雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
71 巻, 6 号
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  • 上村 靖司, 楠田 翼, 藤野 丈志
    2009 年 71 巻 6 号 p. 445-454
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    適切に設計された融雪装置は,雪国におけるバリアフリー社会の実現に不可欠である.そこで,必 要なサービスを提供するための融雪装置の熱出力を検討した.本論文では,上村・星野(2004)によっ て提案された熱収支に基づく路面残雪モデルにおいて導入された許容残雪時間率φ,設計降雪時間δ の2つの指標に,許容残雪深εというパラメータを加え,これらの3つの指標に応じた装置の必要熱 出力を整理した.その結果,次のことが明らかになった.(1) 国内の代表地点のどこでも 許容残雪 深を0cmから1cmに変えることで,必要熱出力が50Wm-2 ほど低減できる.(2)5cmの残雪を許 容するなら,50Wm-2 以下という非常に小さな熱出力であっても, 降雪時間の90%以上が許容値内 に維持される.(3)設計降雪時間を1h ,許容残雪深0cmという条件が特に大きな熱出力を要求し, 多少なりとも残雪を許容し緩慢な融雪をすれば大幅な熱出力低減が可能となる.
  • 河島 克久, 栗原 靖, 和泉 薫
    2009 年 71 巻 6 号 p. 455-469
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー
    2004年8月10日,新潟県荒沢岳の西本城沢において雪渓が大規模な崩壊を起こし,写真撮影のために雪渓底部に形成された空洞(トンネル)内に入っていた写真愛好家4人が死傷(3人死亡,1人負傷)する災害が発生した.著者らは,このような雪渓崩落災害に関してこれまで学術的な調査研究が全くなされていないことをふまえ,本災害の発生直後に現地調査を実施するとともに,新聞検索によってわが国における過去40年間の雪渓崩落災害を抽出し,その特徴を調べた.その結果,現地調査から,雪渓の崩壊部は面積約220m2,質量約150~230tonと見積もられた.周辺地形の特徴などから,この大規模崩壊は,トンネル上部の雪が片持ち梁構造となり,その固定端(梁の付け根)上端部付近の積雪に引張破壊が生じて発生したものと推定された.また,新聞検索から,わが国では1965年から2004年までの40年間に合計45件の雪渓崩落災害が発生しており,62人の被災者が出ていること,発生件 数は群馬県(谷川山系)と富山県(北アルプス)で多いこと,登山目的の入山者の被災事例が全件数の約70%を占めることなど,この種の災害の特徴が明らかになった.過去40年の災害からみると,2004年の荒沢岳の災害は,死傷者数が最も多い事例の一つであった.
  • グローバルインベントリとアジアインベントリ
    矢吹 裕伯
    2009 年 71 巻 6 号 p. 471-483
    発行日: 2009年
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル オープンアクセス
    氷河インベントリの現状についてまとめた. まず氷河インベントリの歴史的背景とこれまでの経緯について紹介をし,ついで氷河インベントリのデジタル化,衛星画像を用いた氷河インベントリの作成に関して紹介をした.最後にその氷河インベントリの現状と問題点をまとめた.現状の氷河インベトリには① 地球上のすべての氷河が記載されていない, ② 氷河インベントリの基礎として使用される地図,衛星画像の作成・撮影時期に大きな幅がある,③ 氷河の体積を記述する情報が推定に限られる,の3つの問題があることが明らかになった.これらの問題は地球温暖化による氷河変動モニタリング情報の不備になるだけでなく,氷河の海水準変動への寄与を正確に見積もることができなくなる.
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