凍上現象を数値解析的に評価する場合,地盤の弾性係数を一定に取り扱うと,弾性係数の非線形性を見込んだ場合よりも,応力を過大評価することが起こりうる.それは凍上作用を受ける構造物にとっては安全側の設計となるかもしれない.しかし一方で,高志の式を適用すると,有効拘束圧が大きく評価される分,凍上量そのものが小さくなり,変形がもたらす作用応力の過小評価が構造物の安全性を脅かすことにもなりかねない.すなわち一種のパラドックスである.こうした事から,本研究では地盤の弾性係数の軸差応力依存性,ならびに温度依存性を考慮した二次元凍上評価モデルを構築し,それが地盤内の応力分布や凍上量にどのような影響を与えるのかを確認することを目的とする.本論文では,熱伝導解析と非線形応力解析をカップリングさせた数値解析モデルを提案し,凍上量の評価には我が国で実績のある高志の式を適用することとした.ただし,本来一次元の凍結凍上を対象とした高志の式に対して,凍上量の異方性を考慮できる配分パラメータという概念を導入して多次元化を行っている.このパラメータは,高志の式で計算される凍上量を,凍結方向とそれに直行する方向に配分しようとするものである.熱伝導解析においては従来のフーリエ則に加えて,等価比熱法による凍結潜熱の影響を評価した.さらに,非線形モデルの適用にあたっては,地盤の弾性係数の軸差応力依存性,ならびに温度依存性も考慮している点が重要なポイントであり,従前の弾性的な凍上評価モデルとの大きな違いである.このモデルを用い,実験結果と数値シミュレーション結果との比較等を行い,地盤の弾性係数の非線形性評価がもたらす解析結果の差異について検証した.
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