雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
83 巻, 3 号
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  • 千葉 隆弘, イセンコ エフゲニー, 西田 浩平, 齋藤 佳彦, 三浦 里菜, 大槻 政哉
    2021 年 83 巻 3 号 p. 249-258
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/17
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,建築物軒先における雪庇の形成メカニズムを明らかにすることを目的に,パラペット付き陸屋根建築物を対象とし,軒先近傍における雪粒子の挙動と雪庇形成状況との関係を吹雪風洞実験に基づいて検討した.北海道科学大学が所有する自然雪風洞装置を用い,木製のパラペット付き陸屋根試験体を対象に実験を行った.ハイスピードカメラで雪粒子の挙動を撮影し,その映像を用いてPTV 解析を行った.さらに,連続的に吹雪風洞実験を行い,雪庇の再現実験を行った.PTV 解析の結果,パラペットが吹きだまりで埋まっているような,あらかじめ積雪のある状態で雪粒子が風向方向にそのまま移動することによって雪庇が形成・発達する可能性が高いことが明らかとなった.雪庇の再現実験では,風速U が3m/s と小さい条件で試験体パラペット上面に吹きだまりが発生するとともに,軒先から0.15m 程度オーバーハングした雪庇が形成された.これらPTV 解析と雪庇の再現実験との関係を分析した結果,風速が小さいほど雪粒子の空間濃度が大きくなり,パラペット上面で吹きだまりが発生して雪庇が形成・発達する主な要因としては,雪粒子の空間濃度が飽和に達したことであった.
  • 増澤 諭香, 大宮 哲, 大風 翼, 新屋 啓文
    2021 年 83 巻 3 号 p. 259-273
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/17
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,降雪を伴う吹雪の鉛直構造を解明するため,2ヶ月間の野外観測データから平衡状態の吹雪イベントに着目し解析を行った.解析では,粒径400 μm 以上の飛雪粒子を降雪粒子と仮定することで,抽出した吹雪イベントの降雪割合を推定した.その結果,平均風速の鉛直分布は対数則で表されていたが,降雪割合の大きい場合の粗度は同程度の摩擦速度で降雪割合の小さい場合と比較して低下した.また,飛雪流量は降雪割合の小さい場合に高さの増加とともに減少していたが,降雪割合が大きくなるにつれて高さによらずほぼ一様に近づいていった.さらに,飛雪流量の摩擦速度依存性は降雪割合によらず確認されたが,その変化量は降雪割合の増加によって大きくなっていた.飛雪流量を粒径200 μm 以下の地吹雪粒子と降雪粒子に分けたところ,前者は高さの増加とともに減少するのに対し,後者は高さによらずほぼ一様であった.つまり,降雪の有無による飛雪流量の鉛直分布の違いは,飛雪流量への降雪粒子の寄与によって定量的に説明された.
  • 丹治 星河, 稲津 將, 川添 祥, 佐藤 陽祐
    2021 年 83 巻 3 号 p. 275-284
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/17
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,1km 解像度の気象データを用いて,2017/2018年の北海道で発生した吹雪による視程低下を計算し,吹雪発生マップを作成した.また,自己組織化マップ(SOM)を作成して冬季の日本付近における気圧偏差の分布を分類し,北海道で吹雪が発生したときの総観場の特徴を調べた.吹雪発生マップの作成には力学的ダウンスケーリング(DDS)を施した1km 解像度の気象データを,SOM の作成にはJRA-55 の60 年分の平均海面気圧のデータをそれぞれ使用した.作成した吹雪発生マップの結果,石狩平野や日本海側の海岸付近で吹雪が特に多かった.また,SOM による解析の結果,冬季の気圧偏差の分布は大きく分けて高気圧型,南岸低気圧型,西高東低型の3パターンに分類することができた.このうち,北海道で最も吹雪をもたらした気圧パターンは西高東低型であった.
  • 杉浦 幸之助, 大井 聖也, 根本 征樹, 小杉 健二
    2021 年 83 巻 3 号 p. 285-297
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/17
    ジャーナル オープンアクセス
    風が強まると,雪粒子は雪面と衝突・反発・射出(スプラッシュ過程)を繰り返し,吹雪が立体的に発達していくことになる.本研究では,風洞装置を用いて硬雪時のスプラッシュ過程によりどのように風向に直交する水平方向に吹雪が発達するのか検討した.風洞実験の結果,風速が6.0ms−1から8.0ms−1へと増すにつれて,粒子に作用する空気抵抗により,水平面衝突速度は速くなり,角度は風向方向に近づいた.また,水平面反発速度の平均は衝突前の0.66倍であった.個々の粒子の水平面衝突速度に対する反発の比(水平面反発係数)はおよそ0.2から1まで広く分布していた.さらに,これまでの鉛直断面からの観察では捉えることができなかった水平面風向直交方向に大きく反発する粒子が実験的に確認され,このような粒子が水平面風向直交方向への発達を担っているといえる.衝突する際の幾何学的関係から水平面反発角度の分布が説明された.加えて,風速が増すにつれて,鉛直方向と風向直交方向の飛雪流量の割合がわずかに変化していた.同じ吹走距離で比べると風速の増加とともに雪面への衝突回数が少なくなるために風向直交方向の発達が弱かった可能性が示唆された.
  • 松澤 勝, 大宮 哲
    2021 年 83 巻 3 号 p. 299-305
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/17
    ジャーナル オープンアクセス
    著者らは,インターネットで吹雪視程予測の情報提供を行っている.このシステムでは気象庁から配信される毎時の風速,気温,降水強度を基に1 時間ごとの平均的な視程値を推定する.しかし吹雪の時間変動は激しいため,平均的な視程と瞬間的な視程との間の差異は大きい.従って,ドライバーが交通行動の判断を行う上で,この差異に関する知見は重要である.そこで,本研究では,平均的な視程と瞬間視程との関係を調べた.まず,SPC(Snow Particle Counter)を用いて飛雪流量の計測を行い,これらの値を松沢・竹内(2002)の関係式を用いて視程に換算した.そのデータを用いて,時間平均視程Vhと瞬間視程Vi との関係を分析した結果,瞬間視程の最大値は時間平均視程Vhの約30倍,最小値は約0.2 倍という結果が得られた.また,瞬間視程Viを対数変換したlogViの標準偏差σと時間平均値の比を視程変動率Fと定義すると,F=12〜15% という結果が得られた.
  • 竹内 政夫
    2021 年 83 巻 3 号 p. 307-315
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/17
    ジャーナル オープンアクセス
    視界が白一色になり交通に危険をもたらす視界ゼロのホワイトアウトが日常的に使われるようになった.しかしホワイトアウトの定義も実体も曖昧であり,人により受ける語意やイメージの違いは大きい.ホワイトアウトの実体を理解しやすくするため,同じ様に視界が白一色に見える極地で発生するWhiteout と比較した.この二つには気象用語の視程がゼロの共通イメージがある.しかしホワイトアウトは視程が小さくなると発生するが,Whiteout は視程100m 以上でも発生し視程は比較の物差しにはならない.物理的には空中浮遊物の有無という発生メカニズムに違いがある.また吹雪時のホワイトアウトでは雪粒子が可視大であることため,同じ粒径や形状でも眼の近くにあるほど残像の影響も大きくなり視程を低下させてもいる.共通する部分では光と雪粒子の相互作用や広い雪原などの周辺環境が人間の感じ方に影響して発生するなどがある.ホワイトアウトと視程の観測例から,視程計で測定して得られる視程(以下,計測視程とする)は100m を超えても,肉眼で見える最も近い地物までの距離である見かけの視程が0m のホワイトアウトになることがある.ホワイトアウトと感ずるのは人間であり,生理や心理,経験などの個人差を含めたヒューマンファクター,発生状況や環境も影響する.Whiteout もホワイトアウトも,「視界は白一色で見かけの視程(顕在視程)は0m」という点で共通している.
  • 齋藤 佳彦, 大槻 政哉, 西村 浩一, 松澤 勝
    2021 年 83 巻 3 号 p. 317-328
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/17
    ジャーナル オープンアクセス
    雪面上を吹き渡る風によって雪粒子が舞い上げられ移動する吹雪は,極地や山岳地,氷河氷床上の水・エネルギー循環や質量収支から道路や鉄道,建築分野における雪害に至るまで,様々な分野に深く関連する雪氷現象である.各々の分野において吹雪の現象そのものや影響を評価する目的で,長年にわたり,様々な計測や観測,調査が試みられてきた.本稿では,吹雪量や空間密度などの基礎的な計測から,防災・建設分野等の応用分野における調査方法等,吹雪に関する計測,調査方法を解説する.
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