雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
72 巻, 3 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 渡辺 晋生, 大森 陽介, 和気 朋己, 坂井 勝
    2010 年 72 巻 3 号 p. 157-168
    発行日: 2010年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    凍結・融解にさらされる土中の物質循環を考える場合,凍土中の水や氷の量,溶質濃度,熱的性質の変化を評価する必要がある.そこで,サーモTDR(Time Domain Reflectometry)を作成し-20℃から+20℃の範囲で,塩を含む砂とシルトロームの比誘電率,電気伝導度と熱伝導率の測定を試みた.この結果,サーモTDRを用いれば凍土の見かけの熱伝導率や電気伝導度を同時に評価できることが示された.また,凍土の比誘電率は不凍水分量だけでなく氷量によっても異なった.検量式の係数を氷量の関数で与えたところ,比誘電率と不凍水分量との関係をよく表した.測定した熱伝導率を使って,既存の凍土の熱伝導率モデルを比較検討した.また,不凍水分量と熱容量を同時に測定すれば,サーモTDRにより-2℃以下の凍土の全水分量(氷量)も推定できることが示された.サーモTDRの測定精度向上と現場への適用は今後の課題である.
  • 対馬 勝年, 田中 るみ
    2010 年 72 巻 3 号 p. 169-179
    発行日: 2010年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    ワイヤーの熱伝導率λに等しい仮想的水膜(等価水膜)の導入により,復氷過程における水膜内の温度分布,熱流線,水膜厚さなどの新しい解析法を考案した.これはOrnsteinやNyeによるワイヤー内の直線温度分布を等価水膜内にも適用可能にし,等温線を平行直線群とした.等価水膜を実際の厚さに戻した等温線図から水膜内の熱流線が作図され,界面における熱流の屈折が示された.実測の貫入速度と最大駆動圧力,ワイヤーの熱伝導率,太さなどとの関係を水膜厚さに関係づけた解析を可能にした.水膜は従来考えられていたものより一桁厚い結果となった.扁平ワイヤーではワイヤーの貫入姿勢により,ワイヤー前面の水膜厚さが異なり,貫入速度に違いの生ずることが示された.貫入速度の測定から水膜は熱伝導率の大きいワイヤーほど厚くなったが,熱伝導率の大きいアルミニウム,銅,銀の速度が鉄やピアノ線より遅いという新事実が見出された.次に,ワイヤーを水の熱伝導率に等しくおく,等価太さ法を導入し,熱伝導率の異なるワイヤー間の貫入速度の比較などを容易にした.
  • 前野 紀一
    2010 年 72 巻 3 号 p. 181-189
    発行日: 2010年
    公開日: 2022/07/31
    ジャーナル オープンアクセス
    カーリング競技では,重さ約20kgの円盤状のストーンを滑らせ,氷上のハウスにより近づけることを競う.ストーンの底は中央が窪んでおり,氷にはごく狭い面積で接触する.また,氷表面は滑らかでなく,ペブルと呼ばれる無数の細かい突起からなっている.その結果,氷に働く圧力は非常に大きく,ストーンの滑りは,通常の滑らかな摩擦の他に,ペブルが変形・破壊する摩耗の効果を伴う.しかし,これがカーリング競技の難しさと魅力の源であり,同時に氷物性として解決すべき幾つかの課題を提供する.本稿では,ストーンの滑りに関係する,氷の摩擦係数,ペブル,ランニング・バンド,スウィーピングについて簡単に解説し,最後にカーリングの最大の難問「ストーンが曲がる(カールする)のはなぜか]について議論する.カールの物理メカニズムとしてこれまでに提出された「圧力差モデル」,「水膜モデル」,「雪かきモデル」等がいずれも完全ではないことを示したあと,新しい理論である「蒸発摩耗モデル」を紹介する.蒸発摩耗モデルは,これまでどのモデルも説明できなかった,カーリング選手達の経験「カール距離はストーンの回転数にあまり関係しない」を説明する.
feedback
Top