皮膚筋炎では悪性腫瘍の合併が知られており,筋炎の筋症状が咽頭や頸部に及ぶと嚥下障害が生じる。今回我々は嚥下障害と早期胃癌を合併した皮膚筋炎の1例を経験したので報告する。【症例】70歳代,女性。平成27年7月より顔面に紅斑が出現し,9月末より頭部,四肢体幹に拡大,筋肉痛を自覚した。その後四肢脱力感が出現し,著明な全身倦怠感,歩行困難があり10月末に入院した。両眼瞼に浮腫性紅斑,手指関節背側に角化性紅斑と爪囲紅斑がみられた。筋把握痛があり,頸部と四肢近位筋優位に筋力低下を認めた。血液検査で筋酵素の上昇があり皮膚筋炎と診断した。PSL 50mg/日内服を開始し筋症状と皮膚症状の改善がみられた。入院後嚥下障害が出現し,遷延したため IVIG を1ヶ月毎に3回施行したところ,嚥下機能が回復した。また悪性腫瘍の検索で早期胃癌が発見された。筋炎特異的自己抗体は抗 TIF1 抗体が陽性であった。【結論と考察】ステロイド抵抗性の嚥下障害に IVIG は試みる価値がある。嚥下障害を伴った皮膚筋炎では悪性腫瘍合併率が高く注意が必要である。筋炎特異的自己抗体は病態の把握や治療方針の決定に有用である。(皮膚の科学,15: 345-350, 2016)
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