縮合多環芳香族炭化水素の重縮合体(COPNA)樹脂に関する研究の一環として,ナフタレン(N)とそのメチル(MN)およびヒドロキシ(HN)誘導体を芳香族原料(Aro)に用い,酸触媒存在下で1,4-ベンゼンジメタノール(PXG)による橋かけ反応を行なわせ,置換基の種類(-H,-CH
3,-OH)とその置換位置(αおよびβ)が,反応性や得られる樹脂の諸牲質におよぼす影響を調べた。PXG/Aroのモル比が0.75~2.50の原料混合物に酸触媒(PTS)をその原料混合重量の1~7wt%加え,アルゴン気流中90~180℃の一定温度で反応させた。COPNA樹脂の生成反応速度は,原料Aroの種類,PXG/Aroのモル比,酸触媒量,および反応温度によって違ってくる。同じ反応条件下では,反応の速さはβ-HN>α-HN>N≧β-MN>α-MNの順になる。HN系COPNA樹脂はとくに速く,反応を制御しやすくするためには酸触媒量,反応温度をほかの系よりも低くする必要がある。室温では固体で加熱によって軟化融解するようなBステージ樹脂を得るための,反応の制御が比較的容易な条件は,NおよびMN系ではPXG/Aroモル比1.50,PTS添加量5wt%,反応温度120~130℃,反応時間2~5時間が適当であった。これに対し,HN系ではモル比1.25,PTS1wt%,温度113℃,時間1.5~2.5時間が適当であった。これらの樹脂の軟化点は,ほぼ70~90℃ で,ピリジンやテトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒に可溶であった。これらのBステージ樹脂は200~300℃で1時間加熱することにより完全に硬化し,不溶不融の樹脂が得られた。硬化後の樹脂を空気中または窒素中において10℃/minの昇温速度で加熱したとき,α-HN,β-HN系は400℃から,そのほかは500℃から主要な減量が起こる。または200~250℃の空気中で50時間保持したときには,β-HN,β-MN系で酸化による増量や引きつづく減量がみられ,そのほかの系では大きな重量変化はみられなかった。
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