冬の晴れた夜間に架線に発生する霜により離線が発生し,これに伴うアーク放電がパンタグラフの損傷等の事故の原因となることがある.本研究では,全国の架線着霜被害の実態と対策の分析,岐阜県中津川駅における観測,観測結果と霜の発生メカニズムに基づいて翌朝の架線着霜を予測する簡便な手法の検討を実施した.観測の結果,気温は0.5℃以下,相対湿度は80%以上,風速は1ms
−1以下,放射収支量は−70Wm
−2以下の条件が重なる時に着霜発生の可能性が高いことがわかった.このような条件下では,架線表面付近の水蒸気が過飽和となって架線表面に昇華凝結し,霜が発生することを確認した.また,架線着霜が発生する日は,夕刻から朝まで一晩を通して水蒸気濃度の変化が小さいことを確認した.そこで,温度と水蒸気濃度の関係に着目し,夕刻の気温,相対湿度の実測値と翌朝の予想天気,予想最低気温から架線着霜の発生を予測する手法を開発した.本予測手法の精度を検証した結果,高い適中率で架線着霜の発生予測が可能なことがわかった.また,これを霜取り列車等の運行判断に用いた場合,適中率が向上し,かつ空振りを削減可能な見込みが得られた.
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