雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
74 巻, 2 号
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  • 後藤 博, 菊地 勝弘, 梶川 正弘
    2012 年 74 巻 2 号 p. 145-158
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    融雪期において表層土壌や植生が異なると, その上の積雪内部の含水率にどのような影響があるのかを調べるために,地表面状態の異なる4 地点(砂地, 芝生, 杉林内および杉林に近接する開地; 草地)で積雪断面観測を行い詳細な含水率測定を行った. また, 積雪含水率は地表面下の土壌の物理的性質にも影響されると考えて, 各地点の土壌サンプルを用いて透水性・水分保持力について検討した. 得られた結果は次のように要約される.(1)砂地においては他の土壌とは異なり, 融雪期の積雪含水率には地表付近の顕著な増加は見られずほぼ一定であり,「ざらめ雪」層内の上方ほど増加しており,ピークはその上の「しまり雪」を含む層と対応していた.(2)隣接する砂地と芝生では, 融雪期において,積雪深がほぼ等しくても積雪水量は芝生が大きく,雪質構成にも明らかな差が認められた.それは, 主に含水率の鉛直分布とそれによる濡れ密度の差に因ると考えられる. (3 ) 地表面下10cmまでの土壌についてみると, 観測地点の砂地は透水性が良く, 水分保持力が弱かった. 植生のある土壌では植生や場所により透水性・水分保持力に開きがみられた. この土壌の物理的性質が地表面上の積雪含水率, さらには雪質に影響を与えていることが示唆された.
  • 上石 勲, 本吉 弘岐, 石坂 雅昭, 佐藤 威
    2012 年 74 巻 2 号 p. 159-169
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    2011 年3 月12 日午前3時59 分に長野県北部を震源として発生したマグェチュード6.7 の地震によって,表層雪崩や全層雪崩,土砂崩壊を伴った雪崩,ブロック状の積雪の崩落,平坦部の積雪表面のクラックなどが広範囲に多数誘発された.雪崩の破断面は,階段状になるなど不規則な形状となっていたものが多かった. 通常雪崩が発生しない雪崩予防柵設置斜面上部からも雪崩が発生していた.また, 土砂崩壊を伴った雪崩は流動性が高く流下距離が長かった. 地震によって発生した雪崩は, 道路を各所で一時通行止めにした. 地震による雪崩発生や積雪の崩壊状況を広域的に調査した結果, 長野県栄村や新潟県十日町市松代, 松之山地区など震度6弱以上を観測した範囲で, 地震の震動による影響が大きかった. 表層雪崩は, 脆弱なぬれざらめ雪をすべり層としたものが多く, その剪断強度と上載荷重を測定した. このデータを用い, 地震時の地盤の安定解析の考え方を応用して, 地震を考慮した積雪安定度解析を行った.その結果, 積雪安定度が2.3 と積雪が比較的安定な斜面でも,地震の水平加速度を加えることによって,積雪安定度が1.5 以下と不安定となる結果が得られた.今後は,観測結果をさらに詳細に検討するとともに, 地震の影響を実験などの手法により定量的に把握する必要がある.
  • 成瀬 廉二
    2012 年 74 巻 2 号 p. 171-172
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    雪氷73 巻6号に対馬勝年会員による表記のタイトルの「討論」(対馬,2011b: 以下‘補足’と呼ぶ)が掲載された.これは,同著者の「研究ノート」(対馬,2011a )への補足説明ということである.対馬会員は,1969 年以来, 一貫して氷の摩擦の研究に取り組み, 摩擦の凝着説を新たに提唱するなど数多くの業績をあげてきた.また,これらの成果をウィンタースポーツに応用する努力も行い,1998 年の長野オリンピックでは,氷笥を張り詰めた高速スケートリンクの試作にも力を注いだ.しかしながら, カーリング競技のストーンの曲がり(カール) に関する研究ノート,および‘補足’には, 論理的とは言い難い説明がいくつか見られるとともに,物理学の常識から離れた主張があるので,それらについて指摘したい.なお,‘補足’が「討論」として掲載されたので,本コメントも「討論」としているが,雪氷学上の真の討論ではない.むしろ, それ以前の,本来なら印刷公表前に査読者が論評するべき内容と思われる.なお,本コメントは, カーリングストーンと氷との摩擦のメカニズムには立ち入らず, ストーンの運動における古典力学の観点のみから論ずる.
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