2014年2月,関東甲信地方では大雪となり,各地で通常は雪崩の発生しにくい樹林内で雪崩が発生した.樹林内で雪崩が発生するためには,積雪が樹木の周辺で破壊しすり抜けていく必要がある.このときの降雪状況を調べたところ,山梨県では,2月14日から15日の期間,平均降雪強度4.0cm h
−1の降雪が約30時間継続し,降雪深は100cmを超えた.この降雪期間の平均気温と平均降雪強度から斜面積雪の安定度と硬度を推定して,北海道で調査された雪崩予防柵の柵面をすり抜けて発生する雪崩の条件と比較したところ,樹林からの雪崩発生事例のある山梨県ではこの発生条件に近い状況であった.山梨県以外でも,樹林からの雪崩事例のある群馬県北部や長野県東部の標高の高い地域では,柵面をすり抜ける雪崩の発生条件に近い状況であった.これらの地域では,今回の大雪において,樹林内で雪崩が発生する状況になっていた可能性がある.
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