日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1988 巻, 1 号
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  • 原田 義也, 大野 公一
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 1-16
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ペニングイオン化電子分光(PIES)では,標的物質(気体または固体)と準安定励起原子との衝突にともなって放出される電子の運動エネルギーを分析する。気相のペニングスペクトルでは,分子の斥力表面の外側にしみ出した軌道は,斥力表面内に局在する軌道にくらべて強いパンドを与える。したがって,スペクトルの相対バンド強度は個々の分子軌道の空間電子分布に依存する。PIESのこの特性を用いて,種々の分子軌道の立体化学的性質を研究することができる。さらにペニングスペクトルの相対バンド強度は個々の分子軌道の外部電子密度(EED)の計算値を用いて説明される。PIESを固体表面の研究に適用すると,(i)表面最外層を選択的に調べることができる。また(ii)表面の外側にしみ出した個々の軌道の電子分布を研究することができる。表面PIESのこれらの特性はエピタキシャル成長やアモルファス-結晶転移の過程で起こる表面最外層の分子配向や電子状態の変化を観測するのに使われる。またPIESを用いて単分子膜(LB膜を含む)の構造変化や表面最外層で起こる化学反応を鋭敏に検出することができる。
  • 土屋 徹, ポソチャン チャソダヨット, 水上 富士夫, 清水 一男, 丹羽 修一, 今村 寿一
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シクロヘキシルベンゼン(CHB)の酸素酸化/酸分解反応を無触媒および臭化水素触媒存在下で検討した。無触媒時の自動酸化では,生成物の1-フェニルシクロヘキシルヒドロペルオキシド(PCP)の選択率は,温度あるいは酸素圧にかかわりなく,もっぱら原料転化率によって決まり,実際的な反応温度範囲の90~140℃では,CHB転化率40%でPCP選択率80%であった。
    クメンの自動酸化では考慮する必要のなかった,第二級炭素上からの水素の引き抜きもCHBでは無視できない。
    臭化水素存在下では,反応は常圧下室温以下で酸素供給律速で進みフェノールとシクロヘキサノンが主生成物であった。フェノールを産出する特異な酸素酸化であるが,ベンゼンジオールによって完全に阻害されるなどの特徴から,この反応がラジカル過程で進むことが明らかになった。臭化水素は反応開始剤およびBrラジカルの供給源となり,このBrラジカルがCHBからの水素引き抜き剤として働くため,反応は無触媒時にくらぺ圧倒的に速く進むと考えられる。CHB転化率は仕込みHBr量に依存し,-8℃ から30℃ではO2/HBr=3.2の比率で酸素が吸収された。ところがHBr濃度が一定値を超えると反応が阻害される臨界現象が現われた。トリフルオロ酢酸をHBrとともに用いることにより,臨界現象はもっぱら酸濃度に依存することが明らかになり,生成物から副生する阻害剤に起因すると推定された。HBrはCHBの酸素酸化にきわめて有効な触媒であると結論された。
  • 掛川 一幸, 若林 剛, 佐々木 義典
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    有機キレート試薬の8-キノリノール(オキシン)を用いてBa(Mg1/3Ta2/3)O3(以下BMTと略記する)の新しい合成方法を開発した。Mg2+とTa5+の共存する塩酸溶液をオキシンのアンモニア水溶液に加えることによって沈殿を得て,これを熱分解後,等モルの炭酸バリウムと混合し,ふたたび焼成することによりBMTを合成した,キレート沈殿物を1100℃ で焼成したときにマグネシウム成分の揮発が見られたが,あらかじめ,250℃ で6時間加熱処理したのちに1100℃ で焼成することにより,揮発の問題点を解決した。BMTを得るための従来方法である炭酸バリウム,酸化マグネシウム,酸化タンタル(V)の三者の混合物の焼成ではBaTa2O6が中間生成物として生じてしまい,1300℃1時間程度の焼成では単一相のBMTは得られないが,オキシンを用いたこの方法では,中間生成物は見られず,上記の焼成条件で単一相のBMTを得ることができた。中間生成物の生成なしにBMTを得るためには,炭酸バリウム,酸化マグネシウム,酸化タンタルの三者の固体間反応よりも,マグネシウムとタンタルを単一の化合物(MgTa2O5)にしたのちにBaCO3と灰応させる方が好ましいことがわかった。
  • 渡部 清勝
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    8種類の溶出液を分取し結晶単離を試みた結果,4種類の溶出液から結晶を単離することができた。結晶の元素分析結果は,[Co(adao)(L-pro)]CIO4の水和物の組成と一致した。吸収スペクトルにより,EIとEIIからの結晶はtrans(Ο)ジアステレオ異性体であり,EVIIIとEIXからの結晶はcis(Ο)ジアステレオ異性体(以下異性体と略記する)であることがわかった。trans(Ο)異性体のadaoの配位様式は,必然的にβ-mer(N)である。円偏光二色性(CD)スペクトルから,各異性体の配置効果CD曲線とL-proの隣接効果CD曲線を求めた。trans(Ο)異性体の配置効果CD曲線の形状に基づくと,EIおよびEIIは,それぞれΔ(ΔΔΔΛ)-およびΛ(ΛΛΛΔ)-β-mer(N)-trans(Ο)構造であることがわかった。上に述べたcis(Ο)異性体の配置効果CD曲線と既知のΛ(ΛΛΛΔ)-およびΔ(ΔΔΔΛ)-β-mer(N)-cis(O)-[Co(adao)(gly)]ClO4の実測CD曲線との比較から,EVIIIおよびEIXは,それぞれΛ(ΛΛΛΔ)-およびΔ(ΔΔΔΛ)-β-mer(N)-cis(Ο)構造であることもわかった。
  • 吉村 芳武, 沖 久也
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    サリチル酸水素銅(II)四水和物Cu(Hsal)2・4H2O(sal=C6H4OHCOO)〔1〕の熱分解において,無水和物単量体Cu(Hsal)2〔2〕と二量体Cu2(Hsal)4〔3〕は反応容器中の水蒸気圧が26.0mmHg以下および143mmHg以上においてそれぞれ得られた。また安息香酸銅(II)三水和物Cu(C6H5COO)2・3H20〔4〕の熱分解においては,二量体錯体Cu2(C6H5COO)4〔6〕は水蒸気圧143mmHg以下で得られ,273mmHg以上で新しい錯体Cu(C6H5COO)2〔7〕が得られることがわかった。また,ほぼOmmHgの状態で錯体Cu(C6H5COO)2〔5〕が得られることを明らかにした。
    サリチル酸水素銅(II)錯体および安息香酸銅(II)錯体いずれの場合も水蒸気圧により異なる無水和物を生成し,気相-固相反応が大きな役割をもっていることが明らかになった。
  • 武田 邦彦, 吉田 一男
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    3mol.dm-3以上の高濃度塩酸溶液と強塩基性陰イオン交換樹脂間で平衡にあるウラニル-クロロ錯体の吸着挙動を調べた。樹脂中のウラニル-クロロ錯体の平均価数の決定には,ウラン濃度を異にする数点の吸着実験から標準付加ポテンシャル強度と平均価数の相関を表わす同数の曲線を描き,それらの曲線の単一交点から平均価数を決定する新しい方法を用いた。本法を用いて,通常水溶液中では存在しないといわれている五配位以上のウラニル-クロロ錯体が,樹脂中では存在する可能性のあることが初めて示された。配位塩素数の異なる複数種のウラニル-クロロ錯体が,樹脂中に存在することも同時に示された。さらに,樹脂中の錯体の配位数を求める従来の作図法との比較・考察を行なった。本法で得られた結果から予想される吸着等温線は,従来法にくらべ,実験的に得られた吸着等温線と,かなり広い濃度範囲にわたりよりよい一致を示した。
  • 高橋 一暢, 大八木 義彦
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 52-55
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    原子吸光分析法(以下AASと略記する)により港湾海域における底質土中のスズおよび銅の含有量を定量し,その分布特性と相関関係について検討した。
    港湾底質土を王水により湿式分解して1mo1・dm-3塩酸で希釈したのち,標準添加法により底質土中のスズおよび銅を定量した。測定波長としてスズは224.6nm,銅は3247nmを用い,フレームはスズ分析用には空気-水素の多燃料フレーム,銅分析用には空気-アセチレンの少燃料フレームを用いた。
    人為的汚染が少ないと考えられる港湾海域として三重県・神前湾(三重県度会郡南島町)を選び,この港湾底質土中のスズおよび銅の含有量を定量した結果スズ含有量(乾重量あたり)は6.7~15.3μg/g,銅含有量(乾重量あたり)は1.6~40.0μg/gの濃度範囲を示した。また,底質土中のスズおよび鋼の分布特性についてみると,スズは港湾全体に比較的均一に分布しているのに対し,銅は港湾の内部に入るにしたがって次第に増加する傾向があることがわかった。
  • 吉村 長蔵, 藤野 隆由, 宮下 洋巳
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルカリ土類金属のフレーム原子吸光分析における高感度定量を目的とし,空気-アセチレン炎におけるアルカリ土類金属に対するカーボンブラックの添加効果について検討した。また,イオン吸収線を用いても定量が可能であるので原子吸収線とイオン吸収線の双方を用いた分析について比較検討した。その結果,バリウム以外の金属については,カーボンブラックの添加により吸光値の増大が認められた。またイオン吸収線で測定した場合の方が原子吸収線よりも増感の割合は小さかった。この理由はカーポンブラックの添加時に炎中におけるイオン化の割合を算出した結果,その燃焼によってイオン化の割合が減少するためと考えられる。カーボンブラックの増感作用はその燃焼過程において塩の熱解離を促進するためと考えられ,一般にイオン化抑制により増感を示すセシウムとの相乗効果を比較した場合に両者の単独の添加効果よりも一層大きな増感が認められた。
  • 本里 義明, 伊原 博隆, 中村 貢, 芝 眞砂代, 平山 忠一
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 61-68
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    分子量106以上の水溶性巨大分子に対して高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを可能にするために,グルコマンナンから硬質の多孔性球状ゲルを調製した。同ゲルは,水/エタノールから再沈精製したグルコマンナンを無水酢酸-ホルムアミド中でアセチル化し,得られたグルコマンナントリアセテートを懸濁蒸発法による球状化,不均一系でのけん化およびエピクロロヒドリンによる橋かけによって調製した。グルコマンナン球状ゲルの分子量分画領域は,球状化時における希釈剤の種類および濃度によっていちじるしく異なった。たとえぽ,希釈剤を使用しない場合,排除限界分子量(ポリ(オキシエチレン)の分子量として)は103以下となるが,デカヒドロナフタレンをグルコマンナントリアセテートに対して200wt%添加すると2×106に,300wt%添加すると4.5×106以上(おそらく107以上)になった。このようなマクロポーラス化効果の高い希釈剤として,テトラヒドロナフタレンやドデカン酸メチルも見いだされた。
    さらに同ゲルはゲルパーミエーションクロマトグラフィー操作において従来の水溶性ゲルにない耐高流速性が発現することも確認された。耐圧性は排除限界分子量の高いものほど低下するが,空孔率85%,排除限界分子量2×106のゲルでさえ,線流速において28m.min-1(粒径44~75μmの場合)が容易に達成された。これらの特性は,同ゲルの膨潤性が従来の水溶性ゲルにくらべてきわめて小さいことに起因しているものと考えられる。
  • 中塩 幸泰, 山本 忠弘, 広田 正義
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    フェニル過酢酸t一ブチル(BPA)の分解を9種の一置換ベンゼン〔1〕と7種の直鎖アルカン〔2〕中60℃で行ない,BPA濃度1.00×10-3~5.00×10-2mol/lの範囲で一次分解速度定数(kd)を得た。kdは溶媒の極性が増すと増大し,最大のベンゾニトリル中と最小のテトラデカン中とで2.5倍異なった。1ogkdと溶媒極性パラメーターETとはよい相関牲を示した。〔2〕中のkdは溶媒粘度の逆数で,あるいはPryorの提案式でも正の傾きをもつ直線となり,kdの変化は粘度に依存することがわかったが,〔1〕中のkdの変化は粘度と無関係であった。
    1ogkdとETとの相関性はBPAのほかに五つの分解例でも認められた。開始剤の分解間で溶媒中のkdを対比すると相関性を示し,溶媒効果はそれぞれの分解でたがいに似ていることがわかった。分解速度におよぼす溶媒効果は主として溶媒の極性寄与で説明できると考えられるが,無極姓溶媒〔2〕では粘度の影響もみられた。粘度の影響は〔1〕ではみられないが,これについてはさらに検討する。
  • 菊池 康男, 後藤 康男
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 74-80
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    反応条件によるポリ(硫酸ビニルカリウム),デキストラン硫酸ナトリウムの配座変化および“ポリ塩化アルミニウム”,水酸化硫酸鉄(III)の配位水解離による,多くの種類の金属錯イオンの構造の変化に着目して,“ ポリ塩化アルミニウム” および水酸化硫酸鉄(III)の2物質とポリ(硫酸ビニルカリウム),デキストラン硫酸ナトリウム,四リン酸ナトリウム,メタリン酸ナトリウムの陰イオン性高分子の三成分から高分子錯体を生成し,それらの構造,性質について検討した。反応条件により種々の異なった構造,性質の高分子錯体を生成した。
    “ポリ塩化アルミニウム”,水酸化硫酸鉄(III)とポリ(硫酸ビニルカリウム)の三成分からなる高分子錯体から,ほかの条件での高分子錯体膜にくらべてまた従来の有機高分子錯体よりも,より耐酸,耐アルカリ性の膜を成膜することができた。この膜から能動輸送・選択透過の機能が認められ,低分子のHCl,NaClの代わりにポリ(スチレンスルホン酸),ポリ(スチレンスルホン酸)ナトリウムおよび水溶液の代わりにメタノール溶液を用いると,輸送率,選択率の向上が認められた。
    さらに従来の有機高分子のみから生成した,グリコールキトサンとポリ(硫酸ビニルカリウム)からなる高分子錯体,高分子錯体膜と性質,膜特姓について比較検討した。
  • 岡本 正雄, 柏倉 伸次
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アクリロニトリルの塩化アリル(AC)およびα一クロロアクリロニトリル(CAN)との共重合体(含塩素モノマー単位のモル分率は0.035である)を窒素中5℃/minで昇温したさいの熱分解挙動を調べた。示差熱分析から,急激なシアノ基間重合が,ポリアクリロニトリルでは約260℃で起こるのに,ACおよびCAN共重合体では,それぞれ,300および280℃付近で起こることがわかった。また,赤外分析からは,脱塩化水素が,AC共重合体では主として250~275℃で進行するのに,CAN共重合体では225℃付近でほぼ完了することがわかった。生成した塩化水素によりシアノ基間重合が影響を受けていることは明らかであるが,ポリマー中にそれが存在する温度によって,その効果が異なる。すなわち,塩化水素存在温度が低かったCAN共重合体では塩化水素存在時にシアノ基間重合が促進されるが,その温度が高かったAC共重合体では塩化水素存在時にシアノ基間重合が抑制される。このような効果は,熱分解で生成したポリマーラジカルと塩化水素との反応によって形成される塩素原子の作用によって生ずるものと解釈した。
  • 高橋 不二雄, 酒井 保藏, 小林 茂, 若林 章一
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 86-89
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セラミック膜(CM膜)の利用を目的として,高分子-低分子混合溶液からの低分子分離,本報ではデンプン糖化液からグルコース分離に応用することを試みた。CM膜はそのままでは酵素の排除率の低いことがわかった。そのためCM膜上にジルコニウムのダイナミック膜(DM膜)を形成させることにした。酵素排除率,透過流束との兼ね合いから,0.05mol/dm3ZrOCl2水溶液を用いてCM膜上に形成させたDM膜が,線速度0.27m/s,ゲージ圧1kg/cm2以上で排除率が0.95以上になり最適と判断した。この条件で90g/dm3トウモロコシデンプン3dm3に1gグルコアミラーゼを加えて,55℃で加水分解させ,グルコース分離を行なった。デンプンの連続糖化,グルコースの連続分離を期待して,分離されたグルコースに見合うだけデンプンを水分とともに糖化槽に加え,糖化液量を一定に保持した。その結果,つぎのことがわかった。(i)反応初期(15時間)を過ぎると15~40時間の間,透過してくるグルコース濃度はほぼ一定になる。(ii)この間,酵素が少しずつ活性を失う。(iii)酵素の排除率はつねに0.90以上である。以上から,酵素を固定化せず,デンプン連続糖化,グルコース分離を行なうためにジルコニウム-DM膜が応用できることを明らかにした。
  • 長尾 幸徳, 大山 司, 阿部 芳首, 御園生 堯久
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 90-96
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    10-メチルアクリドン類と置換ベンゼン類の縮合反応により10-メチル-9-フェニル-9,10-ジヒドロアクリジン誘導体を合成し,酢酸で発色させたときの可視吸収スペクトルにおよ蔭す置換基の効果を検討し,PPPMO(Pariser-Parr-PoPle molecular orbital)法などを用いてその発色機溝を考察した。
    10-メチル-9-フェニル-9,10-ジヒドロアクリジン誘導体(9-(p-Y置換フェニル)-X置換体)のうち,X=H,2-NMe2:Y=NMe2,NEt2の化合物は塩化ホスホリルを縮合剤として即いる方法,X=H,2-NMe2:Y=H,Cl,OCH3の化合物はGrignard反応を用いる方法,X=3-NMe2:Y=Hの化合物はフェニルリチウムを用いる方法で,相当する10-メチルアクリドン類と置換ベンゼン類の縮合によりそれぞれ合成した。
    このようにして合成した9,10-ジヒドロアクリジン誘導体を酢酸で発色させたときの可視吸収スペクトルを測定し置換基の効果を検討した。またその発色状態のPPPMO法計算から求めた励起のさいのπ電子密度の変化から,置換基の種類,置換位置による発色機構の違いが吸収スペクトルに大きな影響をおよぼしていることがわかった。
  • 時田 澄男, 菅 祥子, 戸谷 倫彦, 西 久夫
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 97-100
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゼンチオールと1,5-ジクロロアントラキノンを原料として,2段階の反応によりベンゾ[1,2,3-kl:4,5,6-k'l']ビスチオキサンテン〔1b〕を合成した。〔1b〕は赤色であるが,光酸化によって無色のエンドペルオキシド〔2b〕に変化した。〔2b〕は常温,暗所では安定であったが,光または熱によりふたたび〔1b〕を与えた。
  • 長尾 幸徳, 丸茂 朝冬, 阿部 芳首, 御園生 堯久
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 101-105
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    1,8-または4,5-位にアルキル基をもつイソキノリン:1,8-ジメチルイソキノリン〔1〕,1,4,5,8-テトラメチルイソキノリン〔2〕,1,4,6,8-テトラメチルイソキノリン〔3〕,および5,6-ジヒドロ-4H-ベンゾ[de]イソキノリン〔4〕の二酸化マンガソおよび二酸化セレンによる酸化を検討した。
    二酸化マンガンによる酸化において〔1〕から1-ヒドロキシ-8-イソキノリンカルボン酸〔5a〕,およびこの中間生成物と考えられる8-メチル-1-イソキノリノール〔5b〕が得られた。また,〔4〕の反応では二酸化マンガンの脱水素作用が働き1,8-ナフタレンジカルボキシミド〔6〕が生成した。
    二酸化セレンによる酸化においては,1-位のメチル基がかなり選択的にアルデヒドに酸化され,〔1〕〔2〕,および〔3〕からそれぞれ8-メチル-1-イソキノリンカルバルデヒド〔7〕,4,5,8-トリメチル-1-イソキノリンカルバルデヒド〔8〕,および4,6,8-トリメチル-1-イソキノリンカルバルデヒド〔9〕を生成した。これに対し1-位にメチル基のない〔4〕は反応しなかった。
  • 太田 道也, 太田 悦郎, 大谷 杉郎, 小島 昭
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 106-114
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    縮合多環芳香族炭化水素の重縮合体(COPNA)樹脂に関する研究の一環として,ナフタレン(N)とそのメチル(MN)およびヒドロキシ(HN)誘導体を芳香族原料(Aro)に用い,酸触媒存在下で1,4-ベンゼンジメタノール(PXG)による橋かけ反応を行なわせ,置換基の種類(-H,-CH3,-OH)とその置換位置(αおよびβ)が,反応性や得られる樹脂の諸牲質におよぼす影響を調べた。PXG/Aroのモル比が0.75~2.50の原料混合物に酸触媒(PTS)をその原料混合重量の1~7wt%加え,アルゴン気流中90~180℃の一定温度で反応させた。COPNA樹脂の生成反応速度は,原料Aroの種類,PXG/Aroのモル比,酸触媒量,および反応温度によって違ってくる。同じ反応条件下では,反応の速さはβ-HN>α-HN>N≧β-MN>α-MNの順になる。HN系COPNA樹脂はとくに速く,反応を制御しやすくするためには酸触媒量,反応温度をほかの系よりも低くする必要がある。室温では固体で加熱によって軟化融解するようなBステージ樹脂を得るための,反応の制御が比較的容易な条件は,NおよびMN系ではPXG/Aroモル比1.50,PTS添加量5wt%,反応温度120~130℃,反応時間2~5時間が適当であった。これに対し,HN系ではモル比1.25,PTS1wt%,温度113℃,時間1.5~2.5時間が適当であった。これらの樹脂の軟化点は,ほぼ70~90℃ で,ピリジンやテトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒に可溶であった。これらのBステージ樹脂は200~300℃で1時間加熱することにより完全に硬化し,不溶不融の樹脂が得られた。硬化後の樹脂を空気中または窒素中において10℃/minの昇温速度で加熱したとき,α-HN,β-HN系は400℃から,そのほかは500℃から主要な減量が起こる。または200~250℃の空気中で50時間保持したときには,β-HN,β-MN系で酸化による増量や引きつづく減量がみられ,そのほかの系では大きな重量変化はみられなかった。
  • 堀場 裕子, 山中 伸一, 山本 行隆
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    塩化ビニル樹脂に含まれる鉛とカドミウムを簡易・迅速に分析するために燃焼フラスコを用いて前処理し,原子吸光光度法により定量する方法を検討し,あわせて実試料の分析を行なった。
    確立した分析法は以下のとおりである。
    約50mgの細切した試料を薬包紙に包み,白金バスケットにセットする。フラスコの内壁を吸収液で湿らせたのち,フラスコ内の空気を酸素置換し,密栓後,通電により試料を燃焼させる。フラスコを冷却後,吸収液(0.5mol・dm-3硝酸溶液,以下同じ)をフラスコ内に噴射,ふりまぜて燃焼生成物を吸収させ,試験溶液とする。試料が完全燃焼しない場合には,不完全燃焼物を濾別してふたたび燃焼フラスコで燃焼させる。
    試験溶液中の鉛とカドミウムはフレーム原子吸光光度法により定量する。
    本法による鉛の検出限界は40mg/kg,カドミウムは3.Omg/kg,相対標準偏差は11%以内で,鉛とカドミウムの分析値は湿式分解法や乾式灰化法による値とよく一致した。とくに4~8件の試料の分析を2日で行なうこどが可能となり,本法が簡易・迅速な分析法として有用であることがわかった。26の塩化ビニル樹脂から鉛を20400~149mg/kg,カドミウムを524~3.8mg/kg検出した。
  • 岡戸 秀夫, 庄司 宏, 岡部 清美, 安本 義郎, 高谷 晴生
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 120-122
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    For the zeolites containing calcium, which are superior catalysts in high temperature MTO conversion, the effect of the time of adding calcium salt during the crystallization process on the physical properties and the catalytic performance was studied. It was found that large amounts of calcium were contained in the zeolite when calcium salt was added before or during the crystallization, while calcium was hardly done after the completion of it. It indicated that there were at least two kinds of modification states of the acid sites with calcium, because calcium contained by the addition of calcium salt before the crystallization was hardly ion-exchanged with potassium ions, while calcium during the crystallization can be done. Further, it was confirmed by methanol conversion that the amounts of calcium contained affected the yields of ethylene and propylene.
  • 永長 幸雄, 瀬戸 六左衛門
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 123-126
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    A selective and sensitive method has been developed for the determination of traces of copper (II) in water sample. This method is based on the extraction of copper(II) as the benzoylacetone complex into dichloromethane followed by differential pulse polarography. An aliquot of the aqueous sample solution containing 0.1-1.5 μg Cu(II) is placed into a 100 ml separatory funnel with stopper, and 5.0 ml of 1 mol·dm-3 acetate buffer (pH 4.6) is added to it. The total volume of the aqueous solution is then made up to 50.0 ml with water. The aqueous solution is shaken with 10.0 ml of dichloromethane containing 0.1 mol·dm-3 benzoylacetone and 0.1 mol·dm-3 tetrabutylammonium perchlorate for 5 min. After extraction, an aliquot of the organic phase is taken into a polarographic cell. The differential pulse polarogram is recorded with a modulation amplitude of 50 mV, a scan rate of 5.0 mV/s, a drop-time of 1.0 s. The peak height at -0.31 V vs. Ag/AgCl is directly proportional to the concentration of copper(II) at the ng/ml level. This method has been applied to the determination of copper in the waste water taken at the campus of Fukui University.
  • 石山 純一, 江刺家 和夫, 専田 泰久, 今泉 真
    1988 年 1988 巻 1 号 p. 126-129
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The hydrogenation of cyclohexanone was carried out at 70°C under atmospheric or high pressure (100kg/cm2) of hydrogen over platinum group metal catalysts in the presence of ethylene glycol. Although only hydrogenated product (cyclohexanol) was detected over osmium, iridium and platinum catalysts, the rapid formation of acetal was preferred over ruthenium, rhodium and especially palladium ones under hydrogenation condtitions. It was suggested that hydrogen took part in the acetal formation, and two mechanisms were postulated for acetalization over metal catalysis.
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