雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
68 巻, 1 号
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  • 森田 勲, 山口 明彦, 吉成 哲, 林 昌宏, 須田 力
    2006 年 68 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2006/01/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, ショベル除雪時の呼吸循環系応答と作業成績の関係を明らかにすることである. 7名の健康な青年男子 (20-27歳,平均21歳) が, 低強度 (RPEで11,「楽である」), 中強度 (13,「ややきつい」) および高強度 (15,「きつい」) の3段階を目安にしたショベル除雪をそれぞれ5分間ずつ実施した. 各被験者に, 重量1.1kg,長さ0.76mの除雪ショベルを用いて深さ0.30~0.45m,幅1m, 密度300~400kg/m3の雪を掬って投げる作業を課した. 測定した指標は, 心拍数, 酸素摂取量, 主観的作業強度 (RPE) および作業指標としてショベリング頻度 (scoops/min), ショベル負荷(一掬い当りの雪の重量, kg)および作業成績 (毎分当りに投雪された重量, kg/min) であった. 高強度の段階では, 酸素摂取量は7.6±0.5Metsで最大酸素摂取量の62±3%に相当し,心拍数は169±6拍/minで最大心拍数の93±3%に相当する値であった.また,このときのRPEは16±0.5, ショベリング頻度は19±1.4scoops/min, ショベル負荷は3.7±0.3kg, 作業成績は70±6kg/minであった. 作業成績と作業中の酸素摂取量との間に, 正の有意な相関 (r=0.718, p<0.001) が認められたものの, この関係は作業者の技術や作業姿勢によって変動すると思われた. 低強度から高強度までの酸素摂取量の増加 (4.3から7.6Metsで77%増加) に対し, 作業成績の増加 (22から70kg/minで218%増加) が拡大することから, 呼吸循環機能はショベル除雪の重要な決定因子であると結論する.
  • 畑中 賢一, Meinhard BREILING, 佐藤 洋平, Pavel CHARAMZA
    2006 年 68 巻 1 号 p. 15-28
    発行日: 2006/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    スキーに代表されるウィンターツーリズムは,積雪寒冷中山間地域の経済を支える有力な産業と見なされている.しかし地球温暖化が予想されており,中山間地域の経済に及ぶ影響が懸念される.まず,スキー場における消費額が地域内総生産に占める割合を調べた.前者が後者に占める比率は地域全体では0.15%(全国平均)に過ぎないが,中山間地域では0.78%,山間地域では3.6%になると推計された.次に,気温および降水量の変化シナリオを設定し,それがスキー場の売り上げに与える影響を予想した.1月の月平均気温が3℃を超える「経営不可能なスキー場」の数は,北海道では皆無であり,東北および東日本の多くの地域でも,最大約10%である.しかし日本海側の地域や西南日本では,最大で約30~40%(対1995年比)に達する.その結果,スキー場現地における消費額は,日本全体で0.75兆円(1995年)から0.65兆円(2080年代)に減少することが予想される.消費額の目減りはスキー場の数の目減りに比して緩やかで,これは地球温暖化の影響下で,小規模スキー場の淘汰が進むことを示唆すると考えられる.
  • 水平面上の(雪+水)→(氷)凍結実験
    粉川 牧
    2006 年 68 巻 1 号 p. 29-38
    発行日: 2006/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    散雪散水工法によるアイスシェルの施工において, 構造体となる氷の質を保ちつつ凍結時間が最短となる散水量を定めることは施工合理性の向上を図る上で重要な検討課題である. この課題を解決する第一歩として, 本研究は水平面上における (雪+水) 層→(氷) 層の凍結現象を定量的に解明することを目的としている. 対流,蒸発及び大気放射による冷却熱量を考慮してその熱収支モデルを構築するとともに熱収支式中に現われる熱伝達率を評価するための簡易実験法を提案し, 薄型木製シャーレを用いた(雪+水)→(氷)及び(水のみ)→(氷) の凍結実験を実施した. 算定された (雪+水)→(氷)の凍結過程における (対流+蒸発) 熱伝達率は平均で8.95×10-4cal/(cm2sec℃)と(水のみ)→(氷)のそれを約50%も上回った. この値を用いた水平面上の(雪+水)→(氷) 凍結シミュレーション結果は, 現行の散水方法に改良の余地があることや施工時間の短縮化が可能であることを示唆した.
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