層電荷の異なる Na 型テニオライト系雲母 [Na
xMg
3-x Li
x(Si
4O
10)F
2; x=1.0, O.8, 0.6]を各種雰囲気下で加熱処理したところ,層電荷の大きい雲母(x=1.0,0.8)の膨潤性は加熱処理温度が高く,また加熱時間が長いほど低下した。ただし,空気中では700℃以上では熱分解が起こるため,密閉容器中で加熱処理し,熱分解を防止する必要があった。膨潤性が低下するとイオン交換能も低下した。これは,加熱によってb軸値が減少し,赤外吸収スペクトルのSi-O
b(底面酸素)の関与したe
11吸収帯のみが低波数側にシフトすることから,層間陽イオンが四面体層のhexagonal holeへ移動することによって層間域構造が変化するためと考えられた。hexagonal holeへ入り込んだイオンは水和能を失うものと考えられる。イオン交換体(Ba-,Ni-交換体)でも同様に加熱によって膨潤性が低下し,e
11吸収帯がシフトしたが,層間イオンの小さなNi-交換体の方がシフトが大きく,これは小さい層間陽イオンの方がhexagonal holeへの移動が激しく生じるためと考えられた。Ba-交換体ではBa
2+イオンがK
+イオンと同程度に大きく,層間域に安定な配位多面体を形成できるため非膨潤化が起こると考えられる。これに対し,層電荷の小さい雲母(x=O.6)では,層間結合が本質的に弱いことに起因して,加熱しても膨潤性はほとんど変化しなかった。
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