ファルマシア
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最新号
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目次
  • 2024 年 60 巻 4 号 p. 264-265
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    ミニ特集:プロセス化学の最前線
    ミニ特集にあたって:プロセス化学は,品質の良い医薬品を迅速に患者さんのもとへ届けるために経済性と効率性を極限まで磨き上げる有機合成化学である.2002年に塩入先生,富岡先生を中心に日本プロセス化学会が発足し,我が国でも従来に比べて企業間や企業とアカデミアの情報交換が活発に行われるようになってきた.近年,医薬品の薬効成分の多様性と複雑性が拡大しており,プロセス化学研究の重要性はますます高まっている.本ミニ特集では,それぞれの企業研究者から最新のプロセス化学研究について実例を示しつつ解説していただいた.
    表紙の説明:60巻4号では,石川県加賀平野の内陸部に位置する白山市鶴来本町の「コメヤ薬局本店」をとりあげる.約400年前に創業し,酒屋から始まった長い歴史を持つ.加賀藩歴代の藩主や子息がたびたび訪れている.薬箪笥,和漢生薬,天秤ばかり,薬袋など,藩政期から明治時代にかけての薬局の歴史を知ることができる資料が薬局の一角に展示されている.
オピニオン
Editor's Eye
インタビュー
ミニ特集 最前線
  • E7130の全合成における鍵反応での事例
    福山 尚
    2024 年 60 巻 4 号 p. 277-282
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    プロセス化学における製造処方の構築において、プロセスを理解するために必要な着眼点の例を紹介している。事例として、ハリコンドリン類の全合成研究を起点として創出されたE7130の合成における重要工程である左右の中間体を結合させるケトンカップリングを取り上げた。本稿では、触媒の調製法、分解要因の特定、反応阻害要因の特定、反応構成の最適化、トラブルの対処法、後処理法の設定に関する事例を紹介している。
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 最前線
ミニ特集 セミナー
ミニ特集 セミナー
最前線
セミナー
承認薬の一覧
  • 新薬紹介委員会
    2024 年 60 巻 4 号 p. 325
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では厚生労働省が新たに承認した新有効成分含有など新規性の高い医薬品について,資料として掲載します.表1は,当該医薬品について販売名,申請会社名,薬効分類を一覧としました.
    本稿は,厚生労働省医薬局医薬品審査管理課より各都道府県薬務主管課あてに通知される“新医薬品として承認された医薬品について”等を基に作成しています.今回は,令和6年1月18日付分の情報より引用掲載しています.また,次号以降の「承認薬インフォメーション」欄で一般名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果などを表示するとともに,「新薬のプロフィル」欄において詳しく解説しますので,そちらも併せて参照して下さい.
    なお,当該医薬品に関する詳細な情報は,医薬品医療機器総合機構のホームページ→「医療用医薬品」→「医療用医薬品 情報検索」(https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/)より検索できます.
承認薬インフォメーション
  • 新薬紹介委員会
    2024 年 60 巻 4 号 p. 326-327
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    本稿では既に「承認薬の一覧」に掲載された新有効成分含有医薬品など新規性の高い医薬品について,各販売会社から提供していただいた情報を一般名,市販製剤名,販売会社名,有効成分または本質および化学構造,効能・効果を一覧として掲載しています.
    今回は,59巻12号,60巻2号「承認薬の一覧」に掲載した当該医薬品について,表解しています.
    なお,「新薬のプロフィル」欄においても詳解しますので,そちらも併せてご参照下さい.
新薬のプロフィル
  • 德永 紳
    2024 年 60 巻 4 号 p. 328-329
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    慢性腎臓病の進行によってリンの排泄能が低下し,高リン血症を発症する.高リン血症は,透析患者の生命予後に大きな影響を与えることが知られている.高リン血症の治療は,食事指導によるリン摂取制限,透析によるリンの除去,消化管からのリン吸収を抑制するリン吸着薬の投与が行われているが,血清リン濃度の管理状況は大きく改善しておらず,既存のリン吸着薬とは異なる作用機序を有する高リン血症治療薬の開発が期待された.
    本剤は,Na/H交換輸送体3(NHE3)阻害薬である.既存薬とは異なる作用機序を介して腸管からのリン吸収を阻害することによる高リン血症治療の実現,および患者の服薬負荷を考慮した治療薬の開発を目指した.1日2回食直前投与による血液透析(HD)および腹膜透析(PD)施行中の高リン血症患者を対象とした試験等を実施し,2023年9月に「透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」を効能又は効果として製造販売承認を取得した.
新薬のプロフィル
  • デヴェロー 斎恵
    2024 年 60 巻 4 号 p. 330-331
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    血友病とは,血液凝固第Ⅷ因子(FVIII)あるいは第Ⅸ因子(FIX)の量的・質的異常による先天性出血性疾患であり,FVIII欠乏症が血友病A,FIX欠乏症が血友病Bである.コンシズマブはファースト・イン・クラスとなる組織因子経路インヒビター(TFPI)に対する抗体であり,すべての血友病サブタイプにおいて,皮下投与による予防治療で使用することを目的としたモノクローナル抗体である.インヒビター保有血友病患者を対象としたNN-7415-4311試験をはじめとする国際共同第Ⅲ相試験等1, 2)の成績に基づき,2023年9月に「血液凝固第Ⅷ因子又は第Ⅸ因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病患者における出血傾向の抑制」の効能または効果で承認された.
最終講義
留学体験記 世界の薬学現場から
  • ハーバード大学,UCLA
    松元 真央
    2024 年 60 巻 4 号 p. 334-335
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    筆者は薬系技官として米国に留学し、ボストンのハーバード公衆衛生大学院で公衆衛生学修士号を取得した後、半年間をロサンゼルスのUCLAで客員研究員として過ごした。帰国後は厚生労働省に戻り、現在はICHなどの国際薬事規制調和活動を担当している。留学中はパンデミックに見舞われるなど様々な試練もあったが、世界中の優秀な学生・研究者と交流し刺激を受け、大きく成長することができた。留学に関心のある読者に少しでも参考になれば幸いである。
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
長井記念薬学奨励支援事業採用者からのメッセージ
トピックス
  • 髙野 秀明
    2024 年 60 巻 4 号 p. 340
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    Ni触媒を用いたアルキンの二官能基化反応は,単純なアルケンを原料として官能基化されたsp3炭素骨格を構築できる極めて有用な反応である.現在までに,Ni触媒を用いた1, 2-二官能基化反応やチェーンウォーキングを用いる1, n-二官能基化反応が数多く報告されている.一方,1, 1-二官能基化反応に関しては,炭素原子を導入する反応がいくつか報告されているが,2つのヘテロ原子をアルケンの同一炭素上に導入する1,1-二官能基化反応はほとんど報告されていない.今回TalaveraらはNi触媒を用いたアルケンの1, 1-アミノホウ素化反応により,単純なアルケンからα-アミノ酸の生物学的等価体であるα-アミノホウ酸を合成することに成功したので,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Maity S. et al., Nat. Catal., 2, 756–762(2019).
    2) Ye, Y. et al., Org. Biomol. Chem., 20, 9255–9271(2022).
    3) Talavera L. et al., ACS Catal., 13, 5538–5543(2023).
  • 土屋 圭輔
    2024 年 60 巻 4 号 p. 341
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    タンパク質間相互作用(PPI)は生体内の様々な機能を調節しており,異常なPPIは,がんや神経変性疾患などの多くの疾患の発症に関与している.このようなPPIを制御できる分子設計の戦略の1つとして,ペプチドフォルダマー(フォルダマー:規則的な一定の二次または三次構造をとる人工オリゴマー分子)の活用が知られており,新たな治療薬・診断薬として期待されている.しかしながら,水溶性,官能基の許容性,固相合成への適用,高いPPI制御活性などを兼ね備えたペプチドフォルダマーの報告例は少ない.これまでにTonaliらは,アミノ酸のα位炭素を窒素原子に置換したアザアミノ酸を活用し,連続する2つのジアザアミノ酸(ジアザユニット),およびα-アミノ酸からなるシュードヘキサペプチドにおいて,ペプチドの折り畳みを促進することで,310-ヘリックス,あるいはβ-ターン構造を形成することを明らかにしている.本稿では,同グループによる,ペプチド配列へのジアザユニットの導入数,導入位置の検証結果とそのジアザペプチドフォルダマーを用いたPPI制御事例について紹介する
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Tonali N. et al., Org. Biomol. Chem., 18, 3452-3458(2020).
    2) Shi C. et al., J. Med. Chem., 66, 12005-12017(2023).
    3) Cho P. Y. et al., ACS Chem. Neurosci., 5, 542-551(2014).
  • 林 謙吾
    2024 年 60 巻 4 号 p. 342
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    エンジインは,9もしくは10員環内に二重結合と,それを挟むように2つの三重結合を有する特徴的な構造を持つ化合物の総称であり,微生物によって生産される.生体内において,エンジインは,DNAのマイナーグルーブに結合し,生体内の反応により芳香環化され,それに伴って発生するビラジカルがDNAを切断することで,強力な抗菌および抗腫瘍活性を示す.これまで,数十種類のエンジインおよび芳香環化体が単離されているが,微生物ゲノムの解析からは,より多くのエンジイン生合成遺伝子クラスターの存在が示唆されている.しかしながら,多くのエンジイン生合成遺伝子は,通常の培養条件において発現量が低い休眠遺伝子であるため,これまでのエンジインの単離・同定には大スケールでの培養が必要であった.近年,化合物ライブラリーから見いだされたエリシター(生体反応を活性化する物質)が,休眠遺伝子の発現を活性化し,二次代謝産物の生産を誘導することが報告され,微量天然物の大量生産技術として注目されている.本稿では,エンジイン生産誘導エリシターを探索するため,蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer: FRET)を利用したハイスループットスクリーニング系を構築し,エンジイン生産誘導エリシターの探索および,新規エンジインの単離・同定を行ったHanらの研究を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Seyedsayamdost M. R., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 111, 7266–7271(2014).
    2) Han E. J. et al., ACS Chem. Biol., 18, 1854–1862(2023).
    3) Biggins J. B. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 97, 13537–13542(2000).
  • 爲本 雄太
    2024 年 60 巻 4 号 p. 343
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    核酸医薬の治療標的への送達にはドラッグデリバリーシステム(DDS)が必須であり,核酸医薬のDDSキャリアとして脂質ナノ粒子(LNP)が汎用されている.SARS-CoV-2に対するmRNAワクチンの送達にもLNPが用いられており,LNPの有用性が改めて認識された.LNPの使命は,核酸医薬を無事に目的地まで送り届けることである.そのために,細胞内で加水分解されるpH応答性脂質を含むLNPが開発され,脂質組成の調節によりLNPを特定の臓器に標的化する手法が開発されてきた.一方で,LNPの構造の違いが及ぼす核酸送達への影響についてはほとんど報告がなかった.本稿では,in vitroにおいてLNPのナノ構造が,エンドソーム脱出と,RNAの細胞質への送達を制御することを明らかにしたZhengらの報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Maier M. A. et al., Mol. Ther., 21, 1570–1578(2013).
    2) Cheng Q. et al., Nat. Nanotechnol., 15, 313–320(2020).
    3) Zheng L. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A., 120, e2301067120(2023).
  • 宇津 盛司
    2024 年 60 巻 4 号 p. 344
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    間葉系幹細胞(MSC)は免疫調節作用や創傷治癒効果,抗菌作用など複数の薬理作用を持ち,MSCの移植療法は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)をはじめとするアンメットニーズの高い疾患の新たな治療法として注目されている.しかしMSC移植療法には多量のMSCの準備に加え凍結保存されているMSCを融解・培養する工程が必要など,実臨床使用における課題が多くある.一方,MSCが産生する細胞外小胞(EV)はmiRNAなどの核酸やタンパク質,脂質などを含み,MSC移植療法の有効成分本体として考えられている.実際にMSC由来EV(MSC-EV)はLPS誘発マウス肺障害モデルに対して静脈内投与することで症状を抑制したという報告などがあり,ARDS患者に対する臨床試験も国内外で複数実施され,その薬効と安全性が確認されつつある.またEVは凍結しなくとも懸濁液状態で安定であるため,ネブライザーを用いたエアロゾル化による吸入剤化が可能という利点がある.本稿では,MSC-EVのネブライザー噴霧によるARDSモデルに対する肺局所投与の薬効を評価した文献を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Silva J. D. et al., Eur. Respir. J., 58, 2002978(2021).
    2) Xiaoli Z. et al., Front. Immunol., 14, 1244930(2023)
    3) Gonzalez H. et al., Stem Cell Res. Ther., 14, 151(2023).
  • 皆川 栄子
    2024 年 60 巻 4 号 p. 345
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    α-シヌクレイノパチーはα-シヌクレイン(α-Syn)タンパク質の凝集・蓄積を特徴とする神経変性疾患の総称であり,α-Synが神経細胞に蓄積するレビー小体病(LBD;パーキンソン病(PD)およびレビー小体型認知症(DLB))とオリゴデンドロサイトに蓄積する多系統萎縮症(MSA)に大別される.両者の臨床経過は最終的には大きく異なるが,病初期にはLBDとMSAの鑑別が難しいことも多い.また,LBDやMSA特有の臨床症状が顕在化する10~20年以上前からα-Synの蓄積が始まること,この前駆期に特有の症状の1つにレム睡眠行動障害(RBD)が存在することも分かってきた.最近我が国のOkuzumiらにより,従来プリオン病の診断に用いられてきた異常タンパク質高感度増幅法(real-time quaking-induced conversion: RT-QuIC法)と免疫沈降法(IP法)を組み合わせた血清中の異常構造α-Syn検出法が開発され,α-シヌクレイノパチーの診断や鑑別における有用性が報告されたため,本稿で紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Atarashi R. et al., Nat. Med., 17, 175–178 (2011).
    2) Okuzumi A. et al., Nat. Med., 29, 1448–1455(2023).
    3) Yoo D. et al., Parkinsonism. Relat. Disord., 104, 99–109(2022).
    4) Siderowf A. et al., Lancet Neurol., 22, 407–417(2023).
    5) Sheres S et al., Nature, 621, 701–710(2023).
  • 池田 寛菜
    2024 年 60 巻 4 号 p. 346
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    芽胞形成性のディフィシル菌(Clostridioides difficile: CD)は,日和見性の院内下痢症を引き起こす.この感染症は,抗生物質による治療後も15〜35%と高い確率で再発することが問題となっている.その一因として,CDがバイオフィルム(biofilm: BF)を形成することで消化管内での残存性を高めることが挙げられる.CDのBF形成は,最小発育阻止濃度以下の抗生物質や,二次胆汁酸塩によって誘発されることが知られているが,近年他の因子の関与も考えられている.その具体例として今回焦点をあてるのがコハク酸である.腸内には,BacteroidesNegativicutesなどの腸内細菌による代謝産物としてコハク酸が存在し,細菌感染症に対する免疫応答の調整に潜在的に関わっているとされる.腸内での高濃度のコハク酸は腸管細胞や他の細菌に対して有毒であるが,通常はCDを含む細菌種がコハク酸を生育に用いることで低濃度に保たれている.しかし,炎症性腸疾患や抗生物質投与によって腸内細菌叢の多様性が低下することで,コハク酸産生が上昇し,腸内コハク酸の高濃度化を招く場合がある.こうした状況下でコハク酸がCDに与える影響については,上記の栄養源としての利用以外はほとんど知られていなかった.本稿ではこの点に関し,コハク酸が腸内シグナルとしてCDのBF形成を誘発することを示した報告を紹介する.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Auria E. et al., Biofilm, 5, 100125(2023).
    2) Røder H. L. et al., NPJ Biofilms Microbiomes, 7, 78(2021).
    3) Kasagaki S. et al., Curr. Res. Microb. Sci., 3, 100130(2022).
    4) Miyaue S. et al., Front. Microbiol., 9, 1396(2018).
  • 吉田 拓弥
    2024 年 60 巻 4 号 p. 347
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)は心血管疾患の独立したリスク要因である.冠動脈石灰化(coronary artery calcification: CAC)はCKD進行により増加し,CKDにおける心血管イベントのリスク増加と関連する.よって,CAC進行を抑制することがCKD患者の心血管死亡を減少させる可能性が考えられる.マグネシウム(Mg)投与は,基礎的知見,臨床的知見の双方より,血管石灰化を防止する可能性が示されている.今回,透析未導入のCKD患者において,Mgの経口投与がCAC進行を遅延させるか否かを検証すべく,推定糸球体ろ過量(estimated glomerular filtration rate: eGFR)15〜45mL/min/1.73mの症例148例を対象に,二重盲検対プラセボ多施設共同臨床研究(MAGiCAL-CKD)を行った研究を紹介する.プライマリーエンドポイントは試験開始52週におけるCACスコアとし,CACスコアは,非造影下での心電図ゲートCTスキャンを用いて,アガストン法により算出された.
    なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.
    1) Chen J. et al., JAMA Cardiol., 2, 635-643(2017).
    2) Bressendorff I. et al., J. Am. Soc. Nephrol., 34, 886-894(2023).
    3) Sakaguchi Y. et al., J. Am. Soc. Nephrol., 30, 1073-1085(2019).
    4) Sakaguchi Y. et al., Kidney Int., 85, 174-181(2014).
会議派遣報告
紹介
追悼
  • 大塚 雅巳
    2024 年 60 巻 4 号 p. 356
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル 認証あり
    恩師大野雅二先生におかれましては,昨年12月6日にご逝去されました.衷心よりお悔み申し上げます.
    大野先生は北海道大学で杉野目晴貞教授,正宗直教授に,米国イリノイ大学,ハーバード大学でE. J. Corey教授に師事され,有機化学者としての強固な基盤を確立されました.帰国後アカデミアと企業の両分野で活躍され,大きな足跡を残されました.
    1977年,東京大学薬学部教授に着任された大野先生から私たちが学んだ最も大切なことは,研究における「コンセプト」だったと思います.すなわち,合成しようとする分子構造のなかに対称要素を見いだし,酵素を試薬のように用いて不斉を構築する“symmetrization-asymmetrization concept”の考え方を創始され,β-ラクタム化合物,ヌクレオシド誘導体をはじめとする各種生理活性物質の合成を先駆的に展開されました.「コンセプト」という言葉は,当時の研究室で流行語のようになりました.また微生物化学研究所との共同研究を推進され,ブレオマイシン,ネガマイシンなど同研究所で見いだされた多彩な構造を持つ微生物二次代謝産物の合成研究に注力されました.こうした研究においては「深は新」となることの必然性を説かれ,目を開かされました.
    先生は人間として大きなものをお持ちでした.大学を定年退官された先生に同窓会などでお会いすると,私のような凡人が日常の些事に取りまぎれて忘れがちになっていた何か途方もないものが目の前に蘇ってくるような心持ちがしました.
    大野先生は鰻が好物で,10月27日のお誕生日には門下生で上等な鰻をお贈りするのが近年のしきたりになっていましたが,先生は昨年のお誕生日の鰻を味わわれて旅立たれました.大野先生,どうぞ安らかにお眠りください.
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