本論文では, 第1報( 上村ら,2008 ) で得た露天保存実験と物性値測定の結果を踏まえて, 籾殼層表面における熱収支と層内部の熱伝導について, 伝熱過程の概略を理解するためのモデル構築を試みた. まず, 表面からの入熱を知るために, 表面熱収支を検討した. 放射収支の実測結果から, 晴天日日中には概ね800 Wm-2 が日射として入り, うち約200 Wm-2 が直接反射し,同程度が赤外放射として大気に向かって放射されていた. 日射吸収率は, 午前から午後にかけて0.65 ~0.85 の範囲で大きくなり,平均0.75 であった. また,放射収支の90 ~92 % は顕熱または潜熱として大気へ放出され,残りの8 ~10 % が籾殼層内へ流入していた. 籾殼層内の温度分布とその時間変化を, 一次元非定常熱伝導解析によって推定した結果, 露天雪保存実験における実測値とよく一致した. 熱伝導モデルから推定される籾殼層表面温度は,籾殼上方の長波放射計から求めた温度より15 ゜Cほど低く,層内部の熱伝導モデルで表現できない現象が表面付近で起きていると考察された. 4月から9月の間の雪山高さの変化を計算した結果は実測値と良く一致し, モデルが妥当であると判断された. また雨の浸透により持ち込まれる熱は, 外形の変化に寄与せず雪山への穴の形成に寄与することが示唆された.
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