日本化学会誌(化学と工業化学)
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2001 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総合論文
  • 小原 仁実, 奥山 久嗣, 澤 誠治, 藤井 康宏, 檜山 圭一郎
    2001 年 2001 巻 6 号 p. 323-331
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    本開発は,植物が生産する糖質という再生可能な資源を用い,はん用プラスチックとして使用できる物性を持った高分子量のポリ-L-乳酸を工業的に製造する方法に関するものである.フィルムや繊維などで延伸配向の効果を出すためには結晶性の高いポリ-L-乳酸が必要である.そのためには光学純度の高いL-乳酸が原料として必要である.また,ポリ-L-乳酸を安価なはん用プラスチックとして普及させるためには原料も安価でなければならない.そこで栄養要求性の低いBacillus属を用い光学純度99.0%のL-乳酸を製造する技術を開発した.L-乳酸からポリ-L-乳酸を工業的に合成する工程として,脱水縮合によって合成したプレポリマーから分子内エステル交換反応によって中間原料であるLL-ジラクチドを合成する方法を開発した.まず,LL-ジラクチドの収率を向上させるため乳酸の直鎖1–3量体を全還流させながら脱水縮合を行い,さらにL-乳酸のラセミ化を防止するため反応器温度を135,150,160 °Cと三段階に上昇させる方法を開発した.検討したLL-ジラクチドを合成するための触媒の中では2-エチルヘキサン酸スズが最も活性が高く,かつ得られたLL-ジラクチドの光学純度も高かった.高分子量のポリ乳酸を製造するためには,LL-ジラクチドの純度を上げねばならない.LL-ジラクチドの精製法として環境への負荷を考慮して無溶剤の溶融晶析法を開発した.LL-ジラクチドの開環重合は無溶剤で連続的に行い,重量平均分子量18–20万のポリ-L-乳酸が得られた.また,本研究では得られたポリ乳酸の物性を明らかにするとともに,コンポスト中での分解挙動を調べた.
一般論文
  • 山本 伸司, 高谷 真弘, 松下 健次郎
    2001 年 2001 巻 6 号 p. 333-343
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    エンジン始動直後に排出される炭化水素(以下,「コールドHC」と示す)は,三元触媒(以下,「TWC」と示す)だけでは分解することができない.本報は,炭化水素(以下,「HC」と示す)吸着材とTWCとを組合せたHC吸着型TWCを用いた,コールドスタート時のHCを低減するためのシステムに関するものである.吸着材には高いHC吸着能だけでなく,TWCが活性化する温度に到達するまでHCを保持することが必要である.この要求を答えるには,以下の各特性の他にも,吸着材とTWCとの間の幾何学的な関係が重要である.TWCと吸着材とハニカム担体からなる多層構造は,TWCの早期活性化を促進するのに最も効果的である.吸着材としては,2種類の細孔径(5.5–6.5 Åと7.5–8.5 Å)を持つゼオライトが,1種類の細孔を持つゼオライトよりも幅広い炭素数のHC種を吸着するのに優れる.TWCとしては,セリウム酸化物に担持したパラジウムを基本とした触媒が,吸着材から脱離するHCの分解に最も効果的である.ハニカムの幾何学的表面積は吸着材の保持特性,さらに,システム全体のHC浄化効率に影響することを見いだした.これらの改良を加えたHC吸着型TWCは,コールドHCの除去に対して,性能の促進が図れることを確認した.
  • 野島 繁, 安武 聡信, 今井 哲也
    2001 年 2001 巻 6 号 p. 345-353
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    アルカリ土類金属を含有したSiO2/Al2O3モル比160の各種ZSM-5ゼオライトを水熱合成し,それらの結晶形態,酸特性,耐スチーミング性およびトルエンのメタノールによるアルキル化活性を検討した.プロトン化処理を行ったZSM-5において,ゼオライトに含有されるAlはアルカリ土類金属含有にかかわらずほぼ全量酸性点を形成する.アルカリ土類金属含有H-ZSM-5は含有無しH-ZSM-5に比べて全体的に結晶粒径は大きくなり,また強酸点は減少して弱酸点が増加する傾向にある.さらに,973 Kのスチーミング処理後において酸性点,とりわけ弱酸点が多く残存することから,耐スチーミング性に優れていることがわかった.メタノールによるトルエンのアルキル化反応においては,結晶粒径が大きく,かつ弱酸点が多いMg含有H-ZSM-5触媒はp-キシレン選択率約55%を示し,キシレン異性体中のp-キシレン平衡選択率22%を大きく上回ることがわかった.
  • 長尾 幸徳, 田中 伸樹, 並木 伸夫, 小沢 幸三
    2001 年 2001 巻 6 号 p. 355-361
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    1-クロロ-2,5-ジメチル-1-フェニル-1-シラシクロペンタンおよび1-アルキル-1-クロロ-2,5-ジフェニル-1-シラシクロ-3-ペンテンの2,5-シス((R*S*))とトランス((R*R*))の異性体混合物を各ケトン類と反応させシリルエノールエーテル類を合成し,それらのアルドール型反応を検討した.シリルエノールエーテル類の合成は,塩基としてトリエチルアミン,溶媒にDMFを用いる方法と塩基にリチウムジイソプロピルアミド,溶媒にTHFを用いる方法でそれぞれ行い,各相当するシリルエノールエーテル類を合成した.それら生成物の異性体比より,ケイ素原子上の置換は塩基がトリエチルアミンの反応では立体配置はほぼ保持され,リチウムジイソプロピルアミドの反応では多少反転も起こることが示唆された.これらシリルエノールエーテル類をベンズアルデヒドとの四塩化チタン触媒下によるアルドール型反応により各相当するアルドール類を合成し,カラムクロマトグラフィーで(R*R*)体と(R*S*)体を分離し,その生成比を求めた.1-クロロ-2,5-ジメチル-1-フェニル-1-シラシクロペンタンより得られたシリルエノールエーテルでは(R*R*)体が優先的に生成し,1-アルキル-1-クロロ-2,5-ジフェニル-1-シラ-3-シクロペンテンより得られたシリルエノールエーテルではほぼ選択的に(R*R*)体が生成した.
  • 松永 勝治, 近江 誠, 田島 正弘, 吉田 泰彦
    2001 年 2001 巻 6 号 p. 363-369
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    ジイソシアナートとして4,4′-メチレンビス(フェニル)ジイソシアナート,エーテル系ポリオールとしてα-ヒドロ-ω-ヒドロキシポリ(オキシプロピレン)(PPG)およびα-ヒドロ-ω-ヒドロキシポリ(オキシテトラメチレン)(PTMG)を用いたウレタンプレポリマー(ITUP)およびポリウレタンエラストマー(PUE)のキャラクタリゼーションを示差走査熱量測定(DSC)およびFTIRにより行った.DSCから求めたITUPおよびPUEのガラス転移温度(Tg)は用いたエーテル系ポリオールのMnとともに低下するが,両者のTg値に有意差は認められない.ITUPおよびPUEのTg値をポリオール単独のそれと比べると,PTMG系よりもPPG系の方が大幅に上昇する.ITUPおよびPUE中の水素結合による物理的橋かけがソフトセグメントとハードセグメントとの間およびハードセグメントとハードセグメントとの間に形成され,後者の方が橋かけ密度は高い.PPG系のNHC–O–C(%)はPTMG系のそれよりも高く,逆にPPG系のNHC=O(%)はPTMG系のそれよりも低いことから,PTMG系の方が強固なハードドメインが形成される.
  • 山崎 有亮, 正本 順三
    2001 年 2001 巻 6 号 p. 371-376
    発行日: 2001年
    公開日: 2004/02/20
    ジャーナル フリー
    前回までの報告で,1,3,5-トリオキサンとエチレンオキシドとの環拡大反応という新規反応を見いだしたことを報告した.また,そこで,三つの新規化合物の同定を行った.今ここで,このタイプの反応がホルムアルデヒド環状アセタールとエチレンオキシドとの環拡大反応に一般化されることを見いだした.最初に,このタイプの反応が1,3-ジオキソランとエチレンオキシドとの間で起こり,1,3,6-トリオキサシクロオクタン,1,3,6,9-テトラオキサシクロウンデカン,1,3,6,9,12-ペンタオキサシクロテトラデカンが生成することを確認した.エチレンオキシドの初期濃度が低い際には,1,3,6-トリオキサシクロオクタンの生成が優先し,その生成の選択率はほぼ99%であった.しかしながら,エチレンオキシドの初期濃度を高めると,1,3,6-トリオキサシクロオクタン,1,3,6,9-テトラオキサシクロウンデカン,1,3,6,9,12-ペンタオキサシクロテトラデカンの混合物が生成することが認められた.さらに,1,3-ジオキサシクロヘプタンとエチレンオキシドとの間でも同様の環拡大反応が生じることを確認した.これらのことから,ホルムアルデヒド環状アセタールとエチレンオキシドとの間で,一般的に環拡大反応が生じるものと結論される.
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