雪氷
Online ISSN : 1883-6267
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66 巻, 5 号
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  • 松下 拓樹, 西尾 文彦
    2004 年 66 巻 5 号 p. 541-552
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    過去14冬季間(1989年11月~2003年5月)における気象庁の地上気象観測資料から,着氷性の雨,着氷性の霧雨,凍雨の発生に関する地域分布と,季節変化および経年変化を調べた.日本では,これらの降水種は1月から3月の時期に発生することが多く,毎年10回程度の割合で観測されている.このうち着氷性の雨の発生率は毎年数回程度で,12月~1月に発生する場合が多い.
    着氷性の雨と凍雨の発生率が高いのは,中部地方以北の内陸山間部と関東地方以北の太平洋側平野部である.この両地域に着目して,着氷性の雨や凍雨が発生するときの気象条件の形成過程を調べたところ,地上付近の寒気層の形成は,局地的な気象現象や地形の影響を強く受けることがわかった.内陸山間部では盆地地形による冷気湖の形成が関与しており,太平洋側平野部では内陸からの寒気流出によって地上付近の寒気層が形成される.一方,上空暖気層の形成は,総観規模の気圧配置に伴う暖気移流に起因する.
  • 第一報:冷涼な地域における氷貯蔵の理論予測と実証モデル試験
    麓 耕二, 山岸 英明
    2004 年 66 巻 5 号 p. 553-560
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    雪氷エネルギーは主として寒冷地における農作物の低温貯蔵や夏季の空調用冷熱源として利用されている.また大規模な貯蔵施設を必要とするため,雪氷冷熱は地産地消型の利用エネルギーと言える.これらの状況を踏まえて本研究は,暖候期が比較的冷涼な北海道釧路地方において,初期投資が少なく,設置が容易な20ft(フィート)型保冷コンテナを小型アイスシェルとして氷貯蔵に利用した場合の有用性について解析的検討を行った.さらに解析方法の妥当性を確認するため,低温恒温室を保冷コンテナに見立てた短期の実証モデル試験を行った.解析結果より保冷コンテナを用いることにより,釧路地域において夏季までの氷貯蔵が十分可能であることを示した.また実証試験結果との比較により,本解析方法は氷残存量および必要氷量の解析的予測が可能であることを示した.
  • 梶川 正弘, 後藤 博, 金谷 晃誠, 菊地 勝弘
    2004 年 66 巻 5 号 p. 561-565
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    秋田県内陸部で取得した新積雪と気象要素の観測データに基づき,新積雪密度と気象要素の関係を検討した.その結果,平均気温,雪面上1mの平均風速および降雪の結晶形に加えて,新積雪密度に対する平均降水強度の強い影響が確認された.気象要素を独立変数とした重回帰分析により,卓越結晶形が樹枝,立体樹枝,雲粒付樹枝,雲粒付立体樹枝の場合に,新積雪密度推定のための実用的な重回帰式(有意水準5%で有意)が得られた.
  • 力石 國男, 登城 ゆかり
    2004 年 66 巻 5 号 p. 567-580
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    気象庁のアメダスによる1980~97年(85年と95年を除く)の厳寒期(1月・2月)の気象観測データ(3時間毎のデータに編集)を解析して,横手盆地の降雪特性および降雪機構を調べた.横手で3時間降水量が3mm以上の強い降雪がみられるのは,横手で無風の場合が約40%,北西寄りの季節風の場合が約35%である.
    無風の状態は季節風が弱くかつ陸風が弱い夜間に発生する.このとき日本海沿岸では2m/s前後の非常に弱い北西風であり,横手盆地周辺の谷間や山間部でも無風に近い状態となる.横手だけでなく秋田県南部の広い範囲で強い降雪が観測される.これは日本海からの弱い季節風が大気下層の冷気の上を上昇することにより雪雲を発生させるためであると考えられる.一方,比較的強い季節風が横手盆地方面に向けて収束し,風下の山脈を越えるときにも,横手で風が弱まり,強い降雪が観測される.この場合は,横手の風が弱まるほど盆地内の降水強度が増す傾向があり,発生時刻は昼夜を問わない.
    横手盆地の降雪特性を旭川・新庄・十日町の降雪特性と比較して,内陸盆地の降雪機構について考察した.
  • 野中 崇志, 松永 恒雄, 梅干 野晁
    2004 年 66 巻 5 号 p. 581-590
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    中高緯度域における湖の解氷日は気候変動の1つの指標として重要であるにも関わらず,これまでユーラシア大陸では,ほとんど現地観測が行われていない.このような湖の解氷日を把握するために,衛星リモートセンシングによる春季から夏季までの湖の表面温度の時系列を用いた湖の解氷日推定手法をこれまでに開発した.本研究では開発した手法を用いて,まずバイカル湖における過去3年間の解氷日の空間分布を把握した.その結果,バイカル湖内では緯度により3から6週間程度の解氷日の違いがあることや2003年の西側の沿岸域の解氷日が中心部と比較して1週間程度早いことを明らかにした.そして次にハンカ湖における過去20年間の解氷日の経年変化を調べた.その結果,ハンカ湖の解氷日は5から10年程度の周期で10から15日の変動を繰り返しており,過去20年間では解氷が早まる傾向が見られないことを明らかにした.
  • 楊 照宇, 畢 春蕾, 鈴木 輝之, 澤田 正剛, 山下 聡
    2004 年 66 巻 5 号 p. 591-597
    発行日: 2004/09/15
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    北見工業大学構内の屋外凍上実験フィールドにおいて,2002年10月から2003年5月までの凍結期を挟んだ期間に,地盤の外気温,土中温度,凍結深さ,凍上量,土中水分量(凍土中では不凍水量)及び熱流量の測定を継続して行なった.測定の結果,地盤凍結の進行にともなう水分の移動,不凍水量,さらに熱伝導率の経時的変化を定量的に捉えることが出来た.
    凍結が進行すると,未凍土側の含水比は漸減していくが,凍結面が近くなると急減する.また,この含水比の減少は凍結面へ水分が吸い寄せられるために生ずる現象であり,凍結面の通過後は氷成分も含めた含水比は,凍結前よりも大きくなる.また,温度変化に対応した不凍水量の変化過程も明らかにされた.
    地盤の熱伝導率は水分の移動や相変化のために,凍結の進行によって変化する.とくに凍結面が通過する時点では特徴的な変化を示す.また,今回測定された熱伝導率は凍結時と未凍結時でほぼ同じ値になった.この結果はこれまで多く行なわれている室内実験での結果とは異なるものであり,実地盤で実際に起こっている現象をとらえることの重要性が示された.
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