日本化学会誌(化学と工業化学)
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1995 巻, 4 号
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  • 高濱 孝一, 岸本 隆, 横山 勝, 平尾 正三
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 251-256
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    シリカ-チタニアゾル粒子をNa-モンモリロナイト層間に挿入し,粘土層間架橋多孔体を合成した。この架橋多孔体を加熱乾燥及び超臨界乾燥の二通りの方法で乾燥し,断熱性能と構造の関係について検討した.加熱乾燥した場合,静止空気以下の熱伝導率をもつ多孔体にはならなかったが,超臨界乾燥した場合,静止空気以下の熱伝導率を示す多孔体が得られた.加熱乾燥試料と超臨界乾燥試料とも空気の平均自由行程以下の細孔を持つため,空気部の熱伝導率は静止空気の熱伝導率よりも小さい.加熱乾燥試料と超臨界乾燥試の熱伝導率の差は,固体部の熱伝導率の差である.超臨界乾燥した場合,ケイ酸塩層同士がカードハウス構造を形成し,固体部の接触面積を減らし,固体部の熱伝導率が小さくなったと考えられる.また,超臨界乾燥試料において,今回検討した範囲では,ゾルの添加量が多いほど熱伝導率が低かった.これはカードハウス構造の形成が助長されることにより,固体部の接触面積が減少したためと考える.
  • 篠田 清徳, 宮谷 大作, 中村 忠, 紫垣 由城, 安田 賢生
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 257-260
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    化学的に極めて安定なクロロフルオロカーボン(CFCs)がエタノールの存在下,塩化鉄(皿)を活性炭に担持した触媒上で,温和な反応条件でも容易にCOおよびCO2に分解することを見いだした・活性炭に含浸法でハロゲン化金属を担持した触媒を用いて,メタノールの存在で1,1,2-トリクロロトリフルオロエタソ(CFC-113)の接触分解を検討した結果では塩化パラジウム(II),フッ化鉄(III)やフッ化クロム(III)が塩化鉄(III)よりも優れた活性を示した.しかしながら,これらの触媒でも反応時間の経過とともにCFC-113の分解率は漸次減少し,活性能の低下が認められた.ハロゲン化鉄(III)に塩化銅(II)を添加した触媒は触媒活性の持続性が著しく向上し,実用化への前進が確認できた.また,CFCsのハロゲンの受容体であるアルコールとエーテルの種類を変えた実験では,アルコールのアルキル基が大きくなるほど,CFC-113の分解反応が促進されたのに対し,エーテル類では逆に遅延した.この現象はアルキル基の誘起効果と立体障害の影響と推定された.
  • 篠田 清徳, 宮谷 大作, 中村 忠, 紫垣 由城, 安田 賢生, 佐伯 和昭, 荒井 毅宏
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 261-265
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    アルコール類の存在下で,ハロゲン化鉄(III)と塩化銅(II)を活性炭に担持した触媒を用いて,いろいろな種類のクロロフルオロカーボン(CFCs)の分解を試みた.急冷装置を装備した反応管を用いて行ったエタノール存在下での四塩化炭素の接触分解反応で,かなりの量の反応中間体であるクロロギ酸エチルが得られ,CFCsの接触分解反応機構が示唆された.CFCsのフッ素原子数が増加すると,炭素一塩素結合の解離エネルギーが増大するため,ハロゲン化鉄(III)によるCFCsからの塩素原子の引き抜き反応は困難となり,分解にはより高温を必要とした.反応系内は還元系の雰囲気であるため,ハロゲン化鉄(III)は低原子価化鉄に還元されるが,助触媒である塩化銅(II)の働きでハロゲン化鉄(III)に回復する.「気相Wacker反応」と同様の働きをするハロゲン化鉄(III)/塩化銅(II)/活性炭系触媒の開発で,CFCsの無害化の実用化に向けて大きく前進した.
  • 湯 衛平, 武田 真一, 田里 伊佐雄
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 266-272
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    0.005M Cd(NO3)2水溶液にSiO2粉末を共存させ,0.5MKOHを添加し種々のpHに調整した後,1週間と2か月反応させた.反応させた溶液のpHと,比較のために調製したSiO2粉末を共存させなかった溶液のpHを測定し,添加したKOH量に対してプロットすることにより電位差滴定曲線を作成した.また,得られた反応生成物を粉末X線回折で瀾定し,走査型電子顕微鏡で観察した.1週間反癒させた場合にはCd(OH)2が生成し,2か月後にはケイ酸カドミウムが生成した.電位差滴定曲線にはSiO2粉末の有無による差が認められ,1週間反応させた後の曲線形状の差はバルク溶液中に析出したCd(OH)2とSiO2粉末上に析出したCd(OH)2の状態の違いを反映し,2か月反応させた後の滴定曲線の差はケイ酸カドミウムの生成反応を反映し,Cd(OH)2-SiO2間の反応がSiO2の溶解量が低いpH8付近で起こったことがわかった.以上の結果からケイ酸カドミウムは溶け出したケイ酸とカドミウムイオンとの反応を介して生成するのではなく,アルカリ添加によるCd(OH)2のSiO2表面への析出と,それに続いて起こる析出Cd(OH)2とSiO2間の反応により生成することがわかった.
  • 堀尾 正和, 犬飼 恵一, 鈴木 憲司, 渡村 信治, 森 聰明
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 273-276
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    産地や物性の異なる3種のセピオライトを用い,ガスクロマトグラフィーによる窒素/二酸化炭素の分離実験からセピオライトの二酸化炭素分離特性を検討した・試料の前処理加熱温度を573~873K,の間で変えて分離実験を行ったところ,二酸化炭素吸着熱は873K加熱物で約53kJ/molの値が得られ,試料間に大きな差は認められなかった.また,各試料とも加熱温度を高くするほど二酸化炭素吸着熱が大きくなり,窒素/二酸化炭素分離能は向上した.これらの結果を加熱によるトンネル内や外表面に存在する水分子(特にマグネシウムに配位した結合水)の脱離過程の観点から考察した.
  • 藤田 隆之, 松倉 清治, 山口 朋浩, 田草川 信雄, 北島 囲夫
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 277-284
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    OH/Cr比の異なるヒドロキソクロム(III)水溶液中の化学種を高速液体クロマトグラフィーで検討するとともに,多核ヒドロキソクロム(III)溶液を膨潤性合成フッ素雲母と反応させて得られるクロミア架橋フッ素雲母の生成と性質について検討した.その結果,塩化クロム(III)水溶液へのNaOH水溶液添加の初期段階においてはCr単量体が減少し,重合度の低いクロム(III)イオン種(二量体,三量体)が形成されるが,溶液のOH/Cr比の増加にともないこれらの低重合イオン種は減少し,幅広い重合度分布を持った高重合度のクロム(III)イオン種群が形成されることがわかった.多核ヒドロキソクロム(III)水溶液中の各重合クロム(III)イオン種は加熱処理によって含有割合が変化し,二量体および三量体は,四量体および見かけの分画分子量で10000~300000の高重合クロム(III)イオン種群に変化することが判明した.層間挿入反応時に高重合イオン種の平均分子量が比較的小さい溶液を用いると,フッ素雲母の層間域にに三量体および四量体などのオリゴマーが比較的挿入されやすく,単量体は挿入されにくかった.これに対して,高重合イオン種の平均分子量が高い溶液を用いると,単量体も層間域に挿入されるようになり,Cr収容量は逆に減少した.架橋雲母の底面間隔値(200℃)はCr収容量が変化してもほぼ一定であり,Cr収容量との間にあきらかな相関関係は認められなかった.
  • 松下 啓, 本岡 達, 金治 幸雄
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 285-290
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    pH5の可溶化コラーゲソ溶液中(0.05~0.4%)でα-ビス(リン酸)三カルシウム(α-TCP)を30℃, 24時間,加水分解させ,生成物のX線回折分析,フーリエ変換赤外分光分析,熱分析および組成分析により,加水分解生成相に及ぼすコラーゲン濃度の影響を検討した.主な加水分解生成物はヒドロキシアパタイト(HAp)とヘキサキス(リン酸)二水素八カルシウム(OCP)であり,コラーゲン濃度が0.2%以上ではHApおよびOCPの生成が促進された.これらの加水分解生成物中にはコラーゲソが均一一分散し,HApおよびOCPと相互作用して複合体を形成していると考えられた.生成したHApは非化学量論的ヒドロキシアパタイト(DAp)と同定された.加水分解生成物はDAp以外にOCPおよびコラーゲンを含むので,生体材料の素材として有用であると考えられる.
  • 早野 清治, 白濱 晴久
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 291-294
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    (6E,9E)-2,3-エポキシ-3,7,11,11-テトラメチルシクロウンデカ-6,9-ジエン(2)をフムレン1((2E,6E,9E)-3,7,11,11-テトラメチルシクロウンデカ-2,6,9-トリエン)より合成する既知の合成法は実際に牧率が低く合成的に問題がある.さらに,2の合成はその反応性や物性の研究のために簡単に高牧率で行われることが望まれる.今回,2の新たな合成法と簡便な精製法を見いだし,2を高牧率で1から合成することができたので報告する.1のジエポキシ化,続く再結晶により得られたジエポキシド(8)は二価のチタンにより還元されて,1(273%)と8(25%)と少量の3を含む2を主生成物(42.7%)として与えた.1と3は原料として再利用できる.2の精製は1と同様硝酸銀(AgNO3)錯体の結晶で行い,純粋な2は1から通算牧率32.0%で得られた.2の既知方法による合成は4段階の反応と数回のカラム分離及び10%AgNO3含浸シリカゲルカラム分離を必要とし牧率が極端に低い.今回,新しい2の合成法は2段階の反応で1回のカラム分離と再結晶により高い通算牧率を示す.
  • 江口 ゆかり, 久保田 直治
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 295-299
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    セルロース膜にタンニン酸を修飾したアフィニティー膜を調製し,ウシ血清アルブミン(BSA)の吸着分離特性を検討した.市販の精密演過用セルロース膜にタンニン酸のヒドロキシル基側とカルボキシル基側でそれぞれ結合させアフィニティー膜を調製した.タンニン酸修飾セルロース膜のBSA吸着分離実験を流通法により行った.タンニン酸のヒドロキシル基側で修飾した膜では吸着溶液のpH依存性が見られたが,カルボキシル基側で修飾した膜ではpH依存性は示さなかった.種々の溶出液を用いてBSAの回収を試みた結果,pH2.0の0.2mol/dm3クエン酸緩衝液が回収率,濃縮度ともに最も高い値を示した.
  • 安井 三雄, 新井 祥文, 木村 良晴, 北尾 敏男
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 300-305
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    優れた機能性を持つペプチドをビニルポリマー基板に固定化し,その機能が十分発揮できる材料化を実現するには,基板とペプチドとを結合させる接着剤的な役割をする結合試薬が必要となる.この結合試薬に要求される性質としては,一方で機能性ペプチドと結合可能なアミノ酸部位と,他方で基板と結合可能な他の官能基を持つことである.このような結合試薬として,アスパラギン酸β-アリルエステルに着目した.これをアスパラギン酸とアリルアルコールから合成して,この化合物の同定を行った.極めて簡便な手法により高純度,かつ高収率で合成できることを確認できた.得られたアスパラギン酸β-アリルエステルのアリル基を介したラジカル反応でビニルポリマー基板への化学固定を検討するため,この化合物の溶媒特性やラジカル反応時の熱安定性などを調べた結果,アスパラギン酸β-アリルエステルがメタノールやジメチルスルポキシドなどの有機溶媒で固定化反応に使えることを見いだした。さらに,ポリスチレンやポリ(1一ビニルエチレン)のような熱可塑性ゴムとアスパラギン酸β-アリルエステルとをラジカル反応させ,これらのビニルポリマーにアミノ酸残基が化学固定でき,新しい機能性担体創製への可能性を見いだすことができた。
  • 和田 洋六, 直井 利之, 黒田 康弘
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 306-313
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    クロム(VI)含有排水を再利用する目的で,排水中に共存するクロム(III)と有機質成分を紫外線照射併用によりオゾン酸化しこの処理水を陽イオソ交換樹脂塔と陰イオン交換樹脂塔の順に通水した.紫外線照射併用オゾン酸化では処理薬品を用いることなくクロム(III)と有機質成分が短時間に酸化された.イオン交換処理では電気伝導率20μS/cm以下の脱イオン水が安定して得られた.この脱イオン水はめっき工程における水洗水として再利用できた.陰イオン交換樹脂の再生で溶離したクロム(VI)溶液はイオン交換法で精製すれば再資源化可能なクロム酸塩として回収できることを確認した.本実験結果に基づき,有害なクロム(VI)排水を脱イオン水として工業規模で再利用するリサイクルシステムを開発した.
  • 佐々木 昭夫, 木村 良晴
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 314-319
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    ナイロン-6に新しい機能を付与することを目的として,フェノキシ基およびスルポナト基を有する新規なトリアジン誘導体の合成を行い,ナイロン-6との溶融反応を行った.とくにsodium4-(4,6-diphenoxy-1,3,5-triazin-2-ylamino)benzenesulfonate(1a)は極めて効果的にナイロン-6の末端アミノ基とフェノールの脱離を伴う反応を生じ,その添加量が末端アミノ基に対し1~2mo1のときポリマーの溶液粘度にあまり影響を与えることなく,言い換えれば主鎖の切断を生ずることなく,末端にスルポナト基を導入できることがわかった.また添加量を変えても1aによる鎖延長反応は見られず,末端アミノ基とナイロン-6の間のアミド交換反応も起こらないと考えられる.一方,1aの4-スルポナトフェニル基をスルポナトアルキル基に変えた場合,ナイロン-6の急激な粘度低下が起こることを認め,両者間のアミド交換反応の反応性の差として説明した.また1aと反応させたナイロン-6繊維はナイロン-6単独繊維と比較して,塩基性染料に対する染色性が増すとともに,対酸性染料染色性が低下することを認め,スルポナト基が共有結合によりナイロン-6に固定化されたことを確認した.また1aと反応させた繊維と前報のトリフェノキシ+トリアジンと反応させた繊維の塩基性染料に対する染色性を比較すると,前者の方がはるかに染まり難いことを認め,これをスルポナト基による競争反応として説明した.さらに1aと反応させた繊維と末端アミノ化ポリオキシエチレンとの反応により繊維の吸水性が大きく向上することを認めた.
  • 清住 嘉道, 佐野 庸治, 水上 富士夫
    1995 年 1995 巻 4 号 p. 320-324
    発行日: 1995/04/10
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    Synthesis of ZSM-5 with the SiO2/Al2O3 ratio of 100 and silicalite under elevated gravity was carried, out using a centrifuge oven. It was found that the crystallization rates of ZSM-5 and silicalite are enhanced under elevated gravity. It was also found the maximum crystal sizes of ZSM-5 and silicalite synthesized under 100 G are about 2 times larger than those synthesized under 1 G.
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