雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
63 巻, 1 号
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  • アイスレンズの成長と含水比について
    武藤 由子, 渡辺 晋生, 石崎 武志, 溝口 勝
    2001 年 63 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    アイスレンズの成長面付近の水分状態とアイスレンズの厚みの関係を調べるために,水で飽和したガラス多孔質体中に析出するアイスレンズを観察する実験を行った.ガラス多孔質体の凍結速度と温度勾配は,一方向凍結装置を用いて一定に制御した.まず,初期含水比が異なるガラス多孔質体中に析出したアイスレンズの厚みを比較した.その結果,初期含水比が高いほどアイスレンズが厚く成長することがわかった.次に,凍結過程のガラス多孔質体の未凍結領域において,含水比分布を数mm間隔で測定した.その結果,アイスレンズの成長面から高温側には,異なる2種の含水比領域が生じることがわかった.アイスレンズの成長によらず,成長面より約20mm以遠の含水比は初期含水比を維持した.成長面近傍から約20mmの領域の含水比は初期含水比より低く,またアイスレンズが厚く成長した場合ほど低かった.この結果は,アイスレンズが発生してから成長を終えるまでの,成長面付近の含水比の変化を示していると考えられる.
  • 河田 剛毅, 白樫 正高, 山田 修一
    2001 年 63 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    著者らはこれまでにいくつかの管路要素における氷水スラリーの流れの振る舞いについて研究を行ってきた.その結果,氷クラスターと管壁の間の摩擦が圧力損失に影響すること,および流れの振る舞いが氷粒子の付着性に大きく影響されることが示唆された.しかし摩擦係数の測定精度は十分でなく,氷粒子の付着力の測定はこれまで行われていなかった.
    本研究では,氷クラスターと管壁の間の摩擦係数を測定する手法を改良し,それをこれまでに圧力損失の測定データが得られている管と粒子の組み合わせに対して適用した.また,氷粒子の付着力を測定する手法を開発し,寸法の異なる氷粒子に適用するとともに,それら粒子を用いた氷水スラリーの水平円管内における流動状態を観察した.
    その結果,摩擦係数は圧力損失とよく相関していることが確認された.このことは管の材質,粗さ,内径,および粒子の形状,寸法が粒子と管壁の摩擦を通して圧力損失に影響することを示している.氷クラスターの付着力は氷粒子円柱の圧縮降伏応力で評価され,細かい粒子ほど圧縮降伏応力は大きく,かつ同一流速の管内流れにおいてクラスターを作りやすいことがわかった.また,氷粒子円柱は圧縮応力を降伏応力よりも小さい大きさで段階的に増加させることで著しく強化された.
  • 舘山 一孝, 榎本 浩之, 西尾 文彦
    2001 年 63 巻 1 号 p. 21-34
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    オホーツク海全域の毎日の海氷観測が唯一可能な衛星搭載マイクロ波放射計のデータを用いて,気候変化に対する海氷の変動を海氷の広がりだけでなく,厚さに着目して解析した.マイクロ波放射計SSM/I用に開発したS/KITアルゴリズム(Tateyama et al.,2000)を使用し,海氷分類性能を検討した結果,NOAA AVHRRの可視画像よりも薄氷検出性能が高いことが証明された.また,新たに開発したOceanフィルタ等の適用により,従来使用されていたNASAチーム薄氷アルゴリズムによる海氷面積推定精度の向上が確認できた.これらのアルゴリズムを使用して1987年12月から1999年3月のオホーツク海の海氷変動を解析した結果,1995年以降は面積の減少だけでなく厚い氷の割合も減少し,特に1996年と1997年は海氷体積が1988年に比べて43%も少なかった.1998年と1999年は海氷面積が1988年並みに大きかったが,海氷体積は少なく,1990年代の平年値並かそれ以下であった.海氷分布図から,1994年以降は北海道に南下する海氷に変化は少ないが,オホーツク海北部の海氷の張り出しが弱まっていることがわかった.
  • 河田 剛毅, 山田 修一, 吉田 可紀, 岡田 純一, 白樫 正高, 齋藤 明宏, 服部 賢
    2001 年 63 巻 1 号 p. 35-48
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    今後ますます大規模化が予想される地域冷暖房システムの導入を促進させるために,輸送冷熱エネルギー密度を大幅に向上することができる氷水輸送式のシステムが注目されている.本研究ではまず省エネルギー,環境保全,経済性の観点からこの新しいシステムの基本方針を定め,それに基づいて実用的なシステムの概念設計を行った.提案されたシステムは冷熱輸送媒体に通常の水を使用しているので,既設の冷水輸送式システムにも容易に適用可能であるという利点を併せ持つ.次に,それを実際に運用する際に必要となる要素技術のうち,これまで未着手であった蓄熱槽から輸送導管への氷取り出し技術の開発を目的として,氷の連続的な取り出し,およびその取り出し量の調整機能を有する蓄熱槽を試作し,その性能評価を行った.その結果,比較的粒径が大きいチップアイスの場合に対しては全量の取り出しが可能で,かつ,その取り出し速度はある程度調整できるが,粒径が小さいざらめ雪の場合には粒子同士の付着性に起因する槽内粒子の一体化現象により取り出し装置がうまく機能しないことが確認された.この結果は蓄熱槽からの氷の取り出しやすさには氷の性状が大きく影響すること,および,蓄熱槽の氷を需要の変動に応じて取り出すために氷の性質を考慮した装置の開発が必要であることを示している.
  • 測定方法および装置
    西尾 文彦, 五十嵐 誠, 亀田 貴雄, 本山 秀明, 直木 和弘, 高田 守昌, 戸山 陽子, 渡邉 興亜
    2001 年 63 巻 1 号 p. 49-63
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    過去数百年程度の時間スケールにおける気候・環境因子を南極氷床の広域で求め比較し,産業革命以降の人間活動の地球規模での影響を評価する「国際南極横断観測計画」(ITASE:International Trans-Antarctic Scientific Expedition)が浅層雪氷コアを用いて国際的に進められている.この目的のためには,氷床コアの同位体組成,化学主成分などを初めとする種々の要素を高精度で測定する必要がある.また,広域で採取されたコアネットワークのデータを比較することから,タイムマーカーとなる示準層の検出や年代決定の高精度化が期待されている.さらに,可能な限り共通の分析手法を用いて,測定値の標準化が推薦されている.本稿では,2本の南極浅層コア(H72,ドーム南)の基本解析(層位,密度,ECM,デジタルモザイク画像,非通気性係数,レーザートモグラフ,化学分析)で用いた測定方法および装置,解析作業を記述した.
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