルアルコールコポリマーゲル(VA-C18)上での溶出挙動は, すべてこの理論によって説明することができ, さきに述べた特異的なODSシリカゲル上での挙動が, 担体であるシリカゲルと溶質の特異的な相互作用によるものであることを明らかにした。なお比較として, 他の親水性ポリマーゲルについても同様の研究を行ない, 担体がカラムの溶質に対する保持に大きな影響をもつことを明らかにした。
  • 神野 清勝
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 981-986
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は, もっとも有力な分離分析法として広く使用されるようになってきた。しかしながら, HPLC分析においてもっとも重要と考えられる分離条件の設定については, いまだ旧態依然たる“試行錯誤”的な方法が主法であり, もっとも進歩の遅れている部分である。これを改良するもっともよい方法は, コンビピューターを利用することである。
    本報告では以上のような観点からコンピューターを用いたLC分析の流れを提案する。コンピューターを使用することにより, 分析対象化合物としてその発がん性などから環境汚染物質として注目されているベンゾ[a]ピレンを選び, その同定法への適用例を述べる。
  • 市村 彰男, 中塚 忠, 小倉 薫, 北川 豊吉
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 987-992
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アミノ酸の液体クロマトグラフィーの直接的な検出法として, チャネルフロー銅電極でのアミノ酸による陽極溶出電流を測定するアンペロメトリーによる電気化学的検出法について検討し, その有用性について考察した。
    銅電極の電位を-20mV対銀・塩化銀電極に設定することにより, システインを除くすべての必須アミノ酸に対して正の応答電流が観測された。この応答電流値はアミノ酸の種類に依存し, アミノ酸のアミノ基の酸解離定数と関係づけられ, 応答電流を与える電極反応は, 電極の酸化溶出により生成した銅(II)イオンとアミノ酸との錯形成反応に律速されていることがわかった。
    応答電流におよぼす種々のパラメーター, とくに検出セルのチャネルの構造および検出セル温度の影響を検討し, アミノ酸の定量の最適条件を見つけた。ここで用いた1-ヘプタンスルホン酸を含む移動相・逆相カラム系ではすべてのアミノ酸を分離することはできないが, それぞれのアミノ酸に対して3ケタ以上の広い検量範囲をもつ検量線が得られた。検出限界(S/N比=2)は, ヒスチジンでは20pmol, プロリンでは2nmol, その他のアミノ酸では100~400pmolであった。
  • 田中 信男, 橘 勇治, 荒木 幹夫
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 993-998
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    逆相クロマトグラフィー用固定相として2-(1-ピレニル)エチル基をシリカゲルに化学結合したPYE固定相と, 通常のオクタデシル固定相(C18)とを用いて,ニ重結命を含む試料の位置異性体と幾何異性体についての分離を検討した。
    C18固定栢の場合には疎水性相互作用による保持が主となり, 内部二重結合とくにE-形二重結合を含む不飽和化合物が大きな保持を示した。一方PYE固定相においては, 試料のπ電子と固定相のピレン環との相互作用があり, Z-形二重結合および末端二重結合を含む試料について大きな寄与が認められた。このピレン環と試料の二重結合との相互作用の大きさの傾向は, 二重結合炭素上の原子団の立体効果で説明可能である。この相互作用によってPYE固定相においてC18固定相とはまったく異なる分離パターンが得られ, この効果はメタノール含量の大きな移動相でさらに大きな寄与を示した。PYE固定相においては不飽和カルボン酸の二重結合が極性基から遠く位置する場合に大きな保持が得られ, C18固定相では分離されないリノレン酸とγ-リノレン酸も容易に分離された。
  • 大井 尚文, 北原 一, 大墨 利佳
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 999-1001
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Two novel chiral stationary phases derived from (R)- and (S)-1-(1-naphthyl) ethylamine with (R)-phenylglycine chemically bonded to (3-aminopropyl)silanized silica, [5] and [6], which contain two asymmetric carbon atoms attached to two nitrogen atoms of the ureylene group, have been prepared. These phases showed good enantioselectivity for derivatives of amino acid, amine, carboxylic acid and alcohol enantiomers. Especially excellent separation factors were obtained in enantiomeric separation of aromatic amine and carboxylic acid in the form of 3, 5-dinitrobenzoyl and 3, 5-dinitroanilide derivatives respectively upon phase [6]. It is noticed some enantiomers were resolved directly without any prederivatization on these phases. For example, enantiomers of both E- and Z-isomers of S-3308 (1-(2, 4- di chloropheny1)-4, 4-dimethy1-2-(l, 2, 4-triazol-1-y1)-1-penten-3-ol) are well resolved simul taneously with [5].
  • 中川 照眞, 澁川 明正, 貝原 徳紀, 田中 久
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 1002-1010
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    18-クラウン-6を移動相に含む逆相系高速液体クロマトグラフィーにおける種々のアミノ酸,対応するアミン, およびペプチド類の保持挙動と分子構造との関係を調べ, 従来のイオン対逆相クロマトグラフィーと比較した。
    18-クラウン-6を移動相に添加することにより, α-位やβ-位の炭素の級数が低いアミノ酸ほど大きな保持値の増加率を示し, ロイシンとイソロイシンなどのように, イオン対モードでは分離しにくい疎水性の類似したアミノ酸を短時間で容易に分離することができた。また, 側鎖にアミノ基を有するリシンではほかにくらべてキャパシティーファクターの増加率はいちじるしく大きかった。アミノ酸とそれに対応するアミンとの問の保持値の差は, イオン対法にくらべて大となった。またプロリンはイオン対法では保持値の増加を示したが, 本法では逆に減少した。ペプチドの保持はN末端残基のアミノ酸の構造を強く反映した変化を示した。N末端残基のβ-位炭素に枝分かれがあるペプチドでは, 18-クラウン6との会合定数が小さく, 会合にともなう保持値の増加率も小さいことがわかった。このように, 18-クラウン-6はアミノ基周辺の立体構造をより強く認識する能力をもつので, 従来法では困難であった微妙な分離が可能となり, ペプチドやタンパク質の新しい分離分析への応用が期待される。
  • 一瀬 典夫, 阿部 茂夫, 足立 恭子, 加戸 隆介
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 1011-1016
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    従来のGC法に代わる高級不飽和脂肪酸の分離定量法として, 9-anthryldiazomethaneの脂肪酸エステルを生成し蛍光-HPLCで定量する選択的な高感度分析法を確立した。これをミクロネシア海域で採取したマグロ, カツオなどの大型成魚の卵巣および精巣ならびに同海域のプランクトン中のイコサペンタエン酸(IPA), アラキドン酸(AA)そのほかの高級不飽和脂肪酸の分離定量に応用した。本法によれば, さきの魚類の生殖器官およびプランクトン中のIPAおよびAAの他脂肪酸からの相互分離定量が検出限界≦2ng, 標準偏差率(C.V., %)7.7以下でほぼ満足すべき正確で定量できることがわかった。この実験結果の範囲では, IPA含有率の高い魚種として, カツオの雌雄, シイラの雄, サワラの雄およびイカの雌があげられる。また,これら海域のプランクトン中のIPA含有率は本邦浜名湖のそれらと比較して大略2~3倍の高値を示し, IPA/AA比も2~4であった。本研究成果は, この海域のマグロ, カツオなどの回遊魚およびプランクトンなどの海洋生物中のプロスタグランジンの前駆体としてのIPAおよびAAの今後の動態研究への重要な示唆となるものと考える。
  • 中村 洋, 高木 和子, 田村 善蔵, 与田 玲子, 山本 有一
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 1017-1024
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    主としてタンパク質の蛍光標識試薬として利用されてきた2-メトキシ-2, 4-ジフェニル-3(2H)-フヲノン(MDPF)をアミノ酸のプレカラム蛍光誘導体化試薬として活用する試みを行なった。誘導体化反応の至適条件の検討は, α-アミノ酸の場合には生成するMDPF誘導体が蛍光性であることを利用して蛍光検出フローインジェクション分析法によった。一方, N-アルキル-α-アミノ酸(環状アミノ酸を含む)についてはMDPF誘導体が無蛍光性であるので, これを過剰の試薬や試薬水解物からHPLCで分離後に2-アミノエタノールを添加して蛍光検出する方法によった。その結果, アミノ酸の蛍光誘導体化には10mmol・dm-3MDPFとともにpH10, 20℃ で40分間反応させる条件が最適であった。α-アミノ酸からは一対のジアステレオマーによると思われる2本の蛍光性ピーク渉生じたが, TSKLS-410K逆相カラムと50mmol・dm-3リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)-メタノール系移動相を用いるメタノール勾配溶離法により, 2~5pmolのα-アミノ酸を定量し得た。100pmolのα-アミノ酸を5回分析した場合の相対標準偏差は2.9~5.3%であった。予試験の結果から, MDPFはペプチドのプレカラム蛍光試薬としても有望と思われた。
  • 稲垣 健治, 喜谷 喜徳
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 1025-1031
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    抗がん活性白金錯体のDNAへの選択的結合を酵素分解および高速液体クロマトグラフ法で研究した。白金修飾DNAをエキソおよびエンドヌクレアーゼで処理し, 酵素分解産物をHPLCで分離・同定した。結果は隣接グアニン塩基対がDNAにおける優先的白金結合部位であることを示した。d(GpG)と各種白金錯体との反応生成物をHPLCで分離した。光学異性ジアミンを含む白金錯体とd(GpG)を反応させると, 二つのピークがクロマトグラムに現われた。これはジアステレオマーの生成による。また, d(GpG)とmeso-ジアミン配位子を含む白金錯体との反応は二つの反応生成物を生ずる。これはN-Pt-N角を二分するC2軸をもたない白金錯体にみられる。これらの化合物の分離に対する至適条件を示した。
    1, 2-シクロヘキサンジアミン白金錯体で修飾されたDNAの酵素分解産物はクロマトグラフにおいて四つの主ピークを示す。その内の二つはPt[(1R,2R)-1,2-cyclohexanediamine][d(GpG)]とPt[(1S,2S)-1,2-cyclohexanediamine][d(GpG)]である。残りの二つのピークはPt[(1R,2S)-1,2-cyclohexanediamine][d(GpG)]に由来するものである。これらの結果はキラルなジアミン配位子を含む白金錯体のDNAへの結合様式を暗示している。
  • 高橋 圭子, 中田 壮一, 三上 正仁, 服部 憲治郎
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 1032-1039
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    親水性ポリアクリレートTSK Gel PW-3000(以下PWと略記する)に6-デオキジ-6-アミノ-β-シクロデキストリンを導入したゲル(ACD-PW)および, アミノ化シクロデキストリンのヒドロキシル基をメチルエーテル化したゲル(Me-ACD-PW)に対する各種アミノ酸の保持挙動の検討を行ない, 保持容量比(k')の比較を行なうことでシクロデキストリン(以下CDと略記する)包接由来の効果とアミノ基由来のイオン相互作用の評価を奢なった。デミン酸は老のままではアミノ酸のアミノ基とCD上のアミノ基の反発のため, まったく保持されない。N-保護アミノ酸は, カルボン酸部位とCD上のアミノ基との間のイオン相互作用により保持されるようになり, イオン強度を小さくすると保持は増大する。また, CDのヒドロキシ基のメチル化は, CD上のアミノ基のイオン相互作用を明確にし, また包接能を増大し, ベンゼン環を有するフェニルアラニン誘導体ではいちじるしい保持の増大がみられた。イオン強度や有機溶媒添加などの溶離液変化によりk'は600倍以上の値まで変化し, ホスト-ゲストコンプレックス形成に基づく包接クロマトグラフィーにおける選択性をさらに向上させる可能性を示した。
  • 関 得一郎, 山口 賀久, 野口 康二, 柳原 裕三
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 1040-1042
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Determination of catecholamines in human urine was tried by ion-exchange chromatography on a weakly acidic ion exchanger with hydrophilic matrix (Asahipak ES-502 C, 0.76 mm i. d. × 10 cm) using Buffer A (pH 6.7, sodium succinate-borate-e thylenediaminetetraacetate 0.05mol⋅dm-3- 0.015mol⋅dm-3- 0.5 mol⋅dm-3) or Buffer B (pH 6.7, sodium succinate-ethylenediaminetetraacetate 0.04 mol⋅dm-3- 0.5 mol⋅dm-3) as the mobile phase at 55°C, or 30°C (Buffer A) or 70°C (Buffer B). Elution with Buffer A at 30°C gave the best separation and diluted urine samples could be analyzed without prepurification. The results agreed well with those obtained by the method using internal standard.
  • 牧野 圭祐, 尾崎 広明, 松本 哲史, 武内 民男, 福井 寿一, 波多野 博行
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 1043-1045
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Separation of oligodeoxyribonucleotides, prepared by chemical synthesis, was carried out using reversed 'phase ion-pair chromatography with LiChrospher 100 RP-18e. By this technique, the peak shape and the separation of peaks were highly improved, compared to the results obtained by conventional reversed phase chromatography with the same column. The chain length and the concentration of the tetraalkylammonium ion-pair reagents were found to be responsible for their retention behaviors and tetrabutylammonium phosphate showed marked enhancement of the peak resolution. In the separation with this reagent, a good linear relationship between the elution volumes and the base numbers of oligodeoxyribonucleotides was obtained. This implies that ion-pair chromatography can be used for the separation of oligodeoxyribonucleotides according to their base numbers.
  • 吉田 育世, 早川 和一, 宮崎 元一
    1986 年 1986 巻 7 号 p. 1046-1049
    発行日: 1986/07/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The effectiveness of column-switching technique in photometric ion chromatography was investigated by use of two columns, into which resins with different specific ion-exchange capacity were packed. A system is consisted of two pumps, a sample injector, two columns, a switching valve, two UV detectors and a dual-pen recorder. As a result, it was found that the column-switching technique possessed the following advantages: (1)rapid and simultaneous determination pf, yarious ions with noticeably different capacity ratios; (2) excellent separation of the peak which can not be resolved by use of a single column; (3) elimination of system peak.
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