雪の中を物体が通過するときに必要な力,すなわち抵抗は,物体前面の雪を圧密・圧縮する力と脇に追いやる力の和である.本研究では粒径を揃えた氷粒子を用い−22.5℃と−50〜−80℃の温度で,直径と挿入深さの異なる円柱棒にかかる抵抗を測定した.抵抗は,円柱棒と氷粒子の相対速度が100mm s
−1以下で速度の減少とともに増加した.抵抗と円柱棒直径にはほぼ正比例の関係があった.また,抵抗と円柱棒の挿入深さの間には近似的に2乗の関係があった.実験結果に次元解析を加味することにより,抵抗の速度依存を表現する無次元の定数Kが定義された.Kは氷の粒子間摩擦係数の関数で,氷の平面同士の摩擦係数の速度依存性と同様の傾向を示した.これらのことから,氷粒子群からなる雪の摩擦抵抗のメカニズムも,高速度領域においては水潤滑が,そして低速度領域では氷の凝着せん断変形に焼結が寄与していると結論された.
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