雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
74 巻, 3 号
選択された号の論文の2件中1~2を表示しています
  • 福井 幸太郎, 飯田 肇
    2012 年 74 巻 3 号 p. 213-222
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    飛騨山脈,剱岳にある小窓雪渓および三ノ窓雪渓で,2011 年春にアイスレーダー観測を行い,厚さ30m以上,長さ900~1200 m に達する日本最大級の長大な氷体の存在を確認した.同年秋に行った高精度GPSを使った流動観測の結果,小窓,三ノ窓両雪渓の氷体では,1 ヶ月間に最大30cm を超える比較的大きな水平方向の流動が観測された.流動観測を行った秋の時期は,融雪末期にあたり,積雪荷重がもっとも小さく,流動速度が1年でもっとも小さい時期にあたると考えられている.このため,小窓, 三ノ窓両雪渓は, 日本では未報告であった1年を通じて連続して流動する, 現存する「氷河」であると考えられる.立山東面の御前沢雪渓では,2009 年秋にアイスレーダー観測を行い,雪渓下流部に厚さ27m , 長さ約400 m の氷体を確認した.2010 年と2011 年の秋に高精度GPS を使って氷体の流動観測を行った結果, 誤差以上の有意な水平方向の流動が観測された. 流動速度は1ヶ月あたり10cm 以下と小さいものの, 2年連続で秋の時期に流動している結果が得られたため, 御前沢雪渓も現存する「氷河」であると考えられる.
  • 菊地 勝弘, 亀田 貴雄, 樋口 敬二, 山下 晃
    2012 年 74 巻 3 号 p. 223-241
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    雪結晶の分類は, Magono and Lee(1966) の気象学的分類(以下MLと略記)が用いられることが多いが,この分類を基本として極域での観測結果を加え,新たに雪結晶のグローバル・スケール分類(略してグローバル分類)を提唱する.この分類は,MLに準じて,雪結晶の特徴的な形状および成長の型による相違に着目して作成した.MLと比較すると,グローバル分類は以下のような特徴がある.MLのN:針状結晶とC:角柱状結晶を統合して新分類では『C:柱状結晶群』とした.また,MLのP:板状結晶のP1:正規六花やP2:変遷六花などを『P:板状結晶群』として,【P1:角板状結晶】,【P2:扇状結晶】などのように,具体的な結晶形がイメージできるように整合性を持たせて整理・統合した.さらに,ML のCP:角柱・板状組合せとS: 側面結晶を統合して『CP:柱状・板状結晶群』とした.MLのN2: 針状結晶組合せやC2: 角柱組合せなどのほか,P:板状結晶やCP:角柱・板状組合せなど,結晶同士の付着・併合したものを,まとめて新たに『A:付着・併合結晶群』として加えた.これまで中谷やMLの分類では対象外であったが,国際雪氷委員会が制定した実用分類(Schaefer, 1951; Mason, 1957; 1971)には含まれている霙,凍雨,雹に凍結雲粒などを加えて,新たに『H:その他の固体降水群』として加えた.その他の大分類の『R:雲粒付結晶群』,『G:初期結晶群』,『I:不定形群』などは一部名称の変更や,全体の整合性を考慮して,大筋では従来の分類を踏襲した.MLの気象学的分類は8大分類,31中分類,81小分類であったが,グローバル分類は8大分類,39中分類,121小分類となった.
feedback
Top