積雪の有効熱伝導率におよぼす微細構造の影響を調べるために等大氷球の集合よりなるモデル積雪を考えた.積雪中の熱流を氷球の結合部を通る熱,水蒸気の昇華・凝結に伴う潜熱による熱流,空隙を通る熱の3通りの和とし,熱抵抗をそれぞれ求めて計算した.
その結果,密度および結合部/粒子径の比が大きくなると,氷球の結合部を通る伝導が大きくなり全体の熱伝導率に占める割合が増大することを示した.また卓越熱伝導を示すダイヤグラムを作成し,結合部と粒子径の比が小さい場合に水蒸気による寄与が卓越すること,温度の低下と共にこの領域が狭くなって行くことを示した.
結合部/粒子径の比が小さいときは温度が変わってもほとんど伝導率に違いがなく,比が大きいと温度の低い方が大きな熱伝導率を示すことがわかった.すなわち,積雪の熱伝導率は氷粒子間の結合の太さ,密度,温度等により卓越メカニズムが代わること,またその結果,積雪の熱伝導率は積雪の密度のみならず微細構造すなわち氷粒子間の結合の太さに強く支配されていることを明らかにした.
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