雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
80 巻, 6 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 黒﨑 豊, 的場 澄人, 飯塚 芳徳, 庭野 匡思, 谷川 朋範, 青木 輝夫
    2018 年 80 巻 6 号 p. 515-529
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    グリーンランド氷床北西部における降雪中のd-excessと化学成分と,降雪をもたらす水蒸気の起源域周辺の環境との関係を明らかにすることを目的として,2017年5月25日から6月6日にかけてグリーンランド氷床北西部のSIGMA-A観測サイトにおいて降雪直後の表面雪を採取した.表面雪中の水素と酸素の安定同位体比から算出することが出来るd-excessは観測期間中に2度の極大値を示した.d-excessが極大値を示した日は陸域起源物質,人為起源物質ともに減少し,Cl/Na+比が海水比に近い値を示した.海塩の変質が他の日に比べて生じていなかったことから,それらの日はSIGMA-Aに近い海域から海塩粒子が輸送されたと推定された.更に,後方流跡線解析と気象解析によりd-excessが極大値を示した原因は,低温,乾燥した空気が比較的海面温度が高い開水面上を通過したからであると推定された.また,d-excessが極大値を示した日にSIGMA-Aに到達した空気塊が輸送中にバフィン湾上空で比較的長時間滞留し,開水面から大気中に拡散された高いd-excessを持つ水蒸気を多量に取り込んだ可能性が示唆された.更に,バフィン湾北部海上で発達した低気圧性循環の風が開水面で高いd-excessを持つ水蒸気の拡散とバフィン湾上での空気塊の滞留を促したと推定された.
  • 渡辺 幸一, 角山 沙織, 宋 笑晶, 金 美佳, 市川 夢子, 江尻 遼介
    2018 年 80 巻 6 号 p. 531-539
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2016年11月30日の富山県射水市上空において,大気中の過酸化水素(H2O2)濃度の測定を,ヘリコプターを利用して実施した.二酸化硫黄(SO2)やホルムアルデヒド(HCHO)は地表付近で高濃度であったが,H2O2濃度は上空で高かった.観測されたH2O2濃度は,これまでに夏季に観測された濃度よりも非常に低かった.また,SO2濃度よりもH2O2 濃度が低く,SO2の液相酸化が抑制されているものと考えられる.同時期の立山・室堂平(標高2450m)で採取した新雪中のH2O2濃度と気象条件から計算された大気中のH2O2濃度と,ヘリコプターで観測した上空のH2O2濃度とを比較した結果,両者の値がほぼ一致し,山岳域での新雪中のH2O2濃度の測定から,上空大気中のH2O2濃度を推定できるものと考えられる.
  • 亀田 貴雄, 高橋 修平, 渡邉 興亜, 平沢 尚彦, 佐藤 秀昭, 浜田 始
    2018 年 80 巻 6 号 p. 541-554
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    1991年から現在まで,北海道足寄郡陸別町では雪氷分野での実験・観測として,陸別の寒さに関する観測,深層掘削機開発実験,雪上滑走路造成実験,降雪量比較観測,が実施されてきた.これらの大規模な観測・実験を実施するためには,実験を計画する研究者側の熱意とともにそれを受けとめる地域の協力が極めて重要である.陸別での観測・実験では両者が有機的につながったため,これらの実験・観測を実施することができた.この報告ではこれらの観測・実験の最初の一歩の説明から始まり,それぞれの観測・実験の実施状況,さらに主要な成果を説明する.
  • 雪野 昭寛
    2018 年 80 巻 6 号 p. 555-569
    発行日: 2018年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    架空送電線のギャロッピングによる事故・障害とその対策については,国内外において1900年代初期から電気事業者にとっての重要課題として取り組まれてきた.その後,今日までその現象把握と対策への取り組みが続いている.架空送電線は自然環境の中で建設・運用されており,厳しい風雪に曝されている箇所も多い.また,用いられている電線は振動しやすい構造であることから,ギャロッピング振動現象の解析的取り組みは段階的であった.その後,2005年12月に日本海側地域において雪害による広域電力供給支障の発生に鑑み,電気事業全体の取り組みとして電気事業連合会より電力中央研究所に研究要請があった.電力中央研究所(2017a)では,電力各社の協力のもと2007年より2017年迄の10年間に及ぶ重着雪・ギャロッピング・塩雪害に関する研究への取組が行われ,その研究成果がまとめられている.この間,100年を超える架空送電線に係わる数多くの関係者によるたゆまぬ取組とデータ蓄積が継続されているので,その経緯とギャロッピング現象の特徴と現象解明や対策に関する国内外の取組を紹介する.
feedback
Top