日本の積雪地域全域を対象に,気象官署における降積雪量の長期変動トレンドと,冬期ごとの降積雪量と環境場との関係について,各地点の冬期平均気温の差異に着目した解析を行った.年降雪深および年最大積雪深は,日本海側の地域では冬期平均気温の平年値が3℃程度以上の北陸西部から九州の地点で減少傾向にあり,平年値が高い地点ほど減少率が大きい傾向にある一方,3℃程度以下の北海道から北陸東部の地点では傾向がみられない.太平洋側の地域では,一部の地点のみで減少傾向がある.また,日本海側の地域では年降雪深および年最大積雪深と冬期平均気温および冬季東アジアモンスーン指標(MOI)との相関は,北海道から北陸に向かって冬期平均気温の平年値が高い地点ほど強くなり,山陰から九州に向かって弱くなる一方,北極振動指数(AOI)との相関に地域的な傾向がみられない.太平洋側の地域では,同様に冬期平均気温とMOIとの相関に地域的な傾向がみられる.両地域ともに,冬期ごとの冬期平均気温,MOI,およびAOIの変化に対する年降雪深および年最大積雪深の変化率は,北海道から西方に向かって冬期平均気温の平年値が高い地点ほど大きい傾向にある.