日本化学会誌(化学と工業化学)
Online ISSN : 2185-0925
Print ISSN : 0369-4577
1997 巻, 4 号
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  • 韋 悦周, 中澤 竜一, 熊谷 幹郎, 池田 泰久, 高島 洋一, 武田 邦彦
    1997 年 1997 巻 4 号 p. 235-241
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    イオン交換体における金属錯体の酸化還元反応に関する知見を得るために,塩酸溶液からアニオ区交換体に吸着されたクロロFe(III)錯体を非吸着性のFe(II)に還元溶離iする挙動について調べた.サイクリックボルタンメトリーにより塩酸溶液におけるFe(III)/Fe(II)の電流一電位曲線を測定し,酸化還元電位に対する錯形成反応の影響を調べた.次いでSn(II),V(III)を還元溶離剤に用い,バッチ法およびカラム法による吸着一溶離試験を行い,溶離挙動に対する還元剤の効果や塩酸濃度などの影響を調べた.
    塩酸濃度の増加に伴いFe(III)/Fe(III)の電位が低下し,Fe(III)はクロロ錯体の生成により安定化されるため還元されにくくなる.交換体に吸着したクロロFe(III)錯体はSn(II)により迅速に還元溶離され,一方V(III)による還元溶離効果も認められたが溶離速度が極めて遅かった.これは主として両還元剤の交換体への吸着性の違いにより反応機構が異なるためと考えられ,Fe-Sn系の酸化還元反応は主として交換体相で起き,Fe-V系では溶液相の酸化還元が支配的であると推定される.
  • 菅野 亨, 小林 正義
    1997 年 1997 巻 4 号 p. 242-248
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    表面OHのCO-N2O反応への寄与を調べる目的で,二つのMgO表面,623K処理(Shy)および1073K処理(Sde)表面における速度論的機構を,赤外分光法,過渡応答法およびコソピューターシミュレーション法を用いて比較した.リニアー型CO種,フォーメート種そしてカーボネート種が赤外分光法により観測された.これらの三つの吸着種の中で,リニア一型CO種およびCOガス供給源としてのフォーメート種が,N2Oとの反応性を持つことが示された.またカーボネート種は反応条件下では安定に存在しており,N2Oとの反応性が見られなかった.
    両表面とも,反応次数はCOに関して一次,N20に関して0次であり,反応の主経路は気相COと吸着酸素種との反応であることが示唆された.一方,CO-N2O混合ガス中におけるCO濃度のステップ変化によるCO2およびN2の過渡応答は,Shyでは瞬時型,Sd,ではオーバーシュート型と異なった形態となった.これらの応答曲線のコソピューターシミュレーション解析の結果,Shyでは気相COと吸着酸素種との表面反応,Sdeでは酸素への電子供給プロセスである吸着酸素の活性化が,最も遅い素反応であることを示した.Shyにおける酸素の活性化プロセスの速度定数は,Sdeよりも二桁大きかった.これらの結果より,酸素活性化プロセスに対する表面OH基の寄与,すなわち表面OHは表面酸素種の電子供与体どして働き,反応に関与する活性酸素種の再生を促進すると解釈した.
  • 大石 修治, 手嶋 勝弥, 大高 公宏
    1997 年 1997 巻 4 号 p. 249-254
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    NaGdSiO4結晶をNaFフラックスからはじめて育成した.NaFに対するNaGdSiO4の溶解度は,1100℃ で約0.87mol%であり,温度に依存した.NaGdSiO4-NaF系の共晶温度は990±5℃ であり,共晶組成をNaGdSiO4(約0.1mol%)-NaF(約99.9mol%)と推定した.0.25-10mol%の溶質を含む高温溶液(1100℃)を5℃h-1の速度で600℃ まで徐冷して,無色透明のNaGdSiO4結晶を育成した.調合物中の溶質濃度が0.225mol%の場合は針状結晶だけが,0.5-0.75mol%では針状結晶と柱状結晶が生成した.溶質濃度が1-5mol%では両形態の結晶に加えてバルク状結晶が,6mol%以上ではバルク状結晶だけが生成しだ針状結晶(最長3.6mm)育成に最適の溶質濃度は0.75mol%であり,柱状結晶(最長3.2mm)とバルク状結晶(最大2.3mm)の場合はそれぞれ1mol%であった.生成した結晶は正方晶系に属し,格子定数はa=11.743±0.001Å,c=5.443±0.001Åであった.結晶は,両端にピラミッド面をもつ八角柱を基本的な形態とし,{100},{110}および{121}面で囲まれていた.結晶中には,ナトリウム・ガドリニウム・ケイ素および酸素がそれぞれ一様に分布していた.密度は,4.82±0.02gcm-3であった.
  • 林 隆俊, 岡田 豊, 有田 和郎, 黒水 宏樹
    1997 年 1997 巻 4 号 p. 255-259
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シンナミルオキシベンゼンをジエチレソグリコール中で転位させると,2-シソナミルフェノールや4-シンナミルフェノールに加えて,ジエチレングリコールモノシンナミルエーテルが生成した.このエーテルは,溶媒ジエチレングリヨールが酸性と高い誘電率をもっているため,シンナミルカチオン中間体を生じ,かつ捕捉することによって生じたと考えられる.
  • 沖本 憲明, 牧山 稔, 畑 晶之, 津田 穣
    1997 年 1997 巻 4 号 p. 260-266
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    HIV-1プロテアーゼによる基質ペプチド加水分解機構を半経験的分子軌道法(PM3法)により明らかにした.まず,酵素一基質錯体を作成し,X線結晶解析により得られた構造をもとに基質ペプチドと,加水分解に関与する水分子を配置した酵素一基質錯体の分子力場計算によるエネルギー極小化を行った.ここで得られた構造は,反応活性部位の二つのAsp残基が水分子を水素結合により保持し,また,水分子は基質ペプチド切断部位(Tyr-Pro)のTyr残基と強く相互作用していた.次に,この構造をもとに,モデル反応系を構築し,PM3法を用いて量子化学計算を行った.結果,HIV-1プロテアーゼによるTyr-Pro加水分解反応は6段階の過程から成ることがわかった.その律速段階は,酵素の活性部位に配位している水分子からOH鵜が生成する過程であり,その活性化エネルギーは,18.9kcal/molであった.実際に酵素が働く生体内の反応温度は,310K付近であり,これら一連の反応は十分に起こり得るものと考えられる.
  • 石田 浩, 小野 満司, 加地 元, 渡部 敦司
    1997 年 1997 巻 4 号 p. 267-275
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    水溶液を反応場とする2-シクロヘキセン-1-オールの液相脱水による1,3-シクロヘキサジエンめ合成反応を,ゼオライトやイオン交換樹脂を触媒に用いて各種反応方式で検討した.
    その結果,前報の2一シクロヘキセン-1-オールの1液相系の問題点であった,ジシクロヘキセニルエーテルの副生および活性低下について大幅な改善がなされた.油水2相が存在する2液相反応系では,H-ZSM-5,アンバーリストー15が50%以上の1,3-シクロヘキサジエソ収率を与えたが,H-Y,H-β,H-モルデナイトは1液相系と同様に極めて低い収率しか与えなかった.1-プロパノール水溶液の吸着法から求めた疎水性との比較から,水溶液反応系では活性発現にハイシリカゼオライトの疎水性が重要であることがわかった.2液相系の油水の分離速度をシクロヘキセン水和系と比較した結果,シクロヘキセン水和系に比べて分離速度が一桁遅く,しかも,経時的に分離速度が低下することがわかった.
    次に2-シクロヘキセン-1-オールの均一希薄水溶液を用いる反応系を検討した.この系では,ジシクロヘキセニルエーテルは平衡的に抑制され,ほとんど生成しなかった.
    E-ZSM-5とアンバーリスト-15の活性を比較した結果,H-ZSM-5が均一希薄水溶液中ではアンバーリスト-15に比べて極めて高活性であることがわかった.H-ZSM-5およびブンバーリスト-5を用いる均一希薄水溶液での固定床流通反応を行ったが,どちらの触媒においても触媒層および反応管出ロ付近での重合物の付着が著しく,工業的実施は困難と判断した。
    H-ZSM-5をスラリーとして用いる均一希薄水溶液と反応蒸留を組み合わせた反応方式では,90%近い収率で1,3-シクロヘキサジエンが得られた.また,80時間の間,活性低下は全く観測されなかった.これは,生成する1,3-シクロヘキサジエンを水との最低共沸混合物として反応系からす早く除去することによって,重合物の生成による劣化を抑制した結果である.
  • 内田 浩昭, 吉見 晃, 徳永 英明, 小倉 興太郎
    1997 年 1997 巻 4 号 p. 276-282
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    磁気記録用バリウムフェライトの効率的な合成を目的として,合成反応に及ぼすフラックスの添加と焼成試料の粉砕の影響について検討した.フラックスを添加しない場合,例えば1130℃,70分間焼成しても,試料の保磁力はサイバネティック規格に適合しない不十分なものしか得られなかった.しかし,フラックスとして塩化バリウムを1.2から2.9wt%添加することにより,1080℃,40分の焼成で,反応率,保磁力とも実用的レベルの値(97.1%,2510-26200e)に達した.さらに,遊星ボールミルで粉砕することによって,焼成試料の段階ではその保磁力が規格外にあったバリウムフェライトでも,その保磁力が改善され,実用的レベルに調整することができた.また,遊星ボールミル粉砕の効果として,保磁力の分布すなわちSFDが小さくなることを明らかにした.
  • 伊藤 紀子, Vladimir FILMANOVICH, 小柴 理宏, 栗林 清
    1997 年 1997 巻 4 号 p. 283-289
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本論文は,ステソレス鋼316とAl2O3-SiO2系セラミックスのオゾン処理による表面層破壊過程について検討した.用いたオゾン環境は約4.5vo1%オゾンガスと20ppmオゾン水であった。走査式電子顕微鏡(SEM),X線回折,オージェ電子顕微鏡を使用し,試料表面状態変化を評価した.また,オゾン水によるバッチ試験の場合は,ICP(誘導結合プラズマ)装置を使って溶出物質濃度の経時変化を測定した.ステソレス鋼316の場合,オゾンガスの中では表面にはMoSi2,FeOOHとCrO,Crが生成されると同時にオゾンガスでこの膜が破壊されることがわかった.主要な腐食メカニズムは粒界相腐食である.ステンレス鋼SUS316のオゾソ水漫漬によるFe,Cr,Niの溶出量は単純増加し,10日目の溶出量はステンレス鋼試料の重量の0.014%になった.Al2O3-SiO2酸化物系セラミックスの場合も,オゾン水に溶出するA1とSi原子は単純増加し,35日目の全溶出量は試料の重量の0.096%(約28wt%SiO2を含む試料の場合)と0.02%(約60wt%SiO2を含む試料の場合)になった.溶出した化学種はアルミン酸イオンやケイ酸イオンであろうと推察した.
  • Mohamed EL KOUMIRI, Lahcen ELAMMARI, Brahim ELOUADI, 湯原 邦幸, 大石 修治
    1997 年 1997 巻 4 号 p. 290-293
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Colorless and transparent crystals of CaKPO4 were grown for the first time from a K2MoO4 flux by a slow cooling method. Flux growth of CaKPO4 crystals was conducted by heating mixtures containing 2to 20 mol% solute at 1100°C for 10 h, followed by cooling to 500°C at a rate of 5°C h-1. CaKPO4 crystals of sizes up to 0.5 mm x 0.5 mm×0.1 mm were grown. The crystal sizes were dependent on the solute content. The most suitable content was 4 mol%. The shape of the crystals was a hexagonal thin plate. On the basis of X-ray diffraction and differential thermal analysis studies, it was shown that the grown crystals could exist in two polymorphic forms. The stable form at room temperature transformed into high-temperature form (hexagonal) at about 660°C. The most developed crystal faces of the hightemperature form had an index of [0001].
  • 澤本 博道
    1997 年 1997 巻 4 号 p. 294-296
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Adsorption-desorption phenomena of pyridine at a mercury electrode were studied by a flow injection method with mesuring differential capacity-time curves.
    At more positive potentials than -0.9 V the adso rbed pyridine molecules are never desorbed, which means that the adsorption is irreversible. At -1.35 V a very sharp desorption peak is observed, which means that the adsorption is reversible. Irreversibly adsorped pyridine molecules replace water molecules at the surface of the electrode. Reversibly adsorbed pyridine molecules, which form groups of molecules, are placed on the water molecules at the surface of the electrode. When the groups of pyridine moleculs are desorbed, very large peaks are observed.
  • 伊勢田 耕三, 砥綿 篤哉, 渡辺 栄次, 垰田 博史
    1997 年 1997 巻 4 号 p. 297-299
    発行日: 1997/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    An aqueous solution of a commercial liquid synthetic detergent (1 vol%) for kitchen use was photodecomposed in the presence of TiO2 powder under an atmosphere of air at room temperature. The concentration of the detergent decreased to about one-half of its initial value at illumination times of 6 h. The yield of gaseous products decreased in the order of CO2>C2H4>H2. Illumination for 6 h decreased the concentration of oxygen to about one-third of the initial value.
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