積雪底面融雪水のδ18 O,化学物質濃度の変化と積雪の化学的な層構造との関係を検討した.調査は,福島県南部の会津田島において行ない,使用した積雪ライシメータの面積は1,647m2である.ライシメータを介しての物質収支はほぼ一致し,調査方法の妥当性が認められる.会津田島における冬期降水のpHは3.89~4.36であり,酸性が比較的強い.さらに,降水時の平均気温と降水のδ18 Oとの間には相関が認められる.積雪底面融雪水の電導度は,融雪の進行に従い次第に小さくなり,δ18 Oは次第に大きくなる.積雪全層のδ18 Oは,融雪によって大きくなり,電導度は小さくなる.積雪上部にδ18 Oの大きな層,下部に値の小さな層が分布する場合には,積雪底面融雪水量の増加時に融雪水のδ18 Oが大きくなるような日変化を示す.ライシメータによって積雪底面融雪水を採取・分析するとともに,積雪層ごとに積雪を採取・分析し,積雪中におけるδ18 Oと化学物質濃度の分布が,積雪底面融雪水のδ18 Oと化学物質濃度の変化にいかに影響しているかを検討した.本研究で明らかになった点は次のようにまとめられる.1)ライシメータを介しての物質収支を見積もった結果,降雪の捕捉率を考慮すれば,水とCl-, SO 2-4については収支がほぼ一致する.しかし,NO-3については,流出率が小さい.2)会津田島における冬期降水のpHは3.89~4.36であり,酸性が強い.降水時の平均気温と降水のδ18 Oとの間には相関が認められる.3)融雪期間を通してみると,融雪の進行に従い積雪底面融雪水の電導度は次第に小さくなり,δ18 Oは次第に大きくなる.4)積雪全層のδ18 Oは,融雪によって大きくなり,電導度は小さくなる.5)積雪上部にδ18 Oの大きな層,下部に値の小さな層が分布する場合には,積雪底面融雪水量の増加時に融雪水のδ18 Oが大きくなるような日変化を示す.
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