室内凍上試験における凍結膨脹率 (凍結前の供試体体積に対する凍結後の体積増加の割合と定義する) に及ぼす供試体高さの影響については, これまでに若干の実験例はあるものの系統的な研究は行なわれていない.本論文では室内凍上試験における最適な供試体高さを決定する目的で行なった実験の結果を示すとともに結果について考察を行なった.
試料土として想橋粘土 (撹乱再圧密土) を用い, 直径10cmの円柱供試体の高さを約5cmから0.2cmまで段階的に削って変化させ, 各供試体高さの段階で開式の凍上試験を繰り返し行ない, 供試体高さと凍結膨脹率の関係を調べる.これを拘束応力70.6~482.7kN/m
2, 凍結速度1.6~5.8mm/hの範囲内で系統的に変化させた, 6種類の凍結条件下で行なった.
その結果, 次の事が明らかになった.凍結膨脹率ξは供試体高さのある値, H=H
0において最大となる.H≧H
0の領域ではHの増加に伴いξは減少する.これは未凍結土内の動水抵抗から定量的に説明される.また, H≦H
0ではHの減少に伴いξは減少する.これは凍土内での排水領域の存在から定性的に説明される.H
0の値は凍結条件, 特に拘束応力に依存し, 拘束応力が小さい程H
0は小さくなる.
上記のことより, 土の凍上特性を知るための室内凍上試験における適切な供試体高さは, 未凍結土内の動水抵抗及び凍土内の排水領域の存在による複合的な影響が最小となる供試体高さH
0の近傍であると結論される.本研究で用いた試料土は凍上性の非常に大きい粘土であるが, この場合のH
0は2~4cmの範囲であった.一般的な土の室内凍上試験では4cm程度の供試体高さが適当である.
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