雪氷
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69 巻, 1 号
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  • 前田 博司
    2007 年 69 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    平成17年12月から平成18年2月にかけて,富山・石川・福井の北陸3県において発生した豪雪による被害について調査し,その要因と背景となった高齢者問題を検討した.この地域では,人的被害は死者24人・重傷91人・軽傷197人,住家被害は全壊2棟・半壊4棟・一部破損65棟・床上浸水1棟・床下浸水14棟,非住家被害は公共施設2棟・その他98棟であった.被害を受けた建物はすべて木造であり,この地方の木造建物の耐雪性が検討された.死者の内に占める高齢者の割合は67%に達し,その多くは屋根雪下ろしなどの除雪作業中に死亡したものであった.この背景には多雪地における社会の急速な高齢化があり,高齢者のみの世帯の屋根雪下ろし等に対する支援が今後の課題である.
  • 河島 克久, 和泉 薫, 伊豫部 勉, 阿部 修, 小杉 健二, 山口 悟, 竹内 由香里, 川田 邦夫, 竹井 巌
    2007 年 69 巻 1 号 p. 9-20
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2010/06/17
    ジャーナル フリー
    平成18年豪雪における積雪の地域特性を明らかにすることを目的として,日本各地の雪氷研究者の協力を得て広域―斉積雪断面観測を2006年2月(上旬及び下旬)に2回実施した.観測地点数は,2月上旬の観測では北海道から中国地方にいたる46地点,2月下旬の観測では北海道から北陸地方にいたる26地点である.観測の結果,平成18年豪雪では,全国的にみた場合,融解凍結が関与するざらめ雪化の進行度合に雪質の地域的差異が最も明瞭に表れており,ざらめ率(積雪深に対するざらめ雪層の厚さの割合)は緯度と標高に強く依存して変化していた.また,積雪全層の平均密度と平均硬度には,2月上旬では低緯度ほど大きい傾向があったが,2月下旬になると平均硬度には顕著な南北差は認められなかった.豪雪地域(山間部)の住民から「今年は雪が硬い」という声が多数聞かれたことに対し,新潟県十日町市におけるラム硬度の観測データを用いて検証した結果,2006年2月上旬と下旬の十日町市の平均ラム硬度は1987年以降では群を抜いて大きいことが分かった.過去の豪雪年のラム硬度との比較から,平成18年豪雪における新潟県山間部の積雪硬度の著しい増加は,豪雪年の特徴であると考えられる.
  • 過去の豪雪年との比較
    川村 隆一, 小笠原 拓也
    2007 年 69 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    ラージスケールの大気循環場の観点から,平成18年豪雪の実態を調べ豪雪発生の要因を考察した.2005年12月が過去50年間で最も冬季東アジアモンスーンが強く,豪雪発生の主要因であると考えられる.冬季モンスーンの強化と関連する特異な大気循環偏差は主に低緯度域で観測された.具体的には,南シナ海・フィリピン海周辺で活発な積雲対流活動がみられ,その対流加熱により中国南部の対流圏上層に非常に強い高気圧が形成された.大規模な高気圧性渦度が定在ロスビー波の波源となり,東方へのエネルギー伝播を通して冬季東アジアモンスーンの強化に寄与した可能性が示唆される.過去の豪雪年と較べて,熱帯からの遠隔強制が強くみられたのが平成18年豪雪の特徴である.
  • 10分間隔3ケ月間のレーダーデータ解析
    中井 専人, 熊倉 俊郎
    2007 年 69 巻 1 号 p. 31-43
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    2005/2006冬季は広範囲にわたり多量の降積雪が観測され,「平成18年豪雪」と命名された.12月から1月前半にかけて寒気が断続的に南下し,これに伴って強い降雪が続いた.この冬季のうち2005年12月から2006年2月までについて,10分間隔の気象庁全国合成レーダーデータを使用し,北海道,東北,北信越および中国地方の降雪分布を解析した.解析期間中は4地方とも降水系が入れ替わりながら継続的に出現し,特に線状降雪雲は期間を通して多く見られた.寒気南下の著しかった期間には渦状降雪雲が多く,その後これと入れ替わるように前線等による降雪が増加した.解析期間全体について積算した降雪は特定の地域に集中する分布を示した.北信越地方において降雪分布に最も寄与したのは線状降雪雲で,山沿いから内陸地域に集中する分布を示した.渦状降雪雲と前線などによる降雪は,平地周辺の降雪に多く寄与した.津南から奥只見にかけての降雪の集中については上越近辺の山地の影響が相関解析から示唆された.
  • 伊豫部 勉, 河島 克久, 和泉 薫
    2007 年 69 巻 1 号 p. 45-52
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    平成18年豪雪における積雪深分布を詳細に明らかにすることを目的として,2006年2月6日9:00に多機関で計測された積雪深を全国的に収集した.1917地点のデータを基に日本列島の積雪深分布図の作成を行い,その地域的特徴について調べた.その結果,3mを超える豪雪エリアは日本海側地域の内陸山間部を中心に広がり,なかでも越後三山周辺では5mに達するエリアがみられた.日本海側地域における積雪深の分布には高度依存性がみられたが,標高の増大に伴う積雪深の増加率は南北で異なっていた.山形県および新潟県の積雪深は,標高300m以上の地点で横ばいに分布する傾向がみられ,高標高側ほど根雪期間が長く積雪荷重が大きいため積雪の圧密が促進されることが関与していた.特に新潟県ではこの傾向が他の豪雪年でもみられることから,平成18年豪雪に限定された現象ではないと推察された.同時期の気象庁データ(315地点)を基に作成した積雪深分布図との比較を行ったところ,気象庁データでは山間部の積雪深が1m以上過小評価される傾向がみられ,内陸山間部に偏在化した積雪深分布を正確に把握することが出来ない可能性が示唆された.
  • 近年の山地積雪の変動の中で
    山口 悟, 阿部 修
    2007 年 69 巻 1 号 p. 53-59
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    平成18年豪雪時の山地の積雪状況がどのようであったかを明らかにするために,全国各地を代表する山地に設置している気象積雪観測点のデータの解析を行った.2005/06冬期の山地における12月の月平均気温は,最近10冬期平均と比べて4℃ほど低い値となった.また12月の降水量も10冬期平均と比べると非常に多かった.その結果,1月中旬以降は,全層平均密度が平均よりも高い状態が続いた.そのために非常に硬い層が形成されていたと推定される.
    過去十数年の最大積雪深のデータとの比較を行った結果,白山白峰と妙高笹ヶ峰の2箇所の観測点では,2005/06冬期の値が過去最大となった.一方そのほかの地点では,多少の増減はあるがほぼ平年なみの値となった.また過去12冬期平均と比べると最大積雪深の起日は,北日本ではほぼ平均と同じであったのに対し,西日本では平均より1ケ月以上早く過去12年間でもっとも早い時期となった.
  • 竹内 由香里, 遠藤 八十一, 村上 茂樹, 庭野 昭二
    2007 年 69 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    2005/06年冬期に十日町市において観測された積雪のラム硬度は,最近20年ではみられない大きな値で推移した.特に,12月~1月初めに硬度が急増し,過去の豪雪年にもない特徴がみられた,そこで,この冬期の硬度の変動およびその要因を明らかにすることを目的として,積雪観測データを解析した.硬度と密度および含水率の関係を調べた結果,積雪が乾いたまま圧密して密度が増加すると硬度も増大し,その後の含水率の増加によって硬度が低下することが示唆された.12月~1月初めには融雪がほとんど生じなかったので,降水量のみを入力した圧密の計算で密度の増加を再現できた.そしてこの時期の硬度の増大は,圧密による密度の増加で説明できることがわかった.
  • 阿部 修, 小杉 健二, 佐藤 威, 佐藤 篤司
    2007 年 69 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    2000年12月26日,山形県立川町(現在庄内町)立谷沢地区で雪崩が発生し,月の沢発電所の水槽の点検に向かっていた5人の作業員のうち3人が死亡した.この雪崩の種類,地形・植生条件,気象・降積雪条件および運動について調査・解析した.その結果,1)雪崩の種類は自然発生による面発生乾雪表層雪崩であること,2)雪崩発生箇所は稜線の風上側の植生のほとんどない斜面であること,3)被災箇所はすり鉢状の地形の底に位置しており雪崩が集中する場所であることが判明した.
  • 松澤 勝
    2007 年 69 巻 1 号 p. 79-92
    発行日: 2007/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    本研究では,気象条件から簡易に吹雪時の視程を推定する松沢・竹内(2002)の視程推定手法の改良を試みた.吹雪時に野外で,降雪強度,風速及び飛雪流量観測を行い,風速と飛雪空間密度の関係式,および風速と摩擦速度の関係式を求めた.両式を,松沢・竹内(2002)の視程推定手法に適用し,石狩吹雪実験場で観測した気象データ等を用いて,視程を推定した.視程の実測値と推定値をそれぞれ5ランクに分け,両者が一致した場合を適中と定義し,適中率(全データ数に対する適中数の割合)を求めた.1時間毎のデータで視程を推定した結果,適中率が36%から50%に向上し,視程推定手法の改良の効果が確認出来た.
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