雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
51 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 佐藤 昇
    1989 年 51 巻 3 号 p. 161-169
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    冬季二シーズンにわたり近畿地方周辺で降雪粒子の観測を行なった.降雪のタイプとして短時間のしゅう雪, 季節風による降雪, 温帯低気圧による降雪という3タイプが観測された.降雪のタイプごとに霰を含む雲粒付結晶が卓越する場合と雪片が卓越する場合とがあった.小さな塊状霰が観測され, その密度は外径が2mm以下ではほぼ一定で, 2mm以上では粒径とともに増大する傾向があった.また, 霰のエンブリオとして凍結雲粒が観測された.これらの結果は霰の密度の時間変化を求めた計算結果とほぼ一致した.近畿地方周辺の降雪に特徴的な雲粒付成長が開始する気象条件を求めた.その結果, 雲底温度が-17℃以上であること, 融解直径が0.45mm以上となる大きな降雪粒子が雲中に存在することという条件が得られた.また, ライミングの開始に関して, 雪水量 (W : g/m3) と降雪粒子の空間濃度 (N : 個/m3) との間にN<2.1×106W1.88という実験式が得られた.
  • 坊城 智広
    1989 年 51 巻 3 号 p. 170-177
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    雪崩の防護施設を設計する際に一般的に使用されているVoellmyの雪崩速度公式に含まれている抵抗に関する2個のパラメータμ, ξについて, 実用上の値を見積もるために, 先ず, 最近の外国の文献に報告されているμとξの値を集約して, その出現頻度の傾向を調べた.次に, ξについて, 最近ではVoellmyの示した値よりもはるかに大きな値が報告されていることから, 水理学の理論を導入したVoellmyの考えを更に進め, ξについての基本的な考察を行ない, ξが現実的に取り得る値の上限について推論した.以下にその主な結果を列記する.1) 報告されたμの値は0~0.5の間で出現し, とくに0.14~0.33の間に集中していて, Voellmyの考えとはあまり食い違ってはいない.2) これに対して, ξの値の方は300~3000ms-2の間で出現し, 特に400~1800ms-2の間に集中していて, 上限値は, Voellmyの示した500ms-2前後という値に比べてかなり大きくなっている.3) ξの値は地形や植生による地表粗度によるだけでなく, 雪崩の流れの深さや雪質によっても左右される.4) ξが現実的に取り得る値の上限は, 局部的には4000ms-2以上にもなる可能性がある.
  • 梶川 正弘
    1989 年 51 巻 3 号 p. 178-183
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    新積雪の密度と気象要素および卓越結晶形との関係を詳しく調べるために, 秋田県鹿角市八幡平で6時間毎の観測を実施した.その結果次のことがわかった.
    1) 新積雪の密度は平均気温の低下と共にやや小さくなり, 平均風速の増加と共にやや大きくなる傾向を示したが, 卓越結晶形の相違による測定値のばらつきは相当大きかった.
    2) 平均気温が0℃以下のときには, 新積雪の密度は卓越結晶毎に, 雲粒付着の有無およびふぶきの有無を考慮して表わすことができる.
  • 本堂 武夫
    1989 年 51 巻 3 号 p. 184-194
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    X線回折の原理および格子欠陥の基本的な性質を解説し, X線回折を通して眺めた雪氷学の一端を紹介する.特に, 氷の塑性を特徴づける格子欠陥の性質について, その要点を説明する.
  • 大前 宏和
    1989 年 51 巻 3 号 p. 195-199
    発行日: 1989/09/30
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    氷床流動の観測に基づいて, 南極氷床の変動 (例えば, 氷床域の拡大, 縮小) を明らかにすることを目的として, 東南極の東経35度から東経45度に至るみずほ高原地域において, 過去20年にわたって観測が続けられてきた.その結果, 白瀬氷河流域では.年間約70cmもの氷厚の減少が観測された.この氷厚減少から, 白瀬氷河流域の氷床が不安定状態にあることが示唆され, 原因として, 氷床底面での“底面すぺり”が指摘された。そこで, 氷床底面の物理的状態を調べるために電波氷厚計を用いての電波探査が氷床上の流動測定・雪氷観測ルートに沿って, 1982年以降実施された.
    これまでの電波観測では, 送信時刻と基盤からの反射時刻の時間間隔から氷厚のみを求めていたが, この研究では, 氷床氷の厚さを測定するだけでなく, 氷床内部からの電波反射 (内部反射層), 基盤からの電波反射を記録し, それぞれ, 氷床氷の誘電的性質, 氷床底面及び基盤岩の誘電的性質に対応した情報を得ることができた.
    これらの観測, 解析をもとに, 基盤および底面氷の物理状態を表わす種々の氷床底面モデルを構築し, 各底面モデルの電波反射係数を計算した.氷床底面に水膜が存在するようなモデルでは, 底面氷/水膜及び, 水膜/基盤岩の境界面での多重反射を考慮した.このモデル計算値と氷床内の電波減衰量を補正した底面反射強度を比較し, モデル計算値でレベルスライスして氷床底面状態を決定した.
    この結果, 白瀬氷河主流線の中下流域では, 氷床底面が融けて, 水膜が存在しているが, あるいは, 底面氷が, 水を含んだ湿潤状態であることが定量的に示された.また, これらの地域は, 氷床流動が不安定な状態 (氷厚が異常に減少し, 又, 氷の流速が異常に速い状態) にある地域と一致することが明かとなった.
feedback
Top