トキソプラズマ不顕性感染に対するSabin-Fcldmanの色素試験(DT)および花木ら(1964,1969)2~3)の血球凝集反応(HAtest)の信頼性を明らかにする目的で,人,犬,猫および豚について両血清反応を行ない,トキソプラズマの分離成績と比較検討した.これらの血清反応のうち,DTは原虫分離成績と良く一致し,不顕性感染の診断に最も信頼性が高く,ついでHAtcst-2(血清>,HAtest-1(枦紙法>の順であった.花木らは′256倍陽性をHAtcst-1における陽性限界と定めている.しかしながら,得られた成績よりすると,不顕性感染例をもれなく摘発するためには,HAtest-1,HAtcst一2ともに,64倍陽性を意義ある抗体価とみなすべきものと考えられた.動物種との関係をみると,人および犬では,DT陰性のものから本原虫が検出されることはなかったが,陽性のものからの検出率は低く,人で12例中2例,犬で24例中11例から,本原虫が分離されるとどまった.これに対し,DT陽性豚の全例(4/4)および陽性猫のほぼ全例(25/27)より本原虫が分離された.また,本原虫の分離された猫および豚の各1例は,DT陰性であった.HAtestは猫および豚の不顕性感染診断に実用性を有するものと認められ,HAtest陽性猫のほぼ全例,豚の57(HAtest-1)~30%(HAtcst-2)から本原虫が分離された.人および犬についてのHAtestは,さらに検討を要するもの考えられた.
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