雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
74 巻, 1 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
  • -鏡面冷却式露点計による湿度測定に基づく結果-
    村井 昭夫, 亀田 貴雄, 高橋 修平, 皆巳 幸也
    2012 年 74 巻 1 号 p. 3-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    対流型の人工雪結晶生成装置内の結晶近傍に小型センサタイプの光学式鏡面冷却式露点計を設置して-4℃~ -40℃の温度範囲で約200 回の人工雪結晶生成実験を行い, 結晶生成時の温度および湿度を測定し,測定結果を基に雪結晶の生成条件(気温, 湿度)と結晶の形状についてのダイヤグラムを作成した.実験の結果,以下の事が確かめられた.1 ) 結晶はおおむね水飽和から水飽和の間の湿度条件で生成する.2 ) 結晶生成時の湿度が低いときには温度帯によらず角柱結晶あるいは厚角板結晶になり, 湿度が高くなるにつれてその温度特有の結晶形が現れる. 特に-35 ℃以下で,105 %を超える高湿度のもとでは多結晶を含む多様な形状の結晶が生成する.3 )水飽和を下回る未飽和の湿度条件でも雪結晶が成長することがあった. これは雪結晶成長時に周囲で浮遊している微小水滴がその成長に寄与していることが考えられる.4 )針状結晶,樹枝状結晶,および-30 ℃以上での交差角板結晶では湿度と成長速度には明瞭な関係が見られるが,扇形結晶・角板結晶および-30 ℃以下での交差角板結晶では成長速度は湿度によらずほぼ一定となる傾向がある.
  • 栗原 靖, 河島 克久, 和泉 薫
    2012 年 74 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    2004 年8月1 日に荒沢岳(新潟県)において4名が死傷する雪渓崩落災害が発生した.災害直後に行われた現地調査から,雪渓の大規模崩壊は,融雪の進行に伴い雪渓底部に形成されたトンネルが片持ち梁構造となり, その固定端上部の積雪に引張破壊が生じて発生すると推定された.そこで,著者らは雪渓崩落災害の防止対策の確立に向けて, 低温室において湿潤高密度積雪を用いた引張破壊実験を行い,引張破壊強度と密度・含水率との関係を調べた.本実験で用いた雪試料は濡れ密度510 ~855kg m-3 ,重量含水率0 ~16.1% である.実験結果から,湿潤高密度積雪の引張破壊強度は,密度のみならず含水率にも依存することが示され, 含水率一定のもとでは密度が大きいほど, 密度一定のもとでは含水率が小さいほど引張破壊強度は大きいことがわかった. また, 本実験で得られた含水率依存性を乾き雪の引張破壊強度を測定した既往研究の成果に加味することで, 密度と含水率を考慮した湿潤高密度積雪の引張破壊強度の推定式を作成した. この推定式は実験結果を良好に再現しており, 密度と含水率が与えられれば湿潤高密度積雪の引張破壊強度を推定できることが示された.
  • 前野 紀一, 高橋 修平, 佐藤 篤司, 小南 靖弘, 小西 啓之, 大宮 哲
    2012 年 74 巻 1 号 p. 33-45
    発行日: 2012年
    公開日: 2022/09/03
    ジャーナル オープンアクセス
    ムペンバ現象(湯と水凍結逆転現象)の検証実験が日本雪氷学会会員によりそれぞれの大学, 研究機関で独立に実施された. それぞれの検証実験において, ムペンバ現象は確かに起こることが観察された. しかし, 同じ初期温度と環境で実験を繰り返しても完全な再現は難しかった. 再現が困難なのは, 湯と水の初期温度を固定しても, 冷却に関与する熱伝導, 蒸発, 拡散, 対流等の細かな物理メカニズムは,人為的にコントロールできないため,実験毎に異なる結果となるためと考えられる. なお,過冷却が起こると, ムペンバ現象が起こったようにみえることがあるが, 過冷却は偶発的で規則性がない.
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