2011 年3 月12 日午前3時59 分に長野県北部を震源として発生したマグェチュード6.7 の地震によって,表層雪崩や全層雪崩,土砂崩壊を伴った雪崩,ブロック状の積雪の崩落,平坦部の積雪表面のクラックなどが広範囲に多数誘発された.雪崩の破断面は,階段状になるなど不規則な形状となっていたものが多かった. 通常雪崩が発生しない雪崩予防柵設置斜面上部からも雪崩が発生していた.また, 土砂崩壊を伴った雪崩は流動性が高く流下距離が長かった. 地震によって発生した雪崩は, 道路を各所で一時通行止めにした. 地震による雪崩発生や積雪の崩壊状況を広域的に調査した結果, 長野県栄村や新潟県十日町市松代, 松之山地区など震度6弱以上を観測した範囲で, 地震の震動による影響が大きかった. 表層雪崩は, 脆弱なぬれざらめ雪をすべり層としたものが多く, その剪断強度と上載荷重を測定した. このデータを用い, 地震時の地盤の安定解析の考え方を応用して, 地震を考慮した積雪安定度解析を行った.その結果, 積雪安定度が2.3 と積雪が比較的安定な斜面でも,地震の水平加速度を加えることによって,積雪安定度が1.5 以下と不安定となる結果が得られた.今後は,観測結果をさらに詳細に検討するとともに, 地震の影響を実験などの手法により定量的に把握する必要がある.
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