この研究は, 新潟県魚野川流域の空中写真 (1964年無雪期, 1964.'65年3月融雪初期撮影) を用いて, 新潟県南魚沼郡湯沢町および同県中魚沼郡中里村周辺において, 主として斜面の積雪面上に出現する若齢林木の立木密度から, 全層なだれの発生関係を求め, 広範地区の全層なだれの発生危険地を推定したものである.つぎに得られた成果について概要を述べる.
1.各斜面における全層なだれの発生条件は, 積雪深・傾斜・斜面長・地表状態・植生の種類によって異なる. (a) 斜面長50m以上を有する斜面について見ると, 草地では, 斜面傾斜23度を越えると, 斜面積雪に割れ目が発生しはじめる.また, 立木の雪面出現密度0の幼齢広葉樹林 (灌木林) では, 斜面傾斜25度付近から斜面積雪に割れ目の発生が見られ, 27度付近を越えるところから, 全層なだれの発生が見られる.なお, 30度を越えるところでは, ほとんど全層なだれの発生に至る. (b) おのおのの斜面における立木出現密度の多少により, 割れ目の発生は異なり, 若齢広葉樹林 (雪面出現樹高2~5m, 雪面上の直径約2~5cm) では, 斜面傾斜30度で約200 (株/ha) 35度で500 (株/ha) 40度では800~900 (株/ha) 以上の立木出現密度を有する場合は, 各斜面の積雪は安定した.
2.全層なだれの発生度合い, あるいは発生時期は各箇所ごとに異なるが, 斜面に発生した割れ目・既なだれ発生地の状態・雪面出現株数, 斜面傾斜などを積雪期の空中写真を用いて判読すれば, 全層なだれ発生危険地の概略の判定がほぼ可能であると考えられる.この方法によって推定した広範地域の全層なだれの発生危険地の1例を図一4に示した.
3.推定された全層なだれ発生危険地の斜面方位別の分布を求めると, S~SW向き斜面は, 面積・箇所数ともに少なく, N~NE向き斜面に多く分布する傾向が見られ肉 (表-3)
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