視界が白一色になり交通に危険をもたらす視界ゼロのホワイトアウトが日常的に使われるようになった.しかしホワイトアウトの定義も実体も曖昧であり,人により受ける語意やイメージの違いは大きい.ホワイトアウトの実体を理解しやすくするため,同じ様に視界が白一色に見える極地で発生するWhiteout と比較した.この二つには気象用語の視程がゼロの共通イメージがある.しかしホワイトアウトは視程が小さくなると発生するが,Whiteout は視程100m 以上でも発生し視程は比較の物差しにはならない.物理的には空中浮遊物の有無という発生メカニズムに違いがある.また吹雪時のホワイトアウトでは雪粒子が可視大であることため,同じ粒径や形状でも眼の近くにあるほど残像の影響も大きくなり視程を低下させてもいる.共通する部分では光と雪粒子の相互作用や広い雪原などの周辺環境が人間の感じ方に影響して発生するなどがある.ホワイトアウトと視程の観測例から,視程計で測定して得られる視程(以下,計測視程とする)は100m を超えても,肉眼で見える最も近い地物までの距離である見かけの視程が0m のホワイトアウトになることがある.ホワイトアウトと感ずるのは人間であり,生理や心理,経験などの個人差を含めたヒューマンファクター,発生状況や環境も影響する.Whiteout もホワイトアウトも,「視界は白一色で見かけの視程(顕在視程)は0m」という点で共通している.
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