雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
83 巻, 4 号
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  • 上村 靖司, 杉原 幸信, 代田 俊登, 町田 敬
    2021 年 83 巻 4 号 p. 385-401
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
     国道17 号芝原トンネル坑口の落雪防止柵に設置された遠赤外線融雪装置の融雪面における積雪深シミュレーションモデルを構築し,最適運転条件を検討した.Degree-day 法をもとに時間単位の気温,降水量,自然積雪深データから実用上支障のない精度で融雪面の積雪深を推計できるモデルを構築した.このモデルに2012 年冬季の気象データを入力して最適運転条件を見積もったところ,融雪能力は100Wm−2,装置発停は現行の積雪深二値制御(運転開始250cm,運転停止200cm)が妥当であることが示された.また,雪崩を考慮したモデル(雪崩判定が出ると落雪防止柵前の積雪深が14.7cm 増加する)を構築した.一冬で2 回の雪崩判定が生じる年でも,最適運転条件で融雪すれば積雪深を設定許容値300cm 以下に保つことができることを示した.さらに,10 年間分の気象データを用いてコスト計算を実施した.制御条件を積雪深二値制御とし,電気料金契約を従量料金が安価なプランへ変更することで,10 年間で電気料金を57 万円削減できることを示した.人力除雪にかかる費用は10 年間で1350万円であり,初期投資やメンテナンスにかかる費用を加味しても遠赤外線融雪装置を導入した方が790万円安くなることが示された.
  • 東海林 明雄
    2021 年 83 巻 4 号 p. 403-419
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/16
    ジャーナル オープンアクセス
     御神渡りは諏訪湖が有名で,20世紀初頭から研究記録があり,その成因は,氷板の熱収縮・膨張により「その隆起は氷温の上昇による,熱膨張によって起る」,つまり「氷温上昇時の昼間に起こる」とされて来た.そして,この成因論が「従来説」として一世紀に亙って踏襲されてきた.しかし,浜口は,この説が観測データによらない推論であった事に着目して,新しい成因論を提起した.その理論は,火山物理学と地震学的観点をもとにしている.それによると,御神渡りの隆起は「氷温低下時の夜間に起こる」ことになり,従来説の昼間とは逆の結果になる.本報では,これまでの屈斜路湖の御神渡りの割れ目幅の定量的観測やビデオカメラによる御神渡り発生映像記録,さらに最近の現地での観測による検証によって,夜間冷却時の氷板収縮時に開いた水面で新たな氷が生成され,昼間の氷温上昇時の氷板膨張により御神渡りは発生することを実証した.また,従来の研究は,御神渡り発現(発生)時の研究に留まっていた.本報では,一旦発現した御神渡りのその後の成長発達の観測記録を取得し,成長発達の基本プロセスを解明できたと考える.
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