雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
84 巻, 6 号
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論文
  • 菊池 駿輔, 杉浦 幸之助, 堀 雅裕
    2022 年 84 巻 6 号 p. 489-501
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/12/08
    ジャーナル フリー

    本研究は山形県での先行研究をもとに富山県での屋根雪関連事故と気象要因との関係を明らかにすることを目的とする.まず,富山県全体について日最高気温と7日間降雪量を用いて,これらと事故件数との関係を解析した.事故件数と日最高気温の関係では先行研究の山形県と同様に,事故件数が多いのは,日最高気温が数 ℃の場合となった.また,事故件数と7日間降雪量では,事故件数が多いのは7日間降雪量が多い場合であった.富山県は事故の大半が転落事故であったことから雪下ろしの必要性が高まったことによる人為的要素の強い事故が多かったものと推察された.続いて,ある気象条件のときにどのくらい事故が発生しているかという発生危険度を求め,日最高気温と7日間降雪量を用いた注意基準を作成した.そして検証指数を用いて注意基準を検証した.全体を通じて,先行研究に比べて事故件数が少ないながらも,屋根雪関連事故が発生している.事故の要因が気温や降雪といった気象要因よりも,雪下ろしの必要性といった人為的要因が強いという特徴は人の意識によって事故が防げる可能性を示唆しており,注意喚起が重要であると考えられる.

  • 中島 遥香, 野村 大樹
    2022 年 84 巻 6 号 p. 503-514
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/12/08
    ジャーナル フリー

    海氷内で析出する炭酸カルシウム6水和物イカアイト(CaCO3・6H2O)結晶の析出条件を明らかにすることを目的として,様々な条件において室内実験を実施した.天然海水を-25 ℃で凍結後,1,7,21日間静置した.その後,+4 ℃で海氷を融解し,イカアイト結晶の個数およびサイズを計測した.その結果,1日間静置した場合,イカアイト結晶が見られなかった.しかし,7および21日間静置した場合,海水1リットル当たりそれぞれ565および4,998個存在した.つまり,時間の経過とともにイカアイト結晶の個数は増加した.また,結晶のサイズ分布は,静置時間の違いによって変化した.さらに,海水の炭酸系環境がイカアイト結晶の析出に与える影響を評価するための実験では,NaOH量の増加(pHの増加)とともにイカアイト結晶の個数は増加した.これは,NaOHの添加によって海水のpHが増加し,イカアイト結晶が析出しやすい条件になったためと考えられる.

研究ノート
  • 村田 晴彦, 河島 克久
    2022 年 84 巻 6 号 p. 515-527
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/12/08
    ジャーナル フリー

    雪による車両滞留の発生特性の解明を目的に,データベースの構築とそれを用いた分析を行った.データベース構築では,インターネット上で検索できる道路管理者の発表資料,報道資料,公的機関等のTwitter情報を活用し,データの収集を行った.また,発生特性の分析は,発生件数の経年変化,発生地域,道路区分,発生月,発生時刻,発生原因,発端となった車種,滞留規模の8項目を対象に行った.その結果,1986年1月~2021年4月の期間に発生した計423イベントがデータベース化された.発生特性については,車両滞留イベントが近年多発傾向にあること,発生場所は北陸地方が最も多いものの,非積雪地域を含めた40都道府県にわたっていること,発生時刻は日中に多い一方,未明から早朝までの時間帯には少ないことがわかった.さらに,北海道の場合,視程障害や吹きだまり・多量の新雪が原因となる割合が高いが,全国的に見ると圧雪路面でのスタックが原因のイベントが圧倒的に多いこと,大規模車両滞留のほとんどは2010年以降に北陸地方,山陰地方,非積雪地域の高速道路や直轄国道において,大型車が発端となり発生していること等が明らかになった.

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