雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
75 巻, 6 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 勝島 隆史, 熊倉 俊郎, 山口 悟
    2013 年 75 巻 6 号 p. 429-439
    発行日: 2013年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    凹凸を伴う層境界を持つ積雪中における,水分移動の鉛直2次元定常数値計算を行った.数値計算に使用する各変数の値を変化させた場合の計算結果の違いから,層境界の滞水効果や凹凸が,水みちの形成に与える影響を考察した.上下の積雪層の粒径を0.2〜1.0mmの範囲で変化させた計算では,下部積雪層の粒径が0.5mm以上で,なおかつ上部積雪層の粒径が下部積雪層の粒径よりも0.1〜0.4mm以上小さい場合に,水みちの形成が顕著であった.層境界の凹凸の波長を0.2〜6m,波高を0.01〜0.1mの範囲で変化させた計算では,波高が大きく波長が短い場合に,水みちの形成が顕著であった.凹凸の波高が0.01mと小さい場合や波長が6mと長い場合でも,凹部への水の集中が算定されたが,集中の程度は小さく,水みちが形成されにくい傾向があった.形成する水みちの幅は,凹凸の波長が長い場合や上下の積雪層の粒径の差が小さい場合に,水みちの幅が大きくなる傾向があり,特に凹凸の波長に対して顕著な影響を受けていた.
  • 西村 浩一, 成田 英器, 尾関 俊浩
    2013 年 75 巻 6 号 p. 441-447
    発行日: 2013年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    「新雪」,「しもざらめ雪」,「ざらめ雪」の3種類の積雪を対象に,水平断面を深さ方向に連続して撮影された200から300枚の片薄片の画像について,並行移動と回転による位置に加えて明暗やコントラストの調整を行ったうえで,3次元構造の構築を試みた.また,3D骨梁構造解析ソフトウェアを用いて,密度,比表面積,単位体積に含まれる氷粒子の結合点や端点の数,結合点と端点を結ぶ長さなど,積雪の3次元構造を特徴づける指標の値を求め,3種類の積雪の比較を行った.その結果,粒子の形状が複雑である場合や粒径の小さい粒子が多数存在する場合に大きくなるとされる比表面積は,新雪が最も大きく,しもざらめ雪,ざらめ雪の順となった.一方,氷粒子と空隙という積雪ネットワークを構成する要素の大きさを示す指標は,ざらめ雪,しもざらめ雪,新雪の順に小さくなった.また構造の複雑さを示すフラクタル次元は,ざらめ雪,しもざらめ雪,新雪の順に大きくなり,単位体積中の結合点と端点の数,および氷粒子の骨格線の長さは新雪が他の2種の積雪に比べ十分に大きい様子も定量的に示された.
  • 荒川 逸人, 和泉 薫, 河島 克久, 石井 吉之
    2013 年 75 巻 6 号 p. 449-460
    発行日: 2013年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    積雪の硬度は積雪断面観測における基本的な測定項目であり力学的に重要な項目である.近年,測定の簡便性・迅速性からプッシュゲージが利用されている.そこで,積雪を構成する粒子や間隙の形や大きさという微細構造と硬度を関連づけることを目的として,様々な雪質の季節積雪(乾き密度:91〜494 kg m−3)について,硬度と画像解析をおこなった.その結果,密度増加に対して硬度増加の傾向,平均間隙幅増加に対して硬度減少の傾向がみられた.特に平均間隙幅との関係では雪質によらない回帰式が得られた.そこで,剪断抵抗と圧縮抵抗を取り入れた簡易な圧縮破壊変形モデルを使い,アタッチメントに働く力を導き微細構造との関係について考察したところ,硬度は平均粒径と密度に比例し,平均間隙幅の3乗に反比例するといった雪質に依存しない関係を示すことができた.さらに,この関係を発展させると,しまり雪等場合に硬度が密度の4乗に比例する関係が成り立つための条件が明らかとなった.それは間隙率ϕの増加に対して平均粒径Dgが減少する場合であり,ϕ3Dg2=一定 で表されることが示された.
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