本稿ではJAXAとジャムコが研究開発しているバリアフリーラバトリーを紹介する.現行の航空機のバリアフリーラバトリーは車椅子利用者が介助者と利用することを想定しておらず,地上や鉄道のトイレと比べて十分なアクセシビリティがあるとは言い難い.提案する「メタモルフィック・ラバトリー」は,機内通路の空間を一時的に使うことで,座席数を減らすことなく空間を拡張できる.本拡張により介助スペースが便座周辺に生まれ,今までトイレ利用が困難だった全介助が必要な車椅子利用者であっても飛行中にトイレを利用できるようになる.さらに地上のバリアフリートイレに匹敵する設備や多目的空間の創出により,車椅子利用者のみならず乳幼児連れ,発達障害児,オストメイトといった多くの乗客のニーズに対応したユニバーサルなデザインとなっている.展示会出展やデザインアワード受賞を通して当該ラバトリーに対する共感の輪が広がり,社会から高い評価を得られた.
2020年に発足したModel-Based Aviation development Consortium(MBAC)は,国内航空機業界におけるModel Based System Engineering(MBSE)/Model Based Design(MBD)の普及と標準化を目的に,これまで11個のワーキング・グループ(WG)に分かれて活動してきた.本稿では,2023〜2024年度に活動を終了した5つのWGについて紹介する.レポート標準化WGは,モデルやシミュレーション結果から自動的にドキュメントを生成する仕組みを検討し,Simulink Report GeneratorTM用テンプレートを作成した.開発プロセス課題検討WGは,モデルを前提とせず開発プロセス全体の課題やあるべき姿を整理し,今後のMBAC活動の指針を提案した.標準化調査WGは,国内外の標準化団体の動向を調査し,MBACとして整備すべき標準類や優先順位を整理した.DO-331・モデル検証WGでは,DO-331ガイドライン(RTCA: DO-331: Model-Based Development and Verification Supplement to DO-178C and DO-178, 2012)に準拠したソフトウェア開発プロセスを検討して解説書やサンプルモデルを作成した.MBD導入効果事例調査WGは,企業のMBD導入事例や課題を調査・分析し,事例集を作成する活動を実施した.(Simulink Report GeneratorTMはThe MathWorks, Inc.の登録商標)