雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
73 巻, 2 号
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  • 岩花 剛, 池田 敦, 福井 幸太郎, 斉藤 和之, 末吉 哲雄, 原田 鉱一郎, 澤田 結基
    2011 年 73 巻 2 号 p. 119-131
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    1970年代初頭に,富士山頂における永久凍土の存在が報告され,近年は気候変動によるこの永久凍土への影響が注目されている.年平均気温が-6℃前後であることからも,山頂部に広く永久凍土が存在することは半ば自明と考えられていたが,2008年より山頂部の2箇所で深さ3mまでの地温を約2年間測定したところ,永久凍土の存在は確認されなかった.1地点目では,季節的な凍結深が深く,3m以深に達したが,夏期の激しい降雨の度に大きな地温上昇が記録され,深さ2~3mの凍土も秋期の激しい降雨イベントによって急速に融解した.2地点目では,積雪が地表の冷却を妨げることによって季節的な地中凍結の程度が弱く,降雨浸透による加熱も加わり,1地点目より高い地温で推移した.地温変化は年々変動が激しく,凍土は熱的に不安定な状態であることが今回の調査で示唆されたため,現時点で利用できる情報では近年の気候変動による富士山頂の地中環境への影響を評価することは難しい.今後,富士山における地表層温度および凍土の長期変化の評価は,地表面微気象観測とあわせて,多点におけるより深部までの長期間の連続的な地中観測を拠り所にして行う必要がある.
  • 海原 拓哉, 八久保 晶弘, 尾関 俊浩, 西村 浩一, 秋田谷 英次
    2011 年 73 巻 2 号 p. 133-142
    発行日: 2011年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    積雪中の弱層は表層雪崩の原因として知られているが,雪面付近で形成された弱層の,埋没後の時間的変質に関する詳細な観測例は少ない.本研究では,札幌において2冬期にわたる積雪断面観測を実施し,しもざらめ雪やあられ,降雪結晶の弱層について,せん断強度の指標であるShear Frame Index(SFI)の経時変化を求めた.その結果,しもざらめ雪弱層とあられ弱層は,降雪結晶弱層と比較して強度の小さい状態が比較的長期間継続した.しもざらめ雪弱層の層厚は1ヶ月以上にわたりほとんど変化がなく,この圧密のしにくさが,せん断強度の増加が小さい一因であると考察した.
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