雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
85 巻, 2 号
選択された号の論文の2件中1~2を表示しています
論文
  • 勝島 隆史, 安達 聖, 南光 一樹, 竹内 由香里
    2023 年 85 巻 2 号 p. 101-114
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/04/09
    ジャーナル フリー

    強風を伴った湿雪の樹木への着雪により,樹木に作用する荷重が増加することで,幹折れや根返りなどの樹木の破壊が生じる.このような樹木の破壊を予測するためには,着雪と風により樹木に生じる荷重を考慮した構造解析が用いられる.しかし,樹木に生じる風荷重の測定例は少なく,風荷重の推定に必要な樹木の抗力係数への着雪の影響は不明である.本研究では,国内の主要な林業種であるスギにおける,抗力係数に及ぼす着雪の影響を明らかにするために,風洞実験を実施した.風洞装置内に実物のスギの枝葉を材料に用いたスギの枝葉のモデルを設置し,送風しながら湿雪を供給することにより人為的に着雪を生じさせた.そして,風速や着雪量などの実験条件に対する,スギ枝葉の抗力係数の変化を測定した.その結果,枝葉への着雪は,(1)着雪の発達により風向に対する垂直面への投影面積である垂直投影面積を増加させる効果,(2)流体抵抗を減じる効果,(3)風の作用により枝葉が湾曲することで生じる垂直投影面積の減少を阻害する効果をもたらすことが示唆された.これらの効果により,着雪前の無風時の受風面積を用いて求めたスギ枝葉の抗力係数は,着雪量により変化した.

  • 小川 弘司, 岩佐 海杜, 藤原 洋一
    2023 年 85 巻 2 号 p. 115-131
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/04/09
    ジャーナル フリー

    石川県と岐阜県の県境にまたがる白山にある,多年性の千蛇ヶ池雪渓を対象として,雪渓の雪面低下量計測と気象観測を3夏期間にわたって行った.夏期における雪面熱収支特性を明らかにするとともに,雪渓の融雪過程と気象との関係について分析し,気象条件や熱収支特性が雪渓の雪面低下量の年変化にどの様な影響を与えているのかを検討した.その結果,3夏期間における雪渓表面の熱収支項の平均値は,純放射量447 W m-2(短波放射量309 W m-2,長波放射量138 W m-2),顕熱輸送量140 W m-2,潜熱輸送量180 W m-2,降雨熱輸送量39 W m-2であった.また,降雨時と無降雨時にわけて融雪熱量を求めたところ,降雨時が349~560 W m-2,無降雨時が157~246 W m-2となっており,降雨時の方が大きいことが示された.さらに,年ごとの雪面低下量への寄与が高いのは正味短波放射量であるが,日積算雨量50 mm以上,日平均風速7 m s-1程度以上の悪天候イベントの発生頻度次第で潜熱輸送量は大きく変動し,年ごとの雪面低下量に違いが生じうることがわかった.

feedback
Top