水溶液を反応場とする2-シクロヘキセン-1-オールの液相脱水による1,3-シクロヘキサジエンめ合成反応を,ゼオライトやイオン交換樹脂を触媒に用いて各種反応方式で検討した.
その結果,前報の2一シクロヘキセン-1-オールの1液相系の問題点であった,ジシクロヘキセニルエーテルの副生および活性低下について大幅な改善がなされた.油水2相が存在する2液相反応系では,H-ZSM-5,アンバーリストー15が50%以上の1,3-シクロヘキサジエソ収率を与えたが,H-Y,H-β,H-モルデナイトは1液相系と同様に極めて低い収率しか与えなかった.1-プロパノール水溶液の吸着法から求めた疎水性との比較から,水溶液反応系では活性発現にハイシリカゼオライトの疎水性が重要であることがわかった.2液相系の油水の分離速度をシクロヘキセン水和系と比較した結果,シクロヘキセン水和系に比べて分離速度が一桁遅く,しかも,経時的に分離速度が低下することがわかった.
次に2-シクロヘキセン-1-オールの均一希薄水溶液を用いる反応系を検討した.この系では,ジシクロヘキセニルエーテルは平衡的に抑制され,ほとんど生成しなかった.
E-ZSM-5とアンバーリスト-15の活性を比較した結果,H-ZSM-5が均一希薄水溶液中ではアンバーリスト-15に比べて極めて高活性であることがわかった.H-ZSM-5およびブンバーリスト-5を用いる均一希薄水溶液での固定床流通反応を行ったが,どちらの触媒においても触媒層および反応管出ロ付近での重合物の付着が著しく,工業的実施は困難と判断した。
H-ZSM-5をスラリーとして用いる均一希薄水溶液と反応蒸留を組み合わせた反応方式では,90%近い収率で1,3-シクロヘキサジエンが得られた.また,80時間の間,活性低下は全く観測されなかった.これは,生成する1,3-シクロヘキサジエンを水との最低共沸混合物として反応系からす早く除去することによって,重合物の生成による劣化を抑制した結果である.
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