雪氷
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78 巻, 6 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • ALIMASI Nuerasimuguli, 榎本 浩之, CHERRY Jessica, HINZMAN Larry , 亀田 貴雄
    2016 年 78 巻 6 号 p. 365-382
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    北極圏では急速な温暖化が報告されている.温暖化のメカニズムの研究では,冬から春にかけての雪氷圏の変化が注目されているが,衛星リモートセンシングは冬から春の雪氷圏観測の有効な手法である.これまで積雪域の観測には37GHz, 19GHzのマイクロ波を使った観測が用いられてきたが,本研究では低周波の6GHzの利用を検討した.冬から春のアラスカの地表面の変化の観測のために,航空機搭載マイクロ波放射計によるアラスカの湖や湿地,森林地帯の観測を実施した.積雪の昇温が起こり,融解が始まる春の雪氷域では表面を観測する赤外線と内部を観測する低周波マイクロ波の組み合わせが有効である.積雪融解前はTBの地域差はほとんど見られなかったが,融解期の開始とともに違いが大きくなった.冬から春にかけて,赤外線が示す表面温度の上昇の一方で積雪底部はまだ低温状態にある.航空機と衛星観測により,アラスカの春の昇温の進行におけるフェアバンクス周辺の低地の速い昇温と山岳の昇温の遅れが観測出来た.また,山岳域では積雪内部の昇温の遅れ,低地では森林の顕著な昇温と湿地や凍結している湖での昇温の進行が観察できた.
  • 堀 雅裕
    2016 年 78 巻 6 号 p. 383-390
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    人工衛星に搭載される中程度分解能の光学センサは,1970年代以降の地球上の積雪域の変動を捉え続けており,リモートセンシング用の衛星センサの中で最も長い歴史を有している.本解説では,中分解能光学センサ仕様の変遷の歴史をたどるとともに,雪氷圏観測への利用状況と今後の展望についてまとめた.
  • 島田 利元, 竹内 望, 青木 輝夫
    2016 年 78 巻 6 号 p. 391-400
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    北極圏に位置するグリーンランド氷床では,近年の気候変動に伴い大規模な融解や質量損失が生じている.この原因は気温上昇だけでなく,雪氷面のアルベドの変化に大きく影響を受けていることが知られている.このようなアルベド変化の要因は,積雪域や裸氷域,暗色域といった雪氷面の種別や状態によって異なる.降雪によって形成される積雪域では,積雪粒径や積雪中の不純物濃度の変化がアルベドの変化を引き起こすことがわかっている.夏季融解期に季節積雪が融解によって消失し,下部の裸氷が露出する裸氷域や,裸氷域の中でもダストや雪氷微生物によって暗色化した氷が分布する暗色域では,これらの面積の拡大がアルベドの低下に寄与しており,氷床縁辺部における大きなアルベドの低下の主要因であることが指摘されている.本稿ではこれら裸氷域・暗色域に注目し,現地観測から得られた知見や,衛星観測からこれらを検知する手法,また衛星観測から明らかになった近年の変動傾向について解説する.
  • 谷川 朋範
    2016 年 78 巻 6 号 p. 401-415
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    積雪物理量のリモートセンシングに必要な積雪放射伝達モデルと地上現場観測について解説する.積雪放射伝達モデルは衛星センサが観測する輝度と積雪物理量を関連づけるツールとして,また地上現場観測は衛星プロダクトの検証のほか,様々な雪氷物理過程の理解,モデル化に役に立つ.本稿では2017年度打ち上げ予定の気候変動観測衛星GCOM-Cで行われる偏光観測を視野に,主に現場観測による積雪の偏光特性について解説する.また最後に偏光情報を用いた積雪リモートセンシングの可能性について言及する.
  • 中村 和樹, 山之口 勤, 土井 浩一郎, 澁谷 和雄
    2016 年 78 巻 6 号 p. 417-424
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/03/02
    ジャーナル オープンアクセス
    白瀬氷河の氷流が東へ湾曲することを調べるため,1996年から1998年のJapanese Earth Resources Satellite-1(JERS-1)衛星搭載のSynthetic Aperture Radar(SAR)の15シーンから得られる12ペアの画像に対して画像相関法を適用して流動ベクトルを算出した.下流域の西部流線における流動速度は東部流線よりも0.24-0.32km a−1速く,東西流線による流動速度の違いは顕著であることが分かった.この流動速度の非対称性において,氷流の方位角の変化はGrounding Line(GL)付近までの氷流は309°の北西方向に流れており,GL から10km下流へ離れた当たりから氷流の方向を319°と東方向へ変えて,20kmおよび30km下流ではそれぞれ329°,341°,浮氷舌では346°の方向へ流れており,上流から下流への流向変化は40°であった.この氷流の方位角の変化は,基盤地形の非対称性との関係を持つと考えられ,音響測深,BEDMAP,航空機によるアイスレーダおよび磁気測量によるリュツォ・ホルム湾の海底地形と白瀬氷河下の基盤地形の計測結果から考察した.その結果,氷河下の基盤地形も東西で非対称をなすと考えられ,このことが西部流線の流動速度が東部流線よりも速い結果を生じさせ,流動方向を東へ湾曲させることにつながると考えられた.
  • 阿部 隆博, 古屋 正人
    2016 年 78 巻 6 号 p. 425-438
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    氷河サージとは,長い静穏期の後に流動速度が平時の数倍から数百倍にまで短期的に上昇する現象で,末端の前進や高度変化を伴う.サージ型氷河は世界的には数少なく,低頻度な現象であるため,その動態には解明されていないことが多かった.しかし,合成開口レーダー(Synthetic Aperture Radar, SAR)を用いた氷河流動観測が質・量ともに向上し,新たな知見が得られつつある.本稿では,非サージ型氷河の理解にも重要な氷河表面速度と氷河の水理・水文環境の変動を概観するとともに,これまで提起されたサージ発生メカニズムとその問題点を解説する.次に,SARによる氷河流動観測技術の進展と最近のサージ検出事例を紹介し,サージ発生メカニズムに関する最新の知見を議論する.最後に,衛星SARによる今後の氷河流動観測について述べる.
  • 秋山 一弥, 池田 慎二, 木村 誇, 松下 拓樹
    2016 年 78 巻 6 号 p. 439-457
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2014年2月14日から15日にかけて関東甲信地方では大雪となり,山梨県早川町を流れる早川周辺では災害に至る規模の雪崩が発生した.空中および地上の調査で特定された60個の雪崩の最大到達距離は約700mであったが,直接見通し角は34°以上で急である特徴があり,地形的な特徴や雪崩の堆積状況が関連していると推定された.このため,雪崩の地形要素についてさらに調査を進めるとともに,雪崩の経路の地形に関する統計モデルのα–βモデルと一次元の運動モデルであるフェルミーモデルを用いて,到達距離と地形の関係について調査を行った.その結果,雪崩の堆積区勾配は25-45°が多く既往の調査結果と比較すると差異がないものの,到達距離は落差の約1.2倍で落差に対する到達距離が短いために見通し角が大きくなっていることがわかった.また,α–βモデルから雪崩の停止地点はβ point に一致し,表層雪崩は地形勾配が24°,全層雪崩は24°かそれ以上の地点で停止していて,表層雪崩は乱流抵抗の比例定数(ξ)が500ms−2,全層雪崩は300ms−2の場合が早川周辺で実際に発生した雪崩に最も適合した.
  • 塚川 佳美, 東 久美子, 近藤 豊, 杉浦 幸之助, 大畑 祥, 森 樹大, 茂木 信宏, 小池 真, 平林 幹啓, DALLMAYR R ...
    2016 年 78 巻 6 号 p. 459-478
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    北半球高緯度域における積雪中のブラックカーボン(BC)の測定は,放射影響を推定する上で重要である.しかし従来の分析手法の不確実性により,高精度な観測データは極めて限られている.本研究では,アラスカ広域で2012年から2015年の2月下旬から3月上旬に積雪を採取し,従来法よりも高精度な単一粒子レーザー誘起白熱法を用いて積雪中のBC濃度測定を行った.BC濃度の緯度分布の特徴からアラスカでの観測領域を南部(61.82-63.27° N),中部(63.57-65.9° N),北部(66.56-68.62° N),Prudhoe Bay(70.19° N),Barrow(71.32° N)の5つに分けた.このうち中部地域とアンカレッジ近傍は他の地域に比べて,BC濃度が高くかつBCの質量粒径分布の中央値が大きかった.中部地域のBC濃度と質量粒径分布が他の地域と異なる理由として,フェアバンクスなどの都市からの影響を強く受けていることが考えられる.2012年から2015年の全地点での平均BC濃度は,異なった測定手法を用いた先行研究と比べて20〜60%低濃度であった.BC濃度の年々変動は比較的小さく,本研究の結果は近年のアラスカ積雪中の空間代表性の高いBC濃度を示しているといえる.
  • 秋山 一弥, 和泉 薫
    2016 年 78 巻 6 号 p. 479-496
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    新潟県の上越市と妙高市,糸魚川市が位置する上越地域において,1883年から2016年の134年間に発生した雪崩災害の統計と上越市の高田における127年間の年最大積雪深の記録から,雪崩災害の推移と特徴を明らかにするとともに,年最大積雪深を用いて評価を行った.上越地域で134年間に発生した雪崩災害は556件,人的被害(死者・行方不明者)は340人で,雪崩災害の発生は2月が238件(43%)で最も多く,1月から3月までに512件(92%)が発生した.雪崩災害は鉄道の災害が多い1922年から1940年の19年間に226件,道路の災害が多い1963年から1986年の24年間に194件の合計で43年間に420件(76%)が発生し,人的被害は前者の期間に多く202人(59%)であった.雪崩災害の発生が最も多い1927年は50件の災害が発生し,人的被害は1922年の97人に次いで2番目に多い57人で,高田の年最大積雪深は1940年の377cmに次いで2 番目に大きい375cmであった.上越地域では1927年の2月に大雪となって沿岸部で雪崩災害が同時多発的に発生したが,人的被害の8割は集落の災害であった.
  • 阿部 修, 平島 寛行
    2016 年 78 巻 6 号 p. 497-500
    発行日: 2016年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
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