雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
65 巻, 5 号
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  • 前野 英生, 古津 年章, 浦塚 清峰, 藤田 秀二
    2003 年 65 巻 5 号 p. 441-456
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    南極氷床の内部は,メガヘルツからギガヘルツの周波数帯の電波伝搬にとって複屈折媒体であることが近年の研究から明らかになってきた.このため,巨大氷床の内部をレーダで探る研究にとっては,複屈折媒体中での電波の伝搬を適切に記述し,モデル化をすることが不可欠な作業である.これを実現するため,伝搬マトリクスの概念を氷床レーダ波の記述に導入し,定式化を行なった.これにより,レーダ波の伝搬は,氷床に現実に発生する結晶主軸分布の発達とその対称性を考慮した上で評価ができる.本研究では,鉛直方向に伝搬する電波が,氷媒体の誘電率異方性の設定,散乱体の構造,電気伝導度の変化に対して,どのようなふるまいをするかについて評価した.その結果(1)結晶主軸分布の平面内での異方性は,氷床を構成する多結晶のマクロ的な誘電異方性が生じ,複屈折現象を起こす.(2)通常波と異常波の位相が逆転する際には,互いにうち消し合い,レーダ波強度が大きく低下する現象が発生するという基本的なふるまいが確認された.(3)(2)の現象は,電波の周波数および誘電異方性の割合に依存し,これを調査すれば氷床の誘電異方性の強度を遠隔探査できる.(4)一軸対称性の結晶構造をもつ氷床の散乱行列を計算する・ことにより一義的に強い受信電力の異方性を示した.(5)電気伝導度の異方性が,偏波としての電波伝搬に与える影響は実用上小さい.
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