日本化学会誌(化学と工業化学)
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1998 巻, 12 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 穐田 宗隆
    1998 年 1998 巻 12 号 p. 783-793
    発行日: 1998/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    触媒的CO水素化反応の素反応過程を遷移金属モデル錯体上で再現することを目的として, ヒドロシランによる有機金属錯体の還元反応を研究した. ヒドロシラン類はそのH-Si結合が水素のH-H結合に似た反応性を示すのに加えて, ケイ素部分が酸素官能基に対して高い親和性を示して脱酸素還元反応が進行することが期待される. 研究の結果, Pichler-Schulz機構を経る増炭反応, Fischer-Tropsch機構を経るメタン化など, 触媒的CO水素化反応に対して提案されている素反応 (CO還元, C-Cカップリングなど) を有機金属錯体上で再現することに成功した.
  • 西田 雄三
    1998 年 1998 巻 12 号 p. 794-803
    発行日: 1998/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    酸素添加酵素における酸素分子の活性化については従来からも多くの研究があるが, 現在でも広く認められている機構はない. これまでの研究では, いわゆる活性酸素種の検出, 同定に議論が集中されているが, 著者は, モデル錯体を使用した系において, 真の活性酸素種の形成に基質が重要な役割を果たしていることを示唆する数多くの事実を見いだした. 本論文では, 酸素添加酵素における反応機構の説明に, この基質の役割を考慮にいれる必要性を提案したい.
  • 多賀谷 久子, 井上 好美, 近藤 玲子, 東辻 健
    1998 年 1998 巻 12 号 p. 804-810
    発行日: 1998/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    界面活性剤による基質からの油性汚れ除去機溝に及ぼす電解質の影響を機械的ならびに流体力学的作用のほとんどない状態で界面化学的な観点からペーパークロマトグラフ法を用いて研究した. 固定相としてセルロース炉紙 (基質) を用い, 皮脂汚れモデルとしてのオレイン酸, コレステロール, スクアレンのR1値と硫酸ドデシルナトリウム (SDS) 濃度の関係に及ぼすNaClの影響を調べた. SDS濃度を増すと油性汚れのRf'値は上昇し, 洗浄が促進された. NaClを加えるとRf'値が上昇し始めるSDS濃度は低濃度へ移動し, より低いSDS濃度で油性汚れが洗浄される. SDSの臨界ミセル濃度 (cmc) 以下の濃度では, 毛管分析によるとオレイン酸分子とSDS分子の複合体形成による洗浄が示唆された. 塩濃度が増すとオレイン酸分子に結合するSDSの数は減少した. 一方, cmc以上の高濃度では, オレイン酸の洗浄は可溶化に基づいて説明される. cmc以上のSDS溶液にNaClを添加すると, 繊維とSDSミセルの間のオレイン酸の分配係数は増加し, 一方ミセルと水の間の分配係数は減少し, オレイン酸の洗浄が抑制された.
  • 多賀谷 久子, 吉田 亜由美, 東辻 健
    1998 年 1998 巻 12 号 p. 811-816
    発行日: 1998/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    油性汚れの洗浄における界面活性剤の物理化学的作用を機械力や流体力学的な作用がほとんどない状態で研究するために, 繊維粉体カラムを用いた液体クロマトグラフィーを導入した. 固定相 (ポリエステル, 綿) に対する二つの油性汚れモデル (CI Solvent Yellow 5, CI Solvent Yellow 14) の保持容量を移動相の硫酸ドデシルナトリウム (SDS) ミセル水溶液濃度の関数として調べた. この系に擬似相液体クロマトグラフィーの分配式を適用して, 繊維基質とミセル, 繊維基質と水, およびミセルと水の間での汚れモデルの分配係数, それぞれPsm, PswおよびPmwを求めた. PsmとPsw値はセルロースの系よりポリエステルの系で大きく, 油性汚れはセルロースよりポリエステルからの方が洗浄しにくいことを示した. これは放射分析法や他の方法によって研究された疎水性汚れの洗浄性や再汚染性に及ぼす基質の効果に類似した傾向であった. この液体クロマトグラフィー技術は洗浄の平衡論的な研究を可能にするものと考えられる.
  • 田中 智, 町長 治, 青山 芳夫
    1998 年 1998 巻 12 号 p. 817-823
    発行日: 1998/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    カルシウムフェライトモノサルフェート水和物 (以下, CFMSHと略記する) の加熱分解過程の検討, およびCFMSH熱処理物の再水和実験を行い, 再水和による層状構造の再構築性について検討し, Hydrotalciteの場合と比較した.
    原料の配合モル比 [CaO/Fe2(SO4)3] 7.0の条件で得られた生成物 (CFMSHとCaSO4・2H2Oの混合物) を40℃の温水で洗浄することで, CFMSH結晶の単一相が生成したことをXRDとFT-IRによって確認した. TA, XRDおよびFT-IRの結果より以下のことがわかった. CFMSHを400℃まで加熱することにより, CFMSHの層状構造が崩壊した. 610℃において, 2CaO・Fe2O3, CaSO4およびCaOが結晶化した. 1200℃以上の温度において, CaSO4結晶中のSO3が脱離した. 熱処理温度1200℃以下の温度で熱処理された試料の再水和生成物は, 熱処理前試料と同様の結晶構造を示した. それゆえ, 再水和法による最初の層状構造の再構築可能な熱処理温度範囲は, スピネル生成によって制約をうけるHydrotalciteに比べ, CFMSHのそれのほうが広範囲であった. 熱処理温度1400℃で熱処理された試料の再水和生成物は, Ca(OH)2.とCa3Fe2(OH)12であった.
  • 鈴木 美忠, 斉藤 悟郎, 縄 悟, 小泊 満生
    1998 年 1998 巻 12 号 p. 824-830
    発行日: 1998/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ベンゼン中でのチオールのアクリル酸メチルのようなα,β-不飽和エステルへのマイケル型付加は無触媒では非常に遅い. ところが, アルミナ存在下では温和な条件で反応は容易に進行し, 対応する付加体を高収率で与えた. しかし, 同様条件下, 2-メチル-2-ブテン酸 (チグリン酸) エステルとの反応では, 付加体の収率は非常に低かった. チグリン酸エステルとの反応を無溶媒で行うと, 付加体が高収率で得られた. o-アミノチオフェノールの付加では, メルカプト基が優先的にα,β-不飽和エステルに付加し, マレイン酸ジメチルとの反応では温和な条件で対応するベンゾチアジン誘導体が高収率で得られた.
  • 柴田 智章, 服部 俊明, 小野寺 信治, 戒能 俊邦
    1998 年 1998 巻 12 号 p. 831-836
    発行日: 1998/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    本報ではニトロン系, スチリル系, アゾベンゼン系の代表的3種のπ共役系有機色素を含有するpoly (methylmethacrylate) (PMMA) 薄膜にXeランプを照射した場合のホトブリーチング特性の評価を行い, これら薄膜の光導波路への適用性について検討した. スピンコート法によって作製した厚さ数μmの色素含有PMMA薄膜を対象に, (1) ホトブリーチングによるUV-VIS, IR吸収スペクトルおよび膜厚の変化, (2) ホトブリーチング後の薄膜の熱的可逆性, (3) ホトブリーチングによる屈折率変化, を測定した.
    実用的な高分子光導波路作製の観点から, 蛍光灯程度の微弱な光ではホトブリーチングが生じないこと, 恒久的な屈折率変化を維持するためにホトブリーチング後の色素構造に熱的可逆性がないこと, ホトブリーチングにより光導波路作製のために十分な屈折率差が生じることの3点を判断基準とすると, 今回用いた色素の中で, アゾベンゼン系色素が最も優れており, 特にアゾベンゼン系色素を側鎖に結合したPMMAは, ホトブリーチングによる導波路形成に最適であると判断した.
  • 庄司 三良, 佐々木 洋, 川島 憲一
    1998 年 1998 巻 12 号 p. 837-843
    発行日: 1998/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    超はっ水蓑面を得るには, 表面の低表面エネルギー化と微細な凹凸形成が必要である. 本報告ではフッ素系化合物とSiO2の微粒子 (フィラー) を含む塗料を用い, 一回の塗布工程で超はっ水膜を作製する方法を検討した. まず2種類の有機溶媒にフッ素系化合物を添加した塗料を調製し, この塗料を用いてフッ素系化合物の表面析出機構を検討した. さらに, フィラーを添加した塗料を用い, フィラー添加量と表面形状および超はっ水性の関係を検討した. 本報告で使用したフッ素系化合物は, 塗料の乾燥過程でミクロな相分離を起こし塗膜表面に析出する. この効果で塗膜表面は低表面エネルギー化する. また,フィラーを添加することで表面には微細凹凸が形成され, さらにフィラー含有量が4.Owt%以上で塗膜表面は超はっ水性を有することが判明した. これらの塗膜表面の粗さ形状を原子間力顕微鏡を用いて測定し, 表面形状をフラクタル解析した結果, 超はっ水性を示す表面はフラクタル次元が高いことを確認した.
  • 勝山 哲雄, 折原 勝, 高畑 保之, 横田 俊幸
    1998 年 1998 巻 12 号 p. 844-848
    発行日: 1998/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    The kinetics of the ligand substitution reaction between the ethylenediamine-N, N'-bis[2- (2-hydroxyphenyl) acetato]-cadmate (II) ion and the ethylenediaminetetraacetatoferrate (III) ion were carried out at 25 °C and ionic strength = 0.1 mol dm-3. The substitution reaction was shown to proceed by a chain reaction mechanism where the chain propagating steps are the reactions of metal complexes with metal ions. The properties of the metal chain reaction mechanism are discussed. The metal-substitution of [Fe (edta) ]- with cadmium ion was studied by the use of the chain reactions. The observed rate consta nts of the reaction were separated into two rate constants. The mechamism of the reactions is discussed.
  • 松永 勝治, 大塚 知明, 志村 朋美
    1998 年 1998 巻 12 号 p. 849-853
    発行日: 1998/12/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    An isocyanate-terminated prepolymer prepared from 1, 1'-methylenebis (4-isocyanatobenzene)(MDI) and α-hydro-ω-hydroxypoly (oxytetramethylene) (PTMG) was chain extended with 2, 2bis (hydroxymethyl) propionic acid (DMPA). The resulting carboxy group-containing polyurethane was converted into a polyurethane anionomer by treatment with potassium acetate, magnesium acetate, or N, N'-dimethylpiperazine. The chemical structure of the polyurethane anionomer was characterized with respect to its mechanical, dynamic viscoelastic and thermal properties.
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