滋賀県東近江市にある「西堀榮三郎記念 探検の殿堂」の氷貯蔵庫の壁に,全体が7cm を超える巨大霜結晶が成長していることが1998 年に判明し,話題となったが,その後, 観察, 測定等が進められ,霜結晶の形態と成長について, 次のような成果が挙げられた. 霜結晶は氷貯蔵庫内のほとんど風のない所でゆっくり成長し,1辺が2cm 程度の巨大霜結晶は2ヶ月近くかかって成長する. 霜結晶にはコップ型, 針状, 角柱, 角板の結晶形があり, それぞれが成長する温度範囲は中谷宇吉郎, 小林禎作による人工雪の実験結果と近い値であった. 結晶の中で特徴的なのは, コップ型であり, 六角形の巻き込み構造(Scroll form) が発達しており,巻き込みの回数は時間とともに増加する過程などが観察された. 同じようなコップ型の巨大霜結晶はグリーンランド, 南極のクレバスにおいて観察されている.一方, 氷貯蔵庫内に成長した巨大霜結晶のレプリカを7 ~8 % の溶液によって作成することに成功し,研究大会で展示して奸評を得た.今後の研究課題としては,実験装置内で巨大霜結晶を成長させ,巻き込み構造の成長過程を解明することが挙げられる.
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