雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
76 巻, 5 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • 町田 誠, 早川 典生, 町田 敬
    2014 年 76 巻 5 号 p. 333-344
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    わが国で防雪施設が一般的に設置されるようになったのは,いわゆる38豪雪(1962年度豪雪)の時からと言われる.それから50年余りの歳月を経て,防雪施設の規模が,柵高,部材,基礎などについて,大型化してきた様に見えるので,文献,データなどにより,実情を明らかにして,将来像を模索する. 防雪施設の設計指針は1968年を皮切りに次々に整備され,次第に道路防雪施設の設計積雪深は30年再現確率最大積雪深を取るとなってきた.しかし,実際に設置された防雪施設によりその規模の経年変化を見ると,雪崩予防柵の柵高の場合,豪雪年後に飛躍的に大型化した上に,近年は緩やかながらもなお大型化が続いている.さらに仔細に分析すると,建設初期の1960年代から1980年代初頭にかけては緩やかな増加傾向を示した後,1980年代に連発した豪雪年を機に更なる増加傾向を示すが,1990年代以降の増加傾向は,30年再現確率最大積雪深を設計積雪深とする指針の確立に沿うものと見られる.雪崩防護柵も豪雪後の1980年代から1990年代中頃にかけて大型化が顕著である. このような防雪施設の大型化は,さらに部材や基礎の大型化に至った関連性を論じ,結果として山の自然環境(景観)を損ねている事を示唆した.この点に関してはフランスとスイスでの防災対策を紹介し,我が国においても参考となる点が多い事を指摘した.
  • 直井 和子, 亀田 貴雄, 橘井 潤, 樋口 敬二
    2014 年 76 巻 5 号 p. 345-353
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    2011年1月に札幌市内で雪まりもが観察されたことから,同様の観察事例が北海道内で多くあると考え,2012年12月から2013年3月にかけて「雪まりもの写真を集めるキャンペーン」を北海道新聞社が実施した.その結果,読者から42枚の写真が集まったが,そこには雪まりもに加えて,他の5種の積雪の造形美(雪だま,雪まくり,雪まくり(自動車のフロントガラス),雪ひも,渦巻き雪ひも)の写真があった.本論文ではこれらの写真の中で代表的なものを紹介する.また,積雪の造形美42例の撮影地に最も近いアメダス観測点の気象データを用いて,積雪の造形美が生成された気象条件を推定し報告する.
  • 東海林 明雄
    2014 年 76 巻 5 号 p. 355-363
    発行日: 2014年
    公開日: 2023/03/01
    ジャーナル オープンアクセス
    結氷湖面や池の氷面に降雪後,放射状氷紋,同心氷紋,懸濁氷紋と呼ぶ3種類の氷紋が現れる.これらの氷紋の形成メカニズムの研究は20世紀の初頭以来,世界中で行われ,多数の論文が発表されてきていたが,何れも推測された根拠に基づく理論ばかりで,確実なことは解っていなかった.筆者は結氷湖面における観測と,その結果に基づく結氷湖面と低温室での氷紋人工生成実験により,その形成の基本原理を解明した.つまり,氷紋は結氷面上に積雪がある時に氷に孔があき,氷の下の水が噴出することによって形成されるのである.放射状氷紋は,氷板上の積雪中を噴出水が雪を融かし,ヒトデ状または蜘蛛ヒトデ状の水路を作りながら拡散する時に形成される.同心円氷紋は,放射状氷紋のヒトデ状模様に多重の同心円が積み重なってできる氷紋で,この同心円は積雪板の陥没によってできる.懸濁氷紋の形成原理は放射状氷紋と同じであるが,噴出水が懸濁粒子を含むことが生成条件である.これらの発見は,それまでに一世紀近く世界中で続いていた論争への解答となった.
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